わたしのキャラメル王子様

友大ナビ

第1話*激甘アプローチと塩対応

悠君は泣き虫だったよね。

生まれも育ちもニューヨークってだけで、生意気だなんていじめられることも多かった。



2月、学校にやってくる節分の鬼を怖がって、いつも私の後ろに隠れてた。豆を投げて退治するのは私の係で、悠君は鬼が退散してもまだ泣いてる。



「大丈夫、もうやっつけたよ!」



フンフンと、戦いのあとで私は鼻息荒め。

悠君のキャラメル色のふわふわな髪、よしよししてあげなくちゃ。



そしたら、涙に濡れた目でじっと私を見つめて悠君は言ったの。



「さらちゃんがいなくなったら、ぼくどうしたらいいの?」


だから私は胸を張って言ったのだ。


「さらはずっとここにいるよ!」


「じゃあけっこんしてくれるってこと?」


「まぁ、それもあり」


「ぼくのことずっとまもってくれる?」


「まかせといてっ!」



当時7歳だったけど、私と悠君は結婚を誓いあった仲。子供の口約束だもん。だから悠君はそんなこと覚えてないはず。ずっとそう思っていた。






2学期が始まって数日が過ぎたけどまだまだリズムを取り戻せない。朝は苦手だし、窓を開けても風はもわっとしてて全く秋の気配はない。



ママが起きろ!って下からずっと叫んでるから、しぶしぶ起きて着替えていた。朝からよくあんな大声出るなぁ。私には無理。はーい、って返事するのだって朝は億劫だ。

だからシカトもやむを得ないよねって、簡単にメイクして髪をいじってた。そしたら階下でなにやらドタドタしてる気配。



「沙羅ママおはよー! あがるねー」


「ねぇ悠君あの子叩き起こしちゃって? 何度下から叫んでも起きてこないから蹴ってもいいよ」


「潜り込んでくすぐるのアリ?」


「いーよいーよ何でもいーよ」


「どこまでなら触っていい?」


「うーん。胸くらいいいんじゃない? ママに似てぺったんこでごめんね、あっはっは」


「ほんと? 言ったからね? うっしゃー!

張り切って起こす!」



どどどどど、と階段をかけのぼる音。

二人のアホなやり取り全部丸聞こえですけど?

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