第91話 スターレンジャーvs.ギウス四天王・2
戦闘開始から数分が経って。
そこには、床に倒れ伏しているギウス四天王たちの無残な姿があった。
立っているのはスターレンジャーのメンバーだけで、四天王とは対照的に誰もかすり傷ひとつ負っていない。
「思った以上に楽勝だったな」
千紘が長剣を
「何で……こんなに、強いん、だよ……」
足元のルセスは息も絶え絶えに、必死になって顔を上げようとした。しかしそれは叶わず、再び床に突っ伏してしまう。
そんなルセスを見下ろしながら、千紘は平然と答えた。
「それは簡単なことだな。俺たち全員が四天王を『
今回の作戦はこうである。
まず、千紘は全員にギウス四天王に対しての認識を確認した。
それがこの部屋に入る前、つまり作戦会議の時のこと。
結果、全員が『ドラマ撮影ではすでに倒している、もう存在しない過去の弱い敵キャラ』と、それぞれ位置づけていた。
現に、ドラマでは四天王を倒したところまでは撮影されていて、近いうちにテレビで放映される予定になっている。
もし四天王が千紘たちの記憶から具現化されている場合、この認識であれば四天王は弱いはずなので、戦闘になっても問題なく倒せると千紘は考えていた。
そして、念のため実際に実物を雑魚キャラ扱いすることで、改めて全員の認識を一致させ、さらに固めたのである。
ちなみに、もし具現化ではなく召喚など他のパターンだった場合は、具現化の法則などが適用されていない可能性が高いので、その時は真正面から全力で戦うつもりだった。
これは、直接ラオムから具現化の話を聞いたことのある千紘だから立てられた作戦だ。秋斗には思いつかなかったようで、作戦会議の時はしきりに感心していた。
こうして全員が『ギウス四天王は雑魚キャラ。戦闘員よりもちょっと強いくらいのレベル』としっかり認識することで、今回は難なく倒せたわけである。
「ま、そういうことだったんだけど、ってもう聞こえてないか」
千紘が説明を終えた頃には、ルセスの身体はほとんどが
「何ですって……」
「そんなことで、こんなにあっさり僕たちが倒されるなんて……」
エリダとメレオルも、ルセスと同じように消えてかけていた。存在すべてが消滅するのも時間の問題だろう。
「これはアンタらが具現化された存在で、本物じゃなかったからできた作戦だけどな」
もし本物だったらこんなことできなかったよ、と千紘が残った二人に告げた。
エリダだけでなくメレオルも、すでに話すことはできないようである。
だから、千紘はそれ以上話さなかったし、他の四人も口を開かなかった。
しばらくの間、沈黙が流れる。五人はただ黙って、四天王たちが消えていくのを見守っていた。
四天王の姿が跡形もなくこの場から消え去ったのを見届けた秋斗が、ようやく千紘の方に顔を向けて、ゆっくり口を開く。
「ここにラオムがいなかったのは、やっぱり前に倒したからかな?」
「多分そうなんだろうな。まあ、何度も出てこられたら困るからそれはありがたいけど」
秋斗の疑問に、千紘が素直にそう答えると、次には場違いな明るい声が響いた。
「でも千紘ちゃんってばすごいわね! 作戦だけじゃなくて剣の扱いも本当にかっこよかったもの!」
胸の前で両手を組んだ香介の声である。
そのせいで、これまでのしんみりした空気が一気に台無しだ。
「あー、剣はなぁ……。この世界に来るたびに使ってたし、もう慣れたっていうか。能力のせいもあるし」
褒められてもあまり嬉しくはないけどな、と千紘が肩を
「それにしても、あの強さは四天王よりも千紘の方が悪人みたいだったな! まったく容赦なくてさ!」
気づけば、秋斗もいつもの
「秋斗、うるさい! だいたい、容赦なんてしてたらこっちがやられるだろ!」
千紘はそんな秋斗を怒鳴りつけ、同時に思い切り蹴りを入れる。直後、当然というべきか秋斗の悲鳴が上がった。
「じゃあ、そろそろ先に進もうか」
「そうですね」
二人のやり取りを微笑ましげに見やったノアが言うと、律も同意して嬉しそうに頷く。
ノアだけでなく、律もすでにこのパターンには慣れているので、わざわざ仲裁などはしない。もちろん香介もだ。
「ほら、千紘ちゃんと秋斗ちゃんもさっさと行くわよ」
こうして五人は無事にギウス四天王を倒し、先に進むことができたのである。
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