第151話 大人の階段登る

「泣いているの?」


水面がそっと恋次に声をかける。


「水面さん?

 いや、泣いてないよ」


恋次は涙を拭う。


「そう?」


「水面さんはどうしてここに?

 退院したんじゃないの?」


「家にいても暇だし……来ちゃった」


「来ちゃったか。

 エッチでもする?」


恋次は冗談でいったつもりだった。


「いいよ。

 勝負下着つけてきたし」


「え?」


恋次は戸惑う。


「お風呂も入ったし。

 準備満タンだよ!

 私、エッチしたことないけど頑張るよ」


「いいの?」


恋次は緊張する。

経験したことのない緊張。


童貞を捨てれる。


ずっと憧れだったセックス。

でも、こんなノリで解決していいのか?

こんな簡単なのか?


そう思った。


「いいよ」


水面が目を閉じる。

恋次にはキスの合図なんだと思った。

恋次も目を閉じる。


そして重なる唇。


水面をそっとベッドに押し倒した。

恋次の胸の鼓動が早くなる。


「じゃ、触るね」


「うん」


恋次は水面の胸に手を触れる。

服の上からそっと触る。


「……」


恋次は無心で触る。

無心でも揉む。


「どう?」


「なんだろ。

 わかんない。

 柔らかいような弾力あるような」


「気持ちいい?」


「なんか幸せ」


「いっぱい揉んでね」


「いいの?」


「うん」


大人の階段を登ろうとしたふたり。


しかし。


「ダメ」


声が聞こえる。

それは千春のものだった。

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