第27話 中間テスト開始 放課後に一緒に勉強
「そろそろ中間テストだな颯流。勉強はバッチリなのか?」
「ああ、予習復習は習慣になってるんだ」
「良いよね〜勉強と好き好んで向き合える人は。私には無理無理〜」
「だったら勉強できるように環境を整えろよ」
5月も半ばが過ぎてそろそろ6月に差し迫ろうとしてた時期に中間考査の1週間前がやってきた。それで放課後にクロワッサンと小山と話し込んでいたところだ。
「いや〜私の家は勉強する環境になれないのよ」
「確かに和実の家庭はちと特殊だもんな」
「やっぱりどう考えても特殊の範囲を逸脱してるだろ」
「人間って意外とどんな環境に身を置かれても慣れるものらしい」
「なんでお前がそう偉そうにしてんだよ」
「だって〜。ねえ? 子供の前で平気でイチャコラする夫婦っだもん」
そう聞こえればただただ仲睦まじくて微笑ましい夫婦だが話は単純じゃない。
クロワッサンに詳しく聞いてみると子供の前でも平気でセックスするらしい。
それが居間だろうが昼だろうが場所構わず、だそうだ。
当然そんな環境に身を置いてちゃ耳栓あっても勉強に集中などできるわけない。
それでテスト期間になるとクロワッサンの家に入り浸ってるらしいんだが……。
「それでちゃんと勉強できてるのか?」
「それが実は……」
「そ、そうだな……あっははは」
「だって仕方ないじゃん……勉強してるときのしゅーくんの真剣な表情見てたらキュンと来ちゃうんだもん」
「右に同じく」
「このバカップルめ」
おまけに2人きりの空間だからそうなる度に最後まで一通りに愛し合って、気がついたら夕飯の時間に差し迫ってたってわけか……お決まりのパターンだな。
「……もう察したわ。今日から勉強場所を図書館にすることだな」
「だよなぁ」
「それでは皆で一緒に行きませんか?」
「そうだな。そっちの方が賢い、って月愛!?」
いつの間にか俺が座ってる席の前にまでやって来た月愛。
相変わらず気配の察知が難しいやつでいつも驚かされるな。
「あ、ルンちゃんそれ良いね〜! 4人で勉強したら集中できそう!」
「確かにな。もちろん颯流も来るよな?」
「ああいや俺は──」
「もちろんですよ♪」
「……仕方ないな、監視役で一緒に行ってやるよ」
何だか横から圧を感じたから「来なさい」ってことなんだろう。
「あはは、何よ監視役って。人気の多い場所では流石にイチャつかないから〜」
「普段のお前らの態度を見てから言え」
「羨ましいならお前もさっさと作るんだな」
「んふふっ、そうですね。恋のキューピッドである妹が人肌を脱いじゃいますよ」
「ご協力感謝してます」
誰が恋のキューピッドだこの不倫する気満々のダメお母さんが。
物理的に脱ぎたいだけだろ……はあ、もう諦めて付き合うしかないか。
「それじゃあ早速図書館に行こう」
「サンセー!」
「冨永さんも賢そうだし、ついに俺たちも赤点組から卒業出来そうだな!」
「俺たちが居なくても勉強できるようになりやがれ」
そうああだこうだ騒ぎながらも俺たちは教室を後にした。
ふと退室するときに視線を感じたから見てみると、木下さんが友達と談笑してた。
やがて学校近くの図書館に到着したので勉強をし始めると1時間が過ぎた。
「ふわぁ〜。もう疲れちゃったよ……」
「だな……こんなに勉強と向き合ったのは受験生以来かも」
「おい、まだ1時間しか経ってないぞ」
「先ずは勉強できる体力をつけるところからですね」
小山は実際にあくびをしてクロワッサンも眠そうに目を擦っている。
普段からどれだけ勉強と向き合ってるのかが浮き彫りになったな。
小山なんて今にも机に突っ伏して睡眠を取りそうな雰囲気だ。
「しゅーくん……1時間後に起こして……」
「ダメだ、寝るのは家に帰ってからにしたほうが良い」
「でも〜」
「ってなんでお前ら2人はそんなに元気そうなんだ……?」
「日々勉強と向き合ってるからな。月愛もそうなんだろ?」
「いえ。高校生になってからは基本的に授業を聞いてるだけです」
「なっ、マジか」
それでお前そんなに賢いのかよ……いやいやちょっと待て。
こいつ確か1年は留年してたんだよな……ははーん、なるほどな。
自分の才能を過信し過ぎてるんだろうな……今度の定期テストで勝てそうだ。
「ええっ!? ルンちゃんそれマジで言ってるの? ずるいって!」
「そいつは凄えな」
「確かに凄いな」
「まあ代わりに、授業中に予習復習してるので忙しかったりしますけどね」
「時間の使い方が異次元じゃん!」
「確かに……授業中なんて基本的に寝てるぞ俺なんて」
「あはは、私も〜」
確かに授業も聞いてない上に自主勉強すらしてなかったら赤点は当然の結果か。
「小山は物理的に届かないからクロワッサン、明日から寝るたびにコンパスの針を突き刺してやるよ」
「は、は? オイ颯流、流石に冗談だよな?」
「俺からの愛の鞭だ、クロワッサンが寝なければ何も起きない」
「日頃の恨みを晴らしたいの間違いだろ?」
「毎日眺めてて砂糖を口から吐きそうになるようなことをしてた自覚はあったのか」
お陰様で真横に居る俺は胸焼けするような思いが積み重なっていく一方だ。
「んふふっ。学校で1番の仲睦まじいカップルですもんね」
「だって仕方ないじゃん〜。彼氏がカッコ良すぎるんだもん」
「俺も彼女が猫のようで可愛いからついつい構っちゃうんだよ、許せ」
「また言ってる側からイチャつきやがってお前ら」
く〜っ……俺も早く木下さんとあんな感じになりてえな。
テスト期間になる度にお互い……いや彼女の家に行って勉強とかやってみたい。
それから何気ない動作で手が触れ合ってお互いを意識するとキス……なんてな〜。
「それでは休憩タイムを設けましょう」
「サンセー。ってことで私寝るね〜」
「和実ちゃんそれも良いですが、良ければ私と散歩に出かけませんか?」
「あ、確かにそれ良いかも! じゃあ私行ってくるね〜」
「分かった、楽しんでこいよ」
「それじゃあ俺もちょっと休憩するか」
月愛が小山を連れて外に出かけるとトイレに行った後に帰って来た。
「なあ颯流、あれから月愛とはどんな感じなんだ?」
「どんな感じって、何だよ?」
「ふっ、惚けるなよ。義妹になったとはいえ色々されてるんじゃねえか?」
「……はあ、まあな」
2人きりのタイミングでクロワッサンが恐らく気になっていたことを聞かれた。
この間はかつて告白をされたと聞いてるからそう勘繰ってもおかしくない。
いや実際に色々と誘惑されてたりで大変だから嘘を言っても仕方ないか。
「お前、もういっそ諦めて冨永さんに靡いちゃえば?」
「意地悪そうに笑うなよ、こっちは結構本気で木下さんに操を立ててるんだ」
「立派なことだが、それがいつまで続くかは見物だな?」
「だから揶揄うなって」
ひとしきりにクスクス笑った後に再びやや真剣みのある表情を見せる。
「まあ、冨永さんなかなか良い性格してるだろうから望み薄だろうよ」
「……気付いてたのか」
「当たり前だろ。普段は愛想が良くて皆に対して笑顔を振り撒いてるだろ? それで颯流と義妹になったときは色んな邪推とか質問攻めを受けてたのにその全てを笑顔で対処するような人間だ。普通はあんなことになったらドッと疲れるもんだろ?」
「確かに……俺は途中でも逃げ出すかもな」
席に座ってると人に囲まれる……想像してみただけで恐怖心が湧き上がってきた。
「だろ? それに言葉選びが悪いけど八方美人だ……それに表面で天使のような人間は大抵は裏が黒いのが相場だ……思い当たるところでもあるんじゃないか?」
「ぐっ……否定できねえ。なんでそんなことが分かったんだ……もしかしてエスパーか?」
「ばーか、んなわけねえだろ。過去にそういう子を抱いたことがあるからってだけの話だ。俺は別に悪いとか一切思ってねえけどな……むしろ和実と仲良くしてくれて嬉しいくらいだ」
「それを小山が聞いたらますます惚れるだろうな」
「なに……彼氏として当然のことだろ?」
小山と付き合いだしてからずっとこんな感じだし。
案外俺が目指すべき理想の彼氏像ときたらクロワッサンが先輩だな。
いつか木下さんと付き合えたときは色々と相談に乗ることにしよう。
「その当たり前のことが凄いんだって」
「そういうお前は木下さんと付き合った途端にベッタリしそうだよなぁ?」
「は、は? そ、それはあまりにも早すぎるんじゃ」
「あはっははは、もしかして俺の想像の斜め上のことでも思い描いてたのか?」
「……いや別に」
「本当に分かりやすいなお前は。そんなんだからクラス中の人間にバレるんだぜ」
「う、うっせ……」
文字通りに木下さんとキスしてる場面を頭の中で思い描いてしまった。
「でもそうなったら、冨永さんのやつが可哀想になるな」
「そ、それは……」
「だって長い間片思いをして来たんだろ?」
「そうだな」
ゲーム風に場を整えたとはいえ月愛にだって喜怒哀楽はあるからな。
けれど俺は他に好きな人がいると宣言した上であいつは俺に迫ってくるからな。
冷酷に聞こえるかもだが、もう俺があいつの好意に応えてやる義務は無い。
「まあなるようになるしかないか」
「そうだな、俺が木下さんと付き合うことで他の恋に進んでくれたら喜ばしい」
「それが理想だな。けどなぁ颯流、」
「なんだ?」
「浮気したら確実にバレるからオススメはしないぞ?」
「黙れ元ヤリチン」
マジでありそうで怖いこと言ってんじゃねえ。
笑っているクロワッサンを睨んでいると2人が帰って来たので勉強を再開させた。
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