公園のベンチでJKとおしゃべりしたい
黒飛翼
AugustDay1
「はあ。死にてえ……」
ある秋の日の昼過ぎのこと。
俺は公園のベンチで羊雲を仰ぎながら、つぶやいた。
空は文句のつけようもないほどの快晴で、爽やかな秋風が吹いている。
目の前の砂場で小さな子どもが遊んでいた。
多分まだ小学校にも通っていないくらいだろう。
お母さんに見守られながら、無邪気に楽しそうに砂のお城を作っていた。
「俺にもあんな時期があったんだろうなあ……」
クソデカため息を吐きながら、いたいけな幼稚園児を見つめ続ける俺。
傍から見たら完全に不審者なんだろうなあ。
こころなしか、遠くのお母さん方がヒソヒソと訝しんでいる気もする。
あ。指さされた。どうやら気のせいじゃなかったらしい。
さすがに通報されたくもないので、俺はうなだれる。
地面を見ると、冴えない男のシルエットが目に入ってきた。
なんだか惨めな気分になって、目をつむった。
【???】
「あ、あの!ちょっとお隣。いいですか?」
「ん?」
突然声をかけられて、顔を上げる。
するとストレートヘアの可愛らしい女の子が、俺に微笑みかけていた。
【謎の女の子】
「お隣。座ってもいいですか?」
「え……あ、うん。いいよ」
【謎の女の子】
「わぁい♪ ありがとうございます!」
俺がうなずくと、女の子は嬉しそうにお礼を言って、俺の隣に座ってきた。
……え? は? え。まって。なんで俺の隣に来るの?
空いてるベンチ。他にもあると思うんだけど……
疑問に思って辺りを見てみると、案の定誰も座ってない二人がけのベンチがいくつかあった。
どうしてわざわざ俺の隣に?
【謎の女の子】
「ふふっ。今日は風が気持ちいいですね」
狼狽する俺をよそに、女の子は微笑みかけてくる。
ふわっとメイプルシロップみたいな匂いがした。
「そ、そうだね……」
どもりがちに答えながら、なるべくベンチの端に身体を寄せる。
何かの拍子に体が触れて、セクハラなんて言われたらたまったもんじゃないからな。
【謎の女の子】
「私。神田 空美って言います」
「……あ。俺はーーです」
【空美】
「はい!ーーさんですね。よろしくお願いします!」
「よ、よろしく……」
名乗られたから咄嗟に名乗り返してしまったが。
一体誰なんだこの子は。
俺は気づかれないように、かんださんの顔を観察した。
真っ黒で肩口を超えるくらいの長さの髪はサラサラに溶かされていて、しっとりと艶がある。
小顔な割に目はぱっちりと大きくて、鼻は小さめで唇は薄い桜色。
可愛いの理想を詰め込んだような可愛い女の子だった。
しかも非常に可愛らしい青色の制服を着てるから、恐らく私立の女子高生。JKというやつだ。
「えっと。俺たちどこかで会ったことあるかな?」
【空美】
「いえ。初対面ですよ!」
「そ……そっか」
当然だ。
俺の知り合いにこんな気さくで可愛いJKはいない。
俺は夢でも見ているのだろうか。
試しにほっぺをつねってみるが、ただ痛いだけだった。
【空美】
「……あはは。ごめんなさい。変ですよね。こんな急に声かけたりして」
「あ、いや。そんなことは……」
【空美】
「いいんです。自覚してますから。私だって、急に知らない人から話しかけられたらビクゥ!ってなっちゃいますもん」
笑いながら言ってるけど、君も同じことしてるよね?
と会ったばかりの子に突っ込める胆力は俺にはなかった。
【空美】
「でも。わたし、ーーさんとはどうしても話してみたくて。こんな風に話しかけちゃいました」
「どうして俺と話したかったの?」
【空美】
「だってーーさん。死にそうな顔してましたから。ほっとけないなって」
そう言って、かんださんは屈託なく笑った。
な、なんていい子なんだ……
あまりの眩しさにクラクラしてきそうだ。
「……そうだね。ちょっと辛いことがあってね。ネガティヴになってたよ」
つい弱気になってしまう。
【空美】
「ちょっとだけですか?」
「……いや。実はちょっとじゃない。正直生きてるのもつらいよ」
【空美】
「あはは。ですよね。さっき死にたいって呟いてましたもんね……よかったらお話、聞きましょうか?」
「い、いいよ。つまらない話だし。人に聞かせるような話でもない」
【空美】
「そうですか? 話したら楽になると思うんだけどな……」
細部まで真っ直ぐな髪先を指で巻き巻きしながら、かんださんは残念そうに言った。
その姿を見ると、口がムズムズしてくる。
アホか俺。
なんで初対面の女の子に弱音を吐きたくなってるんだ。
抑えろ、抑えろ。
【空美】
「じゃあ、楽しい話しましょうよ」
雰囲気を一転。明るい口調でかんださんは手を叩いた。
「楽しい話?」
【空美】
「はい! つらい時こそ楽しいことを考えましょうよ。ね?」
「はは。誰かが言ってそうなフレーズだね」
ほんと。どこかで聞いた無責任な言葉だよ。
「にしても楽しいことかぁ」
でも付きあう。
バカバカしいことも可愛い子と一緒というだけで楽しいひと時になるんだから、現金なもんだ。
「なにがあるかな」
顎に手を当てて考えてみるけど、何も思いつかない。
休みの日は寝てるだけで一日が終わり、それ以外はコンビニで深夜のバイト。
趣味を楽しむ余裕もない。つまらないことだらけだ。
「思いつかないなぁ」
【空美】
「じゃあ、わたし言ってもいいですか?」
「うん」
【空美】
「わたし、歌うことが好きなんです!
「へえ。歌か」
俺は音楽にあまりいい気はしないが。
口の中に苦味が広がる。
【空美】
「はい!1人のときとか、よく口ずさんだりしてます!あと、辛いことや嬉しいことがあったときはカラオケに行くんですよ」
かんださんは本当に好きなんだろう。後半に行くにつれ、彼女の口調は早くなっていった。
「へー。カラオケではどんな曲歌うの?」
【空美】
「ボーカロイドとか、流行りの曲とか……可愛い曲中心に歌ってます!」
「ボーカロイドって、確か電子音楽だったっけ?」
【空美】
「そうですよ〜」
「初音ミクとか有名だよね」
【空美】
「ミクちゃんはボーカロイドの中でも特に有名ですもんね。わたし、オレンジスターさんとかバルーンさんとかも好きですよ!」
「うーん。ごめん。その辺はわからないかなぁ」
【空美】
「そうですか……原曲だけでなく、歌ってみたとかも本当にいい曲ばかりなので、今度調べてみてください!」
「あはは……気が向いたらね」
電子音楽か。なんか今時の若者って感じのジャンルだな。
って、俺もまだ23だし。ギリギリ若者の範疇ではあると思うんだけど。
俺がやってたのはJ-PoP系だったから、そういうジャンルには触れたことがなかったな。
【空美】
「それで。ーーさんの方は何か楽しいこと、思いつきました?」
話が一段落したところで、かんださんはもう一度訊いてきた。
だが俺の答えは変わらない。
「見つからないよ」
同じ言葉を返す。
【空美】
「そうですか……じゃあ、一緒に考えてみませんか?」
さして落胆した様子もなく、かんださんがいきなり俺の手を取る。
ちょっと冷たい体温がひんやりとして心臓が跳ねた。
「へ?」
【空美】
「ーーさんが普段してることとか、聞いてもいいですか?」
控えめに訊いてくるかんださん。
「どんなことって。仕事して眠ってご飯食べて……また仕事だよ」
口にして改めて、俺は自己嫌悪に陥る。
本当、なんでこんなつまんない人生歩んでるんだろうな。
ヤバイ。涙出そう。
【空美】
「……ーーさん。泣いてるんですか?」
と思ったら、もう流れてたようだ。
かんださんが心配そうに覗き込んでくる。
「あー、あはは……ごめん。なんでもないから大丈夫だよ」
泣き顔を見られたくなくて、俺は腕で顔を隠す。
【空美】
「なんでもないわけないじゃないですか!そんな風に泣くなんて……よっぽど心が疲れてるんですよ……」
彼女はそんな俺をやさしく気遣ってくれる。
【空美】
「そういうのは放置してたら、大変なことになっちゃいます……」
やめてくれ。
【空美】
「話して……見ませんか?」
そんなこと言われたら、情けなく全部ぶちまけたくなる。
ああ。どうしてこの子はこんなに優しいのかな。
正直な話、ここまで親身になられると何か裏があるとしか思えなかった。
ここで甘えてしまったら、後で怪しい宗教にでも誘われるかもしれない。カウンセリング料を取られるかもしれない。
だが、そんなことはもうどうでもよくなってしまった。
「じゃあ、話してもいいかな?」
ついにプライドを捨てる俺。
【空美】
「もちろんです」
力強く頷くかんださん。
俺は涙を拭い、大きく息を吸った。
「俺。三年前までバンドでギターをやってたんだ。一応、プロとしてね」
【空美】
「プロ……すごいですね。事務所と契約とかしてたんですか?」
「まあね。でも、すごくなんてないよ。だって一年も経たないうちにクビになっちゃったんだからさ」
【空美】
「クビ?どうして?」
かんださんは本気でわからなそうに首を傾げる。
こんな話、未来に希望のある高校生にするべきか。
逡巡してみたものの、もうとまらない。
「あはは。ありきたりな理由だよ。人気が出なかったんだ」
自嘲気味に俺は言う。
残酷だけど本当に単純で、ありきたりな理由だ。
【空美】
「そんな。せっかくプロになったのに……」
「ハハ。プロって言っても有名な人はほんの一部で、大抵の人はちょっと腕の立つアマチュアと変わんないんだよ」
そう。その通りだ。
どれだけ有名な事務所に所属しようとも、腕が立つとしても、入ったばかりの新人はアマチュアと変わらない。
一応事務所のバックアップを受けることはできるが、事務所だって慈善事業でやってるわけじゃない。スタジオの優先権やその他様々な待遇は人気が出てる古参が優先される。
新人は少しだけサポートをして、見込みがなければ即切り。
高校生には実感が湧かないかもしれないが、悲しいことにそれが現実だ。
【空美】
「そうなんですか……事務所に入ったから安泰っていうわけじゃないんですね……」
「そうだよ。現実は甘くないんだ。俺たちみたいな人は星の数ほどいるんだ。わかってたことさ……でも。俺はどうにかなるんじゃないかって思ってたんだ。だって、それまではそこそこ上手く行ってたからさ」
実際、事務所に入るまでの俺の音楽ライフは順風満帆だった。
中学の時に何となく入った軽音楽部で、何となく組んだバンドがそこそこ人気出たから高校でも続けて、卒業と同時に事務所に所属した。
何年も続けるうちに演奏技術も上がっていたようで、オーディションにも一発合格した。
審査員の人には期待の新星なんて言われて、浮かれて胸を踊らせた記憶が懐かしい。
あの頃は全てがうまくいくと思っていたんだ。
「でも、プロとして活動するようになってから、俺たちのファンは増えなかった。ライブをしても学生時代から来てくれた固定ファンばかりで、新規が増えることはほとんどなくて。CDを出しても全く売れなくて、焦って自分たちのスタイルを崩したり色々迷走してたなぁ。はは、特にヘビメタに手を出したのは本当にバカみたいな行動だったよ」
あの時は流石に事務所からも止められた。
だが、どうかしていた俺たちはその忠告も無視して強行したのだ。
「そんなことをしてるうちに固定のファンも減ってってね。俺たちのライブに来てくれた人は、俺たちらしい音楽を求めてくれてたんだって気づいたころには遅かった」
その先は言わなくてもわかるだろう。
「そんな俺たちを見かねた事務所から、とうとう解約通知が来たんだ」
それが俺たちの挫折だ。
「事務所をクビになった後は、メンバー間のすれ違いもあってバンドは解散。それ以来あいつらとは会ってないから、その後あいつらがどうなったかはわからない」
まあ、あいつらは最後の方は早々に諦めて職を探してたりしたみたいだし、みんな元気にやってるだろう。
俺以外はみんな、賢明なリアリストだった。
【空美】
「……ーーさんはどうしたんですか?」
「俺?俺はね。どうしても音楽の道が諦められなくて、往生際悪く一人で活動してたよ。コンビニバイトで食い扶持稼ぎながらね」
そう言って俺は失笑した。
あんだけ大失敗したというのに、俺はまだ音楽という道の端にぶら下がろうとしている。
【空美】
「そんなに音楽が好きだったんですね……」
「あはは。そんな理由だったらかっこよかったんだけどね。俺は音楽じゃなくて、プロっていう肩書きが好きだったんだよ」
そう。俺は期待の新星ともてはやされていた自分たちが好きだった。プロと言い張れる自分がただただ誇りだった。
だって、音楽が好きというだけなら趣味でひっそりとやればいい。
普通に仕事をしながら週末とかに練習して、たまーに身内だけを呼んで、こじんまりとしたライブを開けばいい。そうだろ?
【空美】
「好きなのは本当に肩書きだけだったんですか?」
かんださんが不安げに訊いてくる。
ああ。この子はさっきからどうしてこんなに痛いところばかりついてくるんだろう。
「……いや。それだけじゃない。こんな俺を応援してくれるファンが一人でもいるんだから、その気持ちに応えたいっていう気持ちもあった。正確にいうと、そう思い始めたのは途中からだけどね。最初はやっぱり肩書きのためだったよ」
ありがたいことに、少しは俺たちのバンドの解散を嘆く人もいてくれたのだ。
そういう人たちが、改めて一人で活動し始めた俺を応援してくれたのだ。
「バンドのファンだった人が俺のライブに来てくれたりしてね。途中から、その人たちの期待に応えようと思いはじめたんだよ」
そこで俺は口をつぐんだ。
その先のことを思うと、胸が痛む。また、目頭が熱くなってくる。
【空美】
「……それで、どうなったんですか?」
急に黙り込んだ俺に、かんださんは遠慮がちに訊ねてきた。
「まぁ。結局応えられなかったんだけどね」
俺は溜まってきた涙を拭うと、なんでもない風に言った。
「彼らが好きだったのは俺の演奏じゃなくて、俺を含めたバンドの演奏だったらしい。徐々にライブに来てくれる人も応援してくれる人も減っていったよ」
あれは本当に辛かった。
ライブの客が減っていく様はまるで「お前に実力はない」と直接言われているようで。
「で、結局誰も応援してくれなくなっちゃって。俺は音楽の道を諦めたんだ」
以来、フリーターとして淡々と生きている。
今は切実に思っている。あんな現実を知る前に、事務所をクビになった時点で潔く諦めるべきだったんだ。
親の猛反対も押しきって悪あがきをしたせいで、親子縁も切られてしまったし。
今時高卒ではろくな就職先もない。音楽にかまけてばかりで有用な資格もない。
最初はそんな簡単に夢をあきらめなやがって。なんて思ってたけど、やっぱりあいつらが正解だったんだ。
まぁ、今更そんなことを嘆いても全て後の祭りなのだが。
【空美】
「……誰も応援してくれない?それって、0人ってことですか?」
内心自虐的に笑っていると、かんださんが少し低い声で言った。
彼女の表情を見ると、少しムッとしているようだった。
「う、うん。そういうことだよ」
俺は若干気圧されながら、引き気味に頷いた。
どうして?どうしてかんださんは怒ってるんだ。やっぱり、俺の話を聞いて不快になったのか?
【空美】
「そんなの嘘です」
「……へ?」
【空美】
「応援してくれた人が0人だなんて……1人くらいーーさんの音楽が好きだっていう人もいたんじゃないですか?」
かんださんは圧のこもった声音で言いながら、詰め寄ってくる。
吐息の温度が直に伝わってくるくらいの距離だ。
まつげの長い大きな瞳には、叱られた子供のように目を泳がせる俺が映っていた。
「か、かんださん!?近い、近いよ!」
こんな状況だっていうのに、俺は胸を高鳴らせてしまっていた。
【空美】
「あ。ご、ごめんなさい……」
両手で肩を掴むと、かんださんは彼女は謝りながらベンチの端に寄った。
さっきの距離は流石に恥ずかしかったらしい。頬を赤らめて明後日の方向を向いていた。
「ごめん……嘘。0人は言いすぎた。確かにいたよ。何人か足を運んでくれる人は」
呼吸を整えると、俺はかんださんに謝りながら言った。
「特に目が隠れるくらい前髪の長かった内気そうな女の子は、いつも来てくれてたなぁ」
二年前のことだ。
往生際悪く一人で活動し始めてから、両手で足りるほどの数になってしまった俺の客の中で、毎回ライブに参加してくれていた女の子がいた。
ぽつりぽつりと客が減っていく中で、彼女だけは最後まで参加してくれていたっけ。
思えば引退直前あたりは彼女のために演奏していたようなものだった。
【空美】
「ほ、ほら。いたんじゃないですか……その子はどんな子だったんですか?」
かんださんはなぜか緊張した様子だった。
「うーん。どんな子って言われてもなぁ。個人的な交流があったわけでもないし、髪で顔はほとんど隠れてたから、全然覚えてないんだよなぁ」
俺は二年前の記憶を捻り出しながら言った。
「いつも来てくれたのと、地味な子だったなーって印象しか残ってないけど……でも、目が合うとよく手を振ってくれてたな。間奏中とかに反応してあげると、嬉しそうに笑ってくれたのはよく覚えてるよ」
失礼な話、かんださんとは対極に位置するような子だったが。
その仕草は非常に可愛らしかったのも覚えている。
「もう二年くらいライブもしてないけど、あの子はどうしてるかな」
【空美】
「……きっと、ーーさんの復活を待ち望んでると思いますよ。何年もずっと待ち続けてると思います」
「……だったら嬉しいね」
妙に実感のこもった様子でかんださんは言ったけど。
俺はその言葉に頷く気にはなれなかった。
「……ありがとね。愚痴、聞いてくれて」
話すことも話し終え、会話が途切れたのでお礼を言った。
【空美】
「いえ、全然!わたしの力でーーさんの気持ちが少しでも軽くなってくれれば嬉しいので!」
首と両手をブンブンと同時に振るかんださん。
「かんださんは、どうしてここまで親切にしてくれるの?」
俺は話している間も、ずっと気になっていたことを訊ねた。
【空美】
「あはは。さっきも言ったじゃないですか。ーーさんが死にそうな顔してたから、ほっとけなかったって」
「ほっとけなかった理由が聞きたいんだけどな」
【空美】
「それは……善意ってことじゃダメですか?」
「じゃあ、君は俺みたいな人がいたら誰にでも声をかけるの?」
【空美】
「いえ。ーーさんだからほっとけなかったんです」
「……なんか破綻してない?」
【空美】
「多分、気のせいだと思いますよ♪」
……なるほど。
要するに秘密っていうことね。
「わかった。そういうことにしておくよ」
まぁ、別にいいんだけどさ。
美人局とかじゃなさそうだし、どうせもう会うこともないだろうから。
【空美】
「ーーさん。楽しいことは見つかりそうですか?」
「うん?」
【空美】
「さっきの話の続きです。辛い気持ちが和らいだら、何か思いつくかなって」
かんださんは上目遣いで俺を見る。
「あー。それね。それはね……」
そんな視線を受け止め、俺は──。
[選択肢]
1 まだ見つかってないと答えた。
2 君と話してる時間が楽しかったと答えた。
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