第7話

お菓子作りには、取り返しのつかない決定的な失敗というものがある。


花もはじらう女子高生のころ、初めてのお菓子作りでそれはやってきた。


メレンゲ作り、宥めてもすかしても卵白に何の変化もない。 呆然とする。


私の初めてはレモンメレンゲパイだった。


「春のお菓子」というフレーズに惹かれたのだ。


今考えると、初めてやのに、なに小難しいもん作っとんのや。


ちなみに姉の初めてはシュークリーム。 ぽってりしていて美味しかった。


…呆然としていても仕方ない。


ここまでにアメリカン練りパイ生地を苦労しながら作っている。


何と、不思議なことに、この時すでにくだんのレモンクリームも作っていた。


ここで敗退はありえない。


料理本を精査して、メレンゲの卵白は油や水が入ってはいけないとつきとめる。


なんのことはない。 ボウルに水気が残っていたのだ。


失敗したその卵白をどうしたのか、今となっては記憶にない。


ここまでみると、初めてのお菓子は失敗したんだと思われそうだ…が、しかし。


メレンゲを作り直し、絶賛のレモンメレンゲパイは完成した。




なぜこの話をしているかというと……


人生二回目の決定的な失敗というやつをやらかしたからだ。

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