永遠の雨

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 降りやまない雨。

 永遠に終わらない雨。


 雨は不幸。

 だから、特別な雨。


 特別に忌み嫌われた雨。

 一つの天候。


 終わらない永遠の雨は世界ごと全てを洗い流すかのように思えた。


 壊れたように流れる水雫は、雨となって人々を困らせていた。

 大地をたびたび大水の底に沈め、人々の生活ごと洗い流す。


 けれど人々は、その雨を止めようと立ち上がった。


 それは永遠に降り続いていた雨を、止めるための物語。







 雷色の瞳の少年が立ち上がる。


 このままではいけないと、世界を変えようと声をあげた。


 雨色の瞳の少女が賛同する。


 皆で知恵をしぼって、状況をよくしようと、後につづいた。


 空色の瞳のアマガエルが希望を口にした。


 世界は必ずよくなるはずさ、と皆の肩を叩いて鼓舞した。


 一人の少年と、一人の少女、そして一匹のカエル。


 彼等は世界を旅して、一つ一つ小さな所から変えていった。








 あふれそうな雨水をどうにかするため、世界に穴をあけて水がたまらないようにした。


 水害は徐々に減っていった。


「ありがとうありがとう。これで生活が楽になったよ」


 人々は感謝した。


 鳴りやまぬ雷鳴をどうにかするために、音の響かない場所をつくっていった。


 音におびえていた動物達は次第に元気をとりもどしていった。


「ケロケロ(ありがとありがと。これでみんな元通りだ)」


 そして、曇り続ける空をどうにかするために、雲を満たす空の蓋を外す事にした。


 いくつもの空が晴れ模様に満ちていった。


 人も動物も、太陽の光に目を細めて、ずっとずっと空を見上げた。







 彼等はそのたびに、雨水を流し落とす青竜穴から落ちそうになったり、


 雷の音を遮断する、雷鳴岩の掘削で手をいためたり、


 雲空の蓋を動かす、巨大な風車を力いっぱい動かし続けたりした。


 その努力は実り、永遠に降り続けていた雨が止んだ。


 永遠に終わらないはずだった雨は、降りやんだ。


 人々はもう雨に悩まされる事はない。


 晴れも雨も曇りも、等しく同じ自然として接する事ができるのだ。








 一人の少年と、一人の少女と、一匹なアマガエルは晴れ模様の空の下で微笑んだ。


 そして、それ以外の人々もそれぞれの、たくさんの空の下で微笑んでいた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

永遠の雨 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ