ライムの香りと血の匂い アルファポリスにて重複投稿

ソウカシンジ

酔った勢いで

 やってしまった。酔った勢いで夫を刺し殺してしまった。昔から酒癖がすこぶる悪く、夫にもよく迷惑をかけていたがまさかその悪癖で人を殺めてしまうとは思わなかった。旦那を殺めたその時、私の脳はひどく冷静だった。自分が何をしたか何が起こったのかを脳内で整理し、夫の死と自分の過ちに涙を流せる程に。しかしそんな頭とは裏腹に、体は信じられないほど熱く火照っていた。その熱が段々と頭に燃え移っていく、徐々に熱く、可笑しくなっていく。冷静さを持った脳が熱によって侵されていく、不気味な感覚だった。私の肌を何かが荒々しく這っているようなそんな感覚だった。迫りくる恐怖に私は為すが儘侵された。脳を侵された私は、テーブルを挟み向かいにだらしなく座る鮮血に塗れた旦那を、更に赤で彩った。所々にタトゥーを彫って美しく表していった。旦那の笑顔をその目に焼き付けながら。

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