第34話 原点はこれでしょ!!

 幸せって人それぞれー。


 アタシも今年で40歳になる。サバゲーも4年になる。平蔵さんの言っていた膝の痛みと腰の辛さが少し解ってきた。


 幸せって、辛さと似てる。


 環境によって甘かったり辛かったりパッキンで調整するように人生も調整が必要だと思う。


 幸せって、辛いと似てるー。


 ベランダで風に揺れる迷彩服がアタシ達の幸せである。


 部屋の隅っこに転がるBB弾の数だけ微笑んで、バッテリーの充電中のようなドキドキとワクワクをいつも感じてる。


 パーティションに並ぶアタシと平蔵さんの装備達。

 紅茶を飲みながら外に広がる青空を眺めてる。


 今なら解るくだらないアタシの過去、消せるわけないけど平蔵さんは笑って「よく頑張ったね!これからは二人だけの世界で生きよう」と言ってくれた。消さなくて良いんだ。平蔵さんがニコニコしながらヒットコールしてるのを見ると過去のアタシの馬鹿さ加減が嫌になっていた。裏取りされたときだけ見せる素の自分が恥ずかしくなる。


 人に観られる仕事ー。

 原宿でスカウトされてバカみたいに調子に乗って初めの頃はセクシーな姿でイベント会場でコンパニオンだった。偉い人の接待、人脈、ドロドロ営業、撮影ー。自分の身体と頭が引き離されていた。毎日、日にちや曜日感覚は無くネオンの中をボンヤリと歩いていた。桜咲く季節を何度か過ごして身体に商品としての価値が無くなり初めてアタシはあの世界から逃げた。


 荻窪の喫茶店でバイトしながら誰にも観られないように生活していた。いらっしゃいませ、ありがとうございましたを繰り返す日々で何となく落ち着いていた。男の人にも興味なく他人にも自分にも興味なかった。

 あの日までー。


 ほっぺを抓ってみる。


 痛い。


 最近ハマってるOD装備を着てみる。アジリートは揃えるのが至難の業だから似たようなレプリカを探した。ヘルメットをかぶりメカニクスのグローブをはめて鏡の前で一昔前のギャルポーズをする。


「あかりちゃん……」

振り返ると平蔵さんが立っていた。

「うわぁ~~~~!!」

アタシは恥ずかしくなって顔を隠した。

「ビックリしすぎでしょ!」

「だってこんなに早く帰ってくるとは思わなかったから!」

「だって今日は誕生日でしょ?」

「覚えてたの?」

「当たり前じゃん!んで、これプレゼント!」

平蔵さんは東京マルイ次世代ソップモッドM4を差し出してきた。

「わぁ!欲しいって言ってた奴!!」

「やっぱり原点回帰だよね!んで……」

平蔵さんはもう一丁出してきた。

「自分もかぁい!!」

「おそろおそろ!!」

アタシは平蔵さんに抱き付いた。

 平蔵さんもプレキャリの上から抱き締めてくれた。


 アタシ達の“幸せ”の形である。


つづく

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