第4話 待ち合わせ
手紙からメールに、そしてメッセージアプリへと連絡方法は変化した。やがて高校受験を経た時、陸人からあるメッセージが届く。
『しばらく、連絡出来ない。ごめん』
それを最後に、幾ら澪がメッセージを送っても既読が付くことはなかった。
しかし現在、澪は陸人との待ち合わせ場所にいた。駅前の広場で、よく待ち合わせに使われる有名な広場である。
待ち合わせ時間まで、後十分。そわそわと落ち着かないまま、澪は陸人を待っていた。
時計を見上げていた澪は、自分に近付いて来る足音を聞いた。そして、彼を見て目を丸くする。
「――澪、だよな?」
「陸人、くん?」
「……久し振り」
そこにいたのは、走って来たらしく息を切らせた青年だった。
幼い頃の面影をわずかに残しながらも、精悍で男らしく成長した陸人だ。澪は自分の頬が濡れていることに気付き、ようやく泣いているのだと自覚した。
「やっと……会えた……」
「うん。ごめんな、ずっと連絡出来なくて」
そっと陸人が腕を広げ、澪を抱き締める。
陸人の体温を感じて、澪はようやく彼と再会したのだと安堵した。涙を拭い、真っ赤に染まった顔に満面の笑みを浮かべる。
あれだけ恨み言を言ってやろうと意気込んでいたのに、澪の中からその気持ちは消えてしまっていた。それよりも今は、この幸せを感じていたい。
「……そろそろ行くか、澪」
「うん。行こうか、陸人くん」
二人は手を繋ぎ、陸人が軽く引っ張るようにして歩き出した。
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