いふのはなし
長月そら葉
第1話 メッセージ
彼からメッセージが届いた時、わたしは思わずスマートフォンを取り落としそうになった。
「え……?」
「どうしたの、
同僚に心配され、
そそくさと休憩室を後にし、誰もいない廊下の隅に体を隠す。それから澪は、再びメッセージアプリを開いた。
「どうして、今頃……」
新着メッセージの送り主は、
突然、連絡してごめん。それから、ずっと連絡しなくてごめん。
実は家のことでごたごたして、澪に連絡を取るどころじゃなかったんだ。
でも、ようやく落ち着いた。
今俺は、東京で仕事をしてるんだ。澪もそうだって、メッセージを入れてくれていたよな。
もしよかったら、今度の土曜日に会えないかな……?
「陸人くん……」
澪の唇から零れた愛しい人の名は、もう呼ぶことなどないと思っていた。既に諦めていたつもりだったし、彼が自分ではない誰かと幸せになってくれればそれで良いとまで考えていた。
否、考えようとしていた。無理矢理諦めたことにして、心に蓋をして鍵をかけていたに過ぎない。
それなのに、どうして。澪は陸人に返信を返すかどうか迷った。会えば、閉じ込めていたはずの想いが溢れてしまうかもしれない。澪はそれを恐れた。
「……でも」
会わなければ、何もわからない。何も進まない。
陸人に会って、恨み言をたくさん言うことに決めた。どうして連絡を絶ったのか、どうして十年も連絡をして来なかったのに突然することにしたのか。
(もし、彼女と結婚するんだっていう報告できちんと別れ話をするつもりだって言うのなら、笑顔で「わかった、お幸せにね」って言わなくちゃ)
そして、十年募らせた初恋に終止符を打つのだ。
澪は意を決して陸人に了承する旨を送り、息を吐き出す。無意識に息を詰めていたのか、胸が苦しい。
(陸人に初めて会ったのって、小学生の時だっけ)
ふと思い出す陸人は、澪に向かって笑みを浮かべていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます