特別SS 交換日記をしよう少年/交換日記なんて闇しかないぞ創造神<パート1>
突然だが、諸君は「交換日記」という神の
もちろん知っているだろう。少年くらいの年頃の人間たちが、互いの日常や趣味嗜好を紙媒体で交換し、共有しあうというアレだ。
全能たる
さあ、少年。
主従関係をより強固なものにするべく、私ともやろう──「交換日記」!!
*****
「やらない」
――……そ、そうか。
(Special Side Story.1___The Endless Game...)
――いや、終われない終われない終われない!
まだ
「悪かったなコミュ障陰キャで! だいたい交換日記なんて、陽キャがやるような遊びなんだよ!」
――そ、そうなの!? 陰属性とか陽属性とか関係あるのか!?
「関係大アリだ。俺もやったことあるさ、小学生の時にな。女子に誘われて気の迷いでオッケーして、男子二人女子二人の四人で一冊を回したんだ」
──おお、なんだ少年。経験者じゃないか!
「気を急くな創造神、話はここからが問題なんだ」
──も、問題?
「その交換日記は、結局二週間くらいで俺の手元には回って来なくなった。……なぜだかわかるか?」
──さ、さあ。なぜだったんだ? さては、少年の書いた日記がゲームの攻略法とかアイテムの収集場所とかログイン報告とかガチャ報告とか、オタクにしか通じない話ばかりで面白くなかったからとかかな?
「なんでそういう傷口えぐることしか言えないんだお前は!! ……いや、そもそも原因は俺にはなかったんだよ。最初からな」
──うん? そうなのか? ……じゃあ、なぜ?
「日記が回って来なくなって三日後くらいに俺は初めて知ったんだ。俺を交換日記に誘ってきた女子……あいつの狙いは、最初からもうひとりの男子に近づいて付き合うための口実だったんだよっ!!」
──ええええええええっ!? さては少年、知らずのうちにキューピット役を買って出ていたということか!?
「キューピットなんて聞こえの良い役回りじゃねえ、バーターだ!! 交換日記もプロフィール帳も、ただのお遊びだと舐めてかかっちゃいけないんだ。あれは陽キャたちが編み出した究極のコミュニティーションツール、つまり学校での人間関係を大きく変貌させる地獄の入り口みたいなもんなんだよおおおおおっ!!」
──おお〜、なるほど……そういう使い方があったのか、交換日記……。
「とにかく俺は交換日記なんてやらないからな創造神! あんなもん、仲良くなるための日記じゃねえ。自己満足な承認欲求を満たすためか、むしろこれまでの仲をぶち壊すようなデスノートそのものなんだよおっ!!」
少年の力説に私が戸惑っていると、それをどこかから聞きつけたのか、ぶ〜んと羽音を鳴らして飛んでくる小さな従属の姿がある。
「おい創造神。羽音ってなんだ羽音って。虫みたいな表現だからやめろってそれ」
──おっと、失礼した妖精アルファ。
「その交換日記、あたしも混ぜろ」
──えっ、アルファも!? ……いや、私は構わないんだが今しがた少年が嫌がっていてだなあ……。
すると、妖精アルファだけじゃない。
交換日記の話を聞きつけた他の住民たちも、こぞって「私も私も」と名乗りをあげ始めたのだ。
私はここで閃いた。……な、なあ少年。
逆に考えてみたまえ少年。苦い思い出は新しい思い出に塗り替えていけば、きっと交換日記も人生も楽しくなっていくんじゃないか? 人生二周目が肝心じゃないか?
なにより、これはただの交流ではない。住民同士でひとつの日記を回せば、私の世界にまつわるあらゆる情報をシェアすることができると思うんだが。
「……情報共有……」
──そ、そう!
少年。これはれっきとした政治的施策なんだよ!
私が懸命に説得すれば、少年は渋々了承した。
こうして私の世界へ新たに顕現した神の
私は少々、この神々の遊びを舐めていたのかもしれない。
交換日記が巻き起こしたのは、情報共有によって互いの絆と友情を深め合う「光」のイベントではなく、むしろ互いがすでに有していた、少年ばりの心の「闇」を披露し合う地獄のイベントであったことに……。
(Special Side Story.1___The Endless Game...)
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