第10話 スキル紹介ですわ〜!
全員、店の裏から店内に戻り、奥の円形のソファー席で一息つくことになった。
すやすや。スバルは寝息を立てていた。身体はまだ、小さいままでエムリアに膝の上にすっぽり収まっていた。
「かわいいな〜」とユニはスバルのほっぺをなでながらほこほこと笑顔になる。
「そういえばあなたは子供好きだったわね」とエムリア。
「ええ、食べちゃいたいぐらい……」じゅるり、とユニは舌なめずりする。ユニコーン娘だけあって舌が人の倍ぐらい長い。
「その発言はやばいわよ、いつかやらかさないでよね……。ま、かわいいのはわかるけれど」エムリアもスバルの髪をくりくりともてあそぶ。
「でもなんで生き返ったのかしら……?」
「蘇生魔法じゃないですもんね。うーん、他に考えられるのは……あ、スキル?」
スキル。この世界で噂程度に語られているチカラ。それを持つものは神によって愛され、選ばれし存在と言われている。
『神族』そう、敬意と畏怖をこめてスキル持ちは呼ばれる。
「神族……。昔、一度お目にかかった遠い国の皇女様が持っていたわね……確か『絶対防御』とかいう聞くだけでやばそうなスキルだったわ」エムリアは話す。「うーんそこら辺の娘が持っているなんて考えにくい……でも生き返るなんて、スキルじゃなきゃ説明が」となやむ。
「説明しよう!」ぴょんと、創造神ヘティアが机の下から現れた。たゆん、と無駄におっぱいがゆれる。
(誰?)(誰です?)エムリアとユニは同じ感想を抱く。
「ご明察の通り、スバルちゃんはスキルを持っているよ! しかもたくさん! チート級のスキルを欲しがらなかったからたくさんあげたんだ!」
「なるほど?」エムリアはなんとなく納得する。
「とりあえず今日は三つのスキルを紹介するね」
「はあ、お願いします」とユニ。
「まず一つ目のスキルは『ぱくぱく』。スバルちゃんお腹のの上限を超えて食べられる能力! しかも太らないと言うおまけ付き!」
「なるほど、だからドナドナいくら食っても平気だったのか」ユニは納得する。
「ふたつ目のスキルは、『食いだめ』。この世界の生命にはHPがあって、食事をすることで回復する。試しにみんなのHPを表示するね。えい」とヘティアは指を振る。
エムリア450/800HP
ユニ1300/1570HP
そう、二人の頭上には数字が表示されていた。
「エムリア様、結構HP減ってますね……」とユニ。
「うん、店まで走ってきたのと、蘇生魔法で結構体力使ったみたい」
「んで、『食いだめ』はHPの上限を突破することができるよ! ほい」ヘティアはスバルに向かって指を振る。
スバル1/8000HP
「うわ私の10倍!? やば……高すぎ……」
「摂取した1カロリーにつき約1HP上限を上げられるよ! しかも上限を超えたHPは減っても痛みを感じないよ〜」
「だから店長と喧嘩してもしばらく耐えられてたのかぁ」ユニはちょっと納得する。
ぴのん
スバルの表記が『1/7960HP』に変わる。
「あ、HPが減っていると上限もそれにあわせて減ってくよ。徐々にね。最終的には本来のHPにもどるよ〜」
「その、本来のHP上限はどのぐらいなの?」エムリアは聞く。
「確か、200とかだったかな? まあ本来は非力なお嬢様だからね〜」
「なるほどね。……もしかして、3つめのスキルは蘇生に関するものなのかしら? なぜ生き返ったのかわからなくて……」
「ご名答! 3つめのスキルは『食い戻り』。残りHPを超えたダメージを受けた場合、一度死んでも復活するよ!」
「え、チートじゃん」ユニは驚く。
「ただし条件付き! 食べ物を何かしら食べてなきゃだめで、食べたものをすべて消費して復活するよ。それに復活したときは瀕死ですやすや、身体がちっちゃくなっちゃうけどね」
「なるほどッスねぇ。だからちびっこになってたのかぁ……」厨房から戻ってきた店員が納得する。
「それとおまたせっす。ドナドナパフェになりやす」店員はどんとユニの前にお皿を置く。
名物ドナドナパフェ。それはドナドナを三つ重ね、縦の穴の中にコーンフレーク、カスタード、生クリーム、プリン、アイスクリームを層にして重ねて詰め込んだ激甘スイーツだ。
「待ってました〜」ユニは満面の笑みでスプーンを手に取り、食べようとする。
「いただきます、しなさいね」エムリアは指摘する。
「あ、すみません、いただきまーす!」ユニはぱんと手をあわせる。
ふわり。揚げたてのドナドナの匂いがただよい……スバルの鼻をくすぐる。
ぱちり。その瞬間、スバルの目が開く。
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