第7話 時代の寵児は悪魔の化身
『時代の寵児』とは何ぞや。
「その時代に世間から歓迎され、もてはやされる人」、「時代の風潮に合った才能やアイデアを遺憾なく発揮して人々に受け入れられた人」
それは、悪魔のような人間でも良いのか?
狡猾な臆病者でも良いのか?
ただ単に時代の風潮に合えさえすれば良いのか?
『違法ドラック』、『異常な変質的性癖』、『罪なき女性の虐待』そんな奴でも世間は簡単に受け入れるのか?
20世紀最大の悲劇を産んだ、あの『アドルフ・ヒトラー』を支持したドイツ国民然り、悪魔は独裁者だけではなく、その悪魔に依存した者も悪魔なのだ。
どれだけの人が虐げられたのか?どれだけ罪なき人が苦しんだのか?
そんな苦しみは、悪魔達には関係ない。自分達さえ良ければそれで構わないのだ!
時代に逆らわず、時代の風潮の流れを利用し、本来、神が望んだ者でない者が人々を扇動する。
しかし、これだけは忘れてはならない。
『時代の寵児』がもてはやされるその裏面には、悪しき時代に抵抗し、己の信念を貫き、その時代から取り残された事を真なる証とした潔き人々が居ることを
臆病者が悪しき時代を創り、その悪魔の化身としての『時代の寵児』を祭り上げることを
英一と詩織は25歳で婚約した。
2人を取り巻く人々は、英一を褒め称えた。
「純粋な愛を高校時代から育み、一旦、大学で別れ離れになった2人であったが、英一の詩織を想う純粋な愛が自ずと詩織の心に響き、詩織も自分を心の底から愛してくれる人は英一しか居ないと感じ取り、福岡の大学を辞めて、英一の広い心の中に全てを捧げ熊本に戻って来た。」と
そんな清らかな恋物語として、「同級生カップル」を地元マスコミはこぞって褒め称えた。
学生秘書として脚光を浴びていた英一は、この純粋な「同級生カップル婚約」という好感度を付け加え、更に世間から愛される好青年としての印象を得た。
その裏に隠された事実は、
親の七光で、ただ議員の隣に座っていた能無しのボンボン秘書、ヘ○イン、MDMAといった違法薬物を使用し、1人の女性を拉致し、監禁し、調教し、強姦した、この男が、
『時代の寵児』となった!
そして、この『時代の寵児』は、いとも簡単に、市役所入所3年目で、重責である秘書課の市長付きに躍進した。
また、このボンボンは、その重責に就くに見合う業績は何も残していなかったにも拘らず、いや、それどころか、我儘放題であったにも拘らずにだ!
この3年間の英一の職務態度は目に余るものがあった。
仕事は選り好みし、自分の関心のある議会の傍聴しかせず、議事録さえも作成しようとしなかった。
ただ、議事を聞いているだけであった。
周りの市役所職員は、この処遇には慣れっことなり、抵抗する意欲もなかった。
先に言ったとおり、過去から繰り返される愚かな慣習であった。
市長を始め、幹部連中は、父太郎に何らかの世話になっていた者ばかりであり、彼等は形のない忖度、お中元、お歳暮として、このボンボンをエコ贔屓することで父太郎に忠誠を示していたのだ。
その影で熊本地震の復興に向けて、多くの職員が自らの危険も顧みず、被災者のために尽力していたことには目を向けず、影の実力者に怯えるように一人のボンクラの『時代の寵児』を作り上げたのだ!
地元住民も同罪である。
やれ子供の就職、やれ子供の結婚式、やれ葬式、そこに大物の関与が有れば顔が立つ、そんな悪しき旧態依然とした慣わしが、こんなとんでもない犯罪者、変質者を『時代の寵児』ともてはやした。
だが、神はちゃんとご覧になっている。
この神の創造した傑作である人体を自身の性癖のために、「快楽」というフレーズのみに、セックスに麻薬を混合させ、「快楽」を貪るこの悪魔の変質者を
変質者英一の犠牲者である詩織は、MDMA服用による「搭乗型超巨大マシンバイブ『アクメライド』」の拷問調教を毎週受け続けていた。
しかし、詩織の重度のセックス依存症は、その快感にも倦怠感を示し始めていた。
詩織は、この「アクメライド」に搭乗し、ぐるぐると回転させられ、膣とアヌスを高速ディルドバイブで突かれまくっても、喘ぎ、感じ、絶頂し、果てるには果てるが、明らかにその回数は少なくなり、搭乗時間の半分は、恰もマネキンが搭乗しているような感じであった。
それを眺めている『時代の寵児』ともてはやされている英一の表情には、明らかに焦りの色が見え始めていた。
英一は最早、詩織の性欲を満たすためには、ヘ○インしかないと分かってはいたが、市長付きとなった今、易々と動けるはずはなかった。
この『時代の寵児』には、「愛」によるセックスの観念は微塵たりとも持っていなかったのだ。
詩織は自然の如く、また、竿師の元に顔を出すようになった。
シャブセク、3P、4Pの乱交、SMプレーなどを繰り広げてきた。
そんな頃、詩織に竿師から電話が掛かってきた。
その内容は、「今日の予約の件ですが、私、ちょっと行けそうにもないので、代わり者、行かせますので。御心配なく、貴女の好みは伝えていますから。」というものであった。
詩織は竿師が交代することに些か不安な感じに駆られたが、その不安を性欲は上回っていた。
詩織は例のスナックに入り、地下の空部屋のドアを開けた。
部屋には初老の小柄な、至って普通に見える男性がベットに座っていた。
詩織は男性に言われるまま、服を脱ぎ、全裸になって、ベットに仰向けに寝た。
その小柄な男は服も脱がず、道具も持たず、シャブの注射器も持ってなかった。
男はベットに上がり、詩織の股を広げこう言った。
「あんたの弱点、奴から聞いてるから。奴が言うにはク○ト○スが一番感じるということだが、どれどれ」と詩織の陰核を指で弾いた。
詩織は「うっ」と唸り、その陰核は瞬く間に勃起してしまった。
男は言った。
「なるほど、こりゃ、膨張度が凄いわ!」と言いながら、その詩織の勃起した陰核を舌で舐め始めた。
この男はクリ責めを得意とする裏サイトのAV男優であった。
詩織は久々に感じまくった。
その男のクリ責めは、舌で転がし、指で摘み、歯で噛み、指で弾き、唇で挟み、髭で擦りなど
あらゆるバージョンを絶妙なローテーションで駆使して行った。
勿論、ク○ト○スのみ、徹底的に攻撃した。
詩織はこんな体験、初めてであった。
この店に来てからは、激しいプレーばかりされていた。
流石、裏サイトのAV男優である。
詩織が、逝き果てると、ピクピクと痙攣するク○ト○スをあらゆる角度から小指の爪で軽く掻き、詩織の感度を確かめ、どの部分が一番敏感かを見極めていたのだ。
男は詩織の陰核は、男性器でいう裏筋が一番のウィークポイントだと把握し、そして、詩織に念押しをした、
「今からはね、あんたの一番感じる部分しか舐めないからね。いいかい、一番感じる部分しか舐めないからね。」と暗示を兼ねてゆっくりと二度言った。
男は人並み以上に長く細い舌を窄めるようにし、詩織のク○ト○スの裏側を丁寧に舐め始めた。
詩織は悶絶しながら、「そう! そこ、そこなの!そこよ!あ、あ、いく、いく、いくぅ~」とあっという間に逝ってしまった。
男はそんな詩織の声は耳に入ってないかのように、止めることなく舐め続けた。
詩織は逝く度に絶叫、痙攣、失神を何度も何度も繰り返し、最後は、
「もうダメ~、気が狂いそぅ~、あ、あ、逝く~」と叫び、深い失神に落ちて行った。
男が舐め上げた詩織の陰核は、裏の部分だけが明らかに赤く充血しているのが見て分かり、陰核全体は、最大級に勃起し、蜜蜂の尻振りダンスのようにプルプルと激しく痙攣を起こしていた。
詩織はまた新たな快感を貪欲な性欲に新メニューとして与えたのだ。
しかし、これは病気なのである。
現在、医学では「セックス依存症」の定義が確立はしていないが、無理矢理拉致され、監禁調教され、MDMA中毒にされ、ヘ○インを打たれ、覚せい剤を打たれ、巨大なディドルで突かれ、そして飴玉ように陰核を舐められ、普通に生きて行けるはずはない!
いや、普通の人間なら、とうに自殺してもおかしくない精神状態となるであろう!
詩織は無意識の中に、掛け替えの無い、何かを堅持し続けていたのであった。
その頃、熊本の『時代の寵児』と真反対の生き方をする青年が東京のある警察署の拘置所の固いベットの上に横たわっていた。
健人であった。
健人は例の事件で自宅待機三か月を命じられ、その間、健人は、すっかり会社・社会の裏街道に媚びる体質に嫌気がさし、やけになり、酒場を梯子し、酒を浴びる毎日を送っていた。
健人は焼き鳥屋でふとテレビを見た。
その画面には詩織が映っていた。
健人はじっとその画面を凝視した。
テレビの音声は、地方熊本のミスコンテストの優勝者が、熊本の御曹司、元衆議院議員の息子と婚約したと伝えていた。
そんな地方の話題ニュースに視線を送るのは、店内客で健人ただ一人であった。
詩織は満面の笑みを浮かべインタビューにハキハキと答えていた。
そのニュースは、次に英一の紹介を地元熊本のテレビ局のアナウンサーがテロップで紹介していた。
英一の写真等は映らなかった。
テレビ画面に映る詩織は、前より美しくなったように健人の目には映った。
詩織がどんな質問をされ、何と答えたか、健人の耳は聞く努力を放棄していた。
ただ、じっと、嬉しそうに笑顔を見せる詩織の顔だけを健人は凝視した。
そのニュースは、どうだろう、1、2分で終わったようであったが、健人には時間が止まったかのように違うニュースに切り替わってもテレビ画面に詩織の顔が残像として見えていた。
健人は、暫し、テレビを見、そして、何事もなかったかのように、残りのコップ酒を飲み干し、勘定を済ませ、店を出た。
家路を歩いて帰る途中、人気のない路地で缶コーヒーの自動販売機だけが明るくその存在をアピールしていた。
健人はその自動販売機の前に立ち止まった。
そのチカチカと点滅する自販機のランプを見ながらこう呟いた。
「あいつ、笑っていたよな。嬉しそうによ!」と
そう呟き終わると、健人は自販機の下のガラスを足で蹴り割った。
「ガシャーン」という音が暗闇の路地に響き渡った。
健人は、意にせず、半分光を失った自販機を後にし、路地裏から表通りに出て行った。
少し歩くとコンビニが見えた。
健人は咥えタバコのショッポをコンビニ前に設置されている灰皿に捨てに向かった。
そこには、2、3人の若者、俗に言うDQNがヤンキー座して灰皿を占拠し、屯していた。
健人はそいつらに構わず、その頭の上を越すように吸い殻を灰皿に投げ込んだ。
1人のDQNが驚き、健人に絡んできた。
健人は無言でそのDQNの顔面を殴った。
すると残り2人のDQNが健人に掛かって来たので、健人は、1人の腹を蹴り、もう1人はそいつの頭を抱え込み顔面に膝を食い込ませた。
コンビニの店員が電話した。
コンビニ駐車場にパトカーが到着した。
健人は何も言わず、自らパトカーに乗り、後部座席に座った。
次にコンビニ駐車場に救急車が来て、乗組員が3人のDQNを救急車に乗せていた。
健人はパトカーの中でポリ公が何か質問していたが、それは眼中にはなかった。
健人が見てたのは、あの焼き鳥屋のテレビに映った詩織の笑顔であった。
健人はその時、心の中でこう詩織に問うていた。
「俺の何処が嫌だったのか?
煙草吸うのが嫌だったのか?
酒を飲むのが嫌だったのか?
何が一体嫌で去ったの?何も言わずに…、
詩織!それは少しずるくないかい?
詩織!それは少し酷じゃないかい?
詩織!そんなに御曹司が、金持ちが良かったのか?
詩織!そいつは俺より金以外で何処が優っていたのかよ?
何も言わないで消えるのは、俺はずるいと思うぞ!」と
今、健人は警察署の拘置所の固いベットに仰向けに寝て、上段ベットの底板を眺めながら、
「潮時だな。愛媛に帰るか。」と一言呟き、
ゆっくりと眼を閉じて眠りに入って行った。
そして、こんな夢を見た。
「何処かの公園のベンチに白い服を着た詩織がポツンと座っていて、
健人が近づいても、目を合わせてくれない。
声を掛けても此方を向いてくれない。
その詩織の表情は、何か寂し気であり、憂いを帯び、その目は一点のみを瞬き一つせず見つめていた。
健人がそのベンチに駆け寄ると、詩織は幽霊のように白い霧の中に消えて行った。」
健人は目を覚ました。そしてこう思った。
「詩織は俺を待っているのか?
俺に助けを求めているのか?」と
拘置所の窓ガラスには、蛾が何度も何度もぶつかっては、バダバタと忙しい音を鳴らしていた。
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