白猫のあくび

宵埜白猫

オリジナル(単話)

『魔女は明日の夢を見る』

「ねぇ、貴女は明日なにしたい?」


 穏やかな声音で魔女は、彼女の膝を枕にして眠る少女に問いかける。

 魔女の脳裏に浮かぶのは、これまで少女と過ごした明るい記憶。少女の無垢で楽し気な笑顔。

 しかし、少女は答えない。


「私は、いつもみたいに貴女とのんびり過ごせたら、それで十分かな……」


 魔女は静かに呟いて、少女の頭を優しく撫でる。

 次第に、その手がわなわなと震え出して――


「……それで、十分だったのよ」


 魔女の頬を伝った涙が、少女のまぶたに落ちてはじけた。

 涙は止まる気配を見せないけれど、少女を見つめる魔女の顔はどこまでも穏やかで……。

 そっと閉じたまぶたの裏で、魔女は明日の夢を見る。

 もう叶わない明日の夢を、魔女は独りで見続ける。

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