嘔吐

吐く。それが僕の…

僕は吐く。

いつものようにトイレに駆け込んで

いつものように吐く。

誰にもみられない、1人だけの空間

「ねぇ、どうしてそんな事も出来ないの？」

「君ならこんなの、ラクショーだよね？」

「うっわー、アイツ出来るからって調子乗ってる」

学校なんて嫌いだ。

人付き合いなんて嫌いだ。

他者が嫌いだ。

努力はこれでもしてるんだよ。

ただ、何故か出来ただけ。

不器用でも、上手くいっただけ。

一つ、上手くいけば

周りの目はどんどん先ばかり見て

勝手なフィルターを作って

【その色】を通してしか

僕を、見てくれない。

その先に、僕はいない。

名前だけがある。

魂のない偶像

それがブランドになってしまう。

僕は壊れかけの機関車だ。

僕が降りた駅に、誰も待ってくれてる人なんていない

僕は言葉にする事が苦手で上手くいかない。

感情が分からない。

分かるけれど、分からない。

楽しい。幸せ。嬉しい。痛い。苦しい。辛い。悲しい。怒り。

全部極端だ。

混ぜ物は知らない。

曖昧な子は分からない。

どう表現すべきなのかも、

どう伝えるべきなのかも、

分からない。

ただ教科書にかいてある事を、なぞるだけ。

そんな人生だ。

嫌だ。苦しい。助けて。

体が上手く動かない。

1人になりたいけど、1人は嫌。

そんなワガママを吐いては飲み込む。

何度、この口を覆ったか。

何度、この手を伸ばしかけたか。

何度、この首を締め上げたか。

縋るしかなかった。

だから走ってるんだ。

先に行った名前を追いかけて。

どうしたらいいの。

僕はいつものように吐く。

聞き手のいない空間に

ただ静かに目を閉じて

自分の中で言葉を

吐き

噛み砕き

ぐしゃぐしゃにして

飲み込むのだ

ー終ー