直接、愛を囁かれる。臆病になったら負け①
『スーくん(涼夜)にどれだけ私たちの愛が重いか、分かってもらうね?』
頭の中で何度も繰り返される。
乃寧と希華の愛が重い……??
「そもそも考えたの。涼夜に自信がないのは」
「私たちの愛がちゃんと伝わってないから」
「なら、この際勿体ぶらないで」
「
交互に話す。
瞳はなんだか怪しげに光っているのは気のせいだろうか。
「ぐ、具体的に何するの……?」
ここで会話は一旦止まった。そして乃寧の方が閃いたように微笑む。
「臆病になったら負け、ってのはどう?」
「臆病、負け?」
「お姉ちゃんどうやるの?」
「そうね、例えば……こんな感じ」
乃寧は僕の手を取り、自身の胸に手を添えさせる。
「ちょっ、乃寧!?」
胸に触れている手。それにドクッドクッという心臓の音が聞こえる。
「私、涼夜のこと大好きよ」
「ど、どうしたのいきなり……?」
「大好き……本当に好きだから……すごく、ドキドキしてる。聞こえるでしょ、心臓の音」
「う、うん……」
ドクドクと鼓動が速くなる。それにつられ、僕の鼓動も早く……体温が熱く……
「っ……」
「はい、顔逸らした。涼夜の負けー」
「……こ、これが負けなの?」
「ええ。私が目を見て、鼓動を聞かせて好きって伝えたのに、涼夜は照れるばかり。それじゃまるで愛の一方通行。私たちの愛を全然受け止めてくれてないじゃない。さすがにこのやり取りぐらいは5分くらい持って欲しいわね」
そうな事言っても……ううん。臆病になるな、僕。2人と向き合うって決めたんだ。少しでも頑張らないと……。
「お姉ちゃん、次私がする」
「希華が? ん……仕方ないわね」
「やった。じゃあスーくんこっち向いて」
「ん?」
希華の方を向いた瞬間だった。
「ん……ちゅ」
「んんっ!?!?」
希華の唇が僕に押し付けられた。
「ちゅぷ……スーくん、好き……大好き……」
「んん! んん!」
肩を掴まれ、どんどん密着度が増す。唇をこれでもかと感じる。これはもう、臆病とかの前に……。
「こーら、希華。飛ばし過ぎ」
乃寧が希華を後ろから抱きしめて、剥がしてくれたおかげで、ようやくキスの雨は止まった。
「だって好きなんだもん」
「それは私だって同じよ。でも序盤から全快で襲い掛かったら涼夜がパニックになるじゃない。なんのために私が胸に手を当てるところから始めたと思っているの? じっくり……ゆっくりと私たちの愛をわかってもらうの」
「えーでも……」
乃寧と希華が何やら話している。
すぐ傍にいるので会話くらい聞き取れるはずなのに。
それだけ僕の頭はぼんやりしていた。
なんかでも、途中で終わられるとモヤモヤする……。
堪らなくなった僕は、2人にこうおねだりする。
「あの、……もう1回いい?」
「……ふーん、ええ、もちろん。ちなみにそれが臆病じゃなくて積極的って言うのよ」
「じゃあスーくん、私ともうキス1回しよ?」
「うん……」
「よーい、スタート」
「んっ」
再び、希華の唇が触れた。
先程よりも少しだけ長い間、唇を重ねる。
唇を重ねている間、希華の方から手を握ってきた。恋人繋ぎをしながら、唇の感触を感じる。
「ん……ちゅ、ぅ……」
「ああっ、希華……すごい……」
「……なにがすごいの?」
「なんかもう……ヤバいというか……」
「なにがヤバいの?」
「これ以上は……恥ずかしくて……言えない」
そう言うと、希華が小悪魔のようなイタズラな笑みを浮かべる。
「これが負けって事だよね、お姉ちゃん♪」
「そうよ。よくできました。涼夜も少しは成長できて偉いわよ。じゃあもう1回、私がして一旦終わりね」
乃寧は、僕の顔を両手で挟み、自分だけを見つめるようにする。視界には乃寧の綺麗な顔しか映っていない。キメ細やかな白い肌、ツンと尖った鼻、パッチリと大きな瞳……こんな美人と僕は一緒にいるんだな……。
などとぼんやりと考えていると、
「ねぇ、涼夜。さっき何がヤバかったのか言ってくれたら……ご褒美に頭なでなでしてあげるわ。言わなかったら、いい子のお口にしてあげないといけないから……さっきよりも激しいキス……ね」
「っ、それは……乃寧は意地悪だな」
「ふふ、涼夜の反応が可愛らしくて、ついからかいたくなるの。……こんなイジワルな美人はお嫌い?」
「き、嫌いじゃない……むしろ……好きです……」
「よろしい。じゃあ言えるわね?」
「ええと……うわ、やっぱり恥ずかしい……」
「ダーメ。……目、逸らさないの」
「はい……うぅ」
僕は羞恥心で、つい顔を背けようとするが、乃寧はそれを許してくれない。
それほど強い力で押えられていないのに、何故だか逃げられない。
微笑む乃寧に顔を見られながら、赤面しつつ、僕は答える。
「希華が……乃寧が……凄く綺麗で、ちょぴりエッチで……なんかこう、ヤバかったです」
「〜〜〜〜っ♪ ふふ、良く言えました。いい子いい子」
「うぅ、乃寧……」
乃寧に頭を撫でながら、僕は圧倒的な羞恥心と敗北感を感じていた。
だが不思議なことに、不快感はなかった。
幼い子をあやすようによしよし、と頭を撫でられているのに、何故か嫌な気分にならない。むしろ、安心してしまって……
「っ、ぁぁ……」
「うふふ、涼夜の顔、凄くトロンとしてて可愛い……♡」
「のの、ね……」
「これからも一緒に3人でいましょう。大丈夫。涼夜が私たちの愛を受け入れてくれればあとは身を任せて。私が絶対に涼夜を守るから。涼夜は安心して自由に、楽にしていいのよ」
頭をなでなでされながら、そんな風に優しい口調で囁かれたら、頷くしかない。
「むぅ、お姉ちゃん、自分の世界に入りすぎ……私の事、忘れてたでしょ。それにスーくんも……」
希華が僕の腕に引っ付いてきた事で、僕はハッとした。
「ふふ、ごめんなさい。つい〜」
「ついじゃない。私だって……」
「ふ、2人とも、そろそろ休憩を……」
じゃないと色々持たない。
「そうね、休憩しましょうか。これを今日1日やっていくわ。先に涼夜が臆病になったら負け。逆に私たちが臆病になったら負け。ちなみに10回負けたら……本当に襲うから♪」
「え……」
【あとがき】
姉:乃寧
盲愛保護型ヤンデレ
常に主導権を握り、甘やかしたい、守ってあげたいという母性本能が強いヤンデレさん。
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