美人な双子姉妹のののののの幼馴染じゃなくなったはずの僕は溺愛されすぎる
悠/陽波ゆうい
第一章
二輪の花、幼馴染じゃなくなった僕
僕には、同じ病院で同じ日に産まれた事がきっかけで、昔から家族ぐるみの付き合いをしてきた可愛い双子の姉妹がいた。
お泊りをしたり、一緒にお風呂に入ったり、旅行に行ったりと家族と同じぐらいの時間を共に歩んでいた。
あの頃は運命共同体と言っていいほどだった。
けれど……幼馴染という都合のいい関係は、成長していくにつれ変化する。
双子姉妹は小さい頃からとても可愛かった。それは幼いゆえの可愛さではなく、目鼻立ちなど、とにかく将来有望な可愛さ。
それは見事に当たった。
整った顔立ちは中学、高校と成長していくたびに美しさを増した。
言わずもがな、成長した幼馴染は僕とは釣り合わない高嶺の花になった。
すれ違った者は誰もが一度は振り返るほどの美人姉妹。今まで受けた告白の回数は数知れず……。
美人は羨望の眼差しで見られる。誰もが隣の席を狙う。
対して僕はどこにでもいそうな凡人。
こんな僕が双子姉妹の傍にいたら、
『え、なんでアイツが……』
『え、幼馴染なの!? 幼馴染って関係でアイツといないといけないとか可哀想〜』
『〇〇ちゃん達、優しすぎるよね』
疑問を持たれ、嫉妬されることは目に見えてる。いや、実際に言われた。
学校に通うようになれば、多くの人と出会う事になる。当然、僕なんかよりも優しい人はいるし、カッコいい人はいる。それは歳を重ねるごとに増える。
だからこそ、思った。
彼女たちに僕という存在がいることで手を焼かなくて済むようにしよう。これ以上、彼女たちの迷惑になってはいけない。
幼馴染ということは元々なかったことにして、僕は双子姉妹から遠ざかることにしよう。
そう決心したのが、小学6年のこと。
今は高校2年になろうとしていた——
◆
朝の早い時間帯にも関わらず、校門付近では誰かを待ち侘びているように生徒が歩くスピードを落としていた。
そして、
「おい、来たぞっ」
お目当ての人物が来て、誰かが言う。
怖いと恐れられる生徒指導の先生? サッカー部のイケメン先輩? 超有名なモデル?
どれも違う。みんなの視線の先は——
「おはようございます、
「今日もお綺麗ですね!」
「一緒に行ってもいいですかっ」
わらわらと生徒が、今来た2人の周りに集まる。
姉妹は、入学当初から二輪の高嶺の花として、全生徒たちの憧れの的。学園の人気者だ。
『涼夜!』
『スーくん!』
僕、
今日も僕は遠くからその姿を見守る。
話しかけることもなく、ただ眺めるだけ。
うん、この距離でいいんだ。
2人が僕という幼馴染の縛りに合わなくて、自由に生活できる。
もちろん寂しく思う時もある。
けど、この立ち位置が似合ってる。僕は、もろくに話しかけることすらできない男子の1人でいいんだ。
「よしっ、今日も一日頑張るぞ」
そう意気込み、背中を向けて歩いた。
(姉、
「のののの姉妹、マジで美人だよなぁ」
「あんな美人とお近づきになりてぇ」
「それな。俺、マジで狙っちゃおっかなー」
「でも彼女にするにはちょっと高嶺すぎるというか、なかなかさせてくれなそうじゃね?」
「ばっかお前。そういう子をエロエロにしてヤるのがいいんだろうが」
「うわっ。お前サイテーだな〜w」
男たちの下品な妄想と笑い声……吐き気がする。
「あっ、乃寧さんの方がこっち向いた!」
「俺今目があったぞ!」
「俺には笑顔が向けられぞ……!」
「俺だって!!」
同じ学校制服を身に纏った男子。名も知らない、関わったこともない。関わるつもりもない、薄汚い性欲の塊……そんな彼らに作った笑顔でとりあえず手を振りながら挨拶を返せば、頬を緩め、俺が目があった、だの、笑顔を向けられだのと言い争い。よくもそれで顔を赤らめて勘違いできるものだ。
私たちが本当に笑顔になる男子はあの人しかいないのに——
ふと、視界に見覚えのある背中が映る。
嬉しくなって思わず、足を止めた。
「お姉ちゃんどうしたの?」
人見知りな妹、希華は腕にくっついたまま、不思議そうに見上げる。
「……なんでもないわ。行きましょうか」
「うん」
止まった足を動かす頃には彼は見えなくなった。
先ほど瞳に映ったのは、黒髪に平均的身長のどこにでもいそうな男子。でも私たち双子姉妹にとって特別な人——千世涼夜だ。
私たちはいつも3人一緒だった。
けれど、小学6年生の頃から徐々に涼夜が距離を置き始めて……
なんで……なんで避けるの……? ねぇ、涼夜……ねぇなんで? ……なんで?
私はこんなにも好きなのに……。
◇タイトルはこれであってます◇
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