第30話ラブレター
俺がもたもたしている内に、西条は工藤に連れられて教室を出て行ってしまった。
はやく誤解を解かないといけなかったのに……何してんだ俺。
「皇っていう子に貰ったんだ」
――たったそれだけをすぐに言っておけば、西条もあそこまでにはならなかったはずだ。
でも、俺は言えなかった。
それを言えば、結果は見えているから。
俺と西条の関係が、
だから伏せた。
結果的に裏目に出たけど。
極め付けは、反射的だったとはいえ、弁当を西条から取り上げてまで。
あれは不味かったよな……。
バカかよ。俺。
自滅じゃん。こんなの。
自分の不甲斐なさに情けなくて、イライラして、髪を手でクシャクシャにするが、そんな事で俺の気持ちも晴れることはなく――。
「……どーすっかなぁ」
途方に暮れる俺。
穏便に済ます方法じゃないものかと、椅子の背にダランともたれて、考えを捻りだしてみるが、打開策は全然見つからない。
☆★☆
――完全に手懐けられてますよね。断言できます。そんなんでよく告白なんかしましたね? 絶対にこれからも成功しませんよ? 恋人関係になるって事は、お互いがお互いを対等な関係になるって事なんですから。
薄暗くなってきた空に浮かぶ鱗雲がゆっくりと動くのを、何も考えずただボォーっと眺めていると、ふと昼に皇に言われたことを思い出した。
……対等な関係か。
……。
……。
……。
……。
……。
俺は西条と対等じゃ、、、。
西条は……
勉強もスポーツも何もかも。
それに比べて俺は……。
スポーツはまあまあで、勉強は並。
(……あ)
そこまで考えると、俺は当たり前の事に気付かされた。
……俺達は対等な関係なんかなれるはずがなかったんだ。
どう考えても、西条に俺は不釣り合いじゃん。
それなのに俺は、一度フラれたのにまだ諦めきれずにいるなんて……。
(ハ……ハハ……何かアホじゃね、俺)
自分のピエロ具合に、ひどく情けなくなって、さっきまであんなに考えていた事が全部馬鹿らしくなって、俺は教室を出た。
☆★☆
ひどく投げやりな気分のまま、俺は下駄箱に向かった。
ここが誰もいないとこだったら、気の済むままに大声を出して叫びたいぐらいだ。(まあしないけど)
代わりに半ば八つ当たりの感じで、乱暴に下駄箱を開けて、靴を取り出そうとしたのだが。
――紙が一枚入っていた。
(……何だこれ?)
見ると、差出人は皇だった。
ミツキ先輩
ヤッホー! 先輩! 私の弁当美味しかったですか?
弁当箱は明日返してくれたらいいですよ! 場所は今日と同じところで!
その時に明日の弁当も渡します! 楽しみにしてください!
あ、それと!
下に私の連絡先書いときますね!
↓↓↓
手紙でやり取りするのも、レトロな感じがしていいなぁ~って思ったんですけどね~。
ま、先輩とならどっちでもいいですよ(笑)
それじゃ、また明日ちゃんと来てくださいね!
珊瑚より
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