第12話PlanCはないのか!?
「隠し事?」
俺がそう返すと、西条は人差し指で軽く小刻みに机を叩いて、ふぅーと息を大きく吐いて、
「昨日、紅葉ちゃんと喧嘩したでしょ? 怒ってたわよ、ミツキの様子が何か変だって」
「あー……それかぁ……」
紅葉の奴ぅ……関係ないって言ったのに、なんで西城に話すんだよ。面倒くさい事になってんじゃねぇか。
髪をポリポリ搔きながら、何とか西条を説得する案を考える。
正直に昨日、後輩にキスされましたって言うべきか――?
一瞬、頭によぎった考え。
だが、その考えは、瞬き一つせず、検事の取り締まり並みに、疑いの目を俺に向けてくる西条を前にしたら吹き飛んだ。
(…………………………い、言いたくねぇ! だって、あれって事故じゃん? 防ぎようがないじゃん! 不意打ちだったし、避けようがないだろ! てか、俺じゃなくて誰でもあの場に居たらキスされてるって! ……でも、もしキスしましたなんて言ったら、俺……もう二度と西条に告白できない気がする――!)
もし、もしだぞっ!
そんな事言ってみろ?
何て言われるかは自明の理だろ!
「フーン。ミツキって誰でも良かったんだぁ。じゃあその子と付き合えばいいんじゃない? お幸せに! あ、でも私にはもう二度と話しかけてこないで」
って養豚場の豚を見るような目つきで言われるに決まっているんだぁ……。
そんなの嫌だ!
こうなってくると、昨日自分がのこのこと皇の呼び出しに応じたことが悔やまれるが……。
あークソッ。
これ、無理ゲーだろ!
PlanA:素直にキスされたことを言う→豚に成り下がる
PlanB:黙って黙秘権を行使する→イメージダウン
PlanCはないのか!?
誰かご教授ください(汗)
俺の少ない脳細胞を必死にフル活用しても、何も出ねぇよ……。
「――正直に話す気はないのね。分かった」
「ま、待ってくれ。ちゃんと今考えてるから……」
「何を? そんな耳まで真っ赤にして」
「――ッ!」
指摘されて、慌てて耳たぶを触ると、明らかに熱を帯びていた。
「ち、違うんだ。コレは……その、訳があってだな……どこから説明したらいいのか分んなくて……。うん、でも、もう大丈夫っていうか、ちゃんと向こうにも言ったから、問題ないっていうか……だから、その、西条とか紅葉には関係ないから……」
ヤベェ……何言ってるか自分でも分かんねぇよ……ハハッ。
というか、周りでヒューヒューって野次馬で口笛吹くのマジでやめろ。
見せもんじゃねぇぞ!
「そうやって言い訳並べてたら良いわ。私、売店で買ってくるから。サヨナラ」
「じゃ、じゃあ俺も」
「付いてこないで。ミツキは弁当があるでしょ」
「いや、それがさ……、今朝紅葉が怒って作ってくれなくてさ……俺も売店で買わねぇと……」
ヘヘッと作り笑いを浮かべると、西条は俺から距離をとるように、早歩きで教室を出て、俺もその後を付いて売店に向かった。
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