第8話 草食系男子の、砂鉄採集。
アタシが砂鉄採集に夢中になっていると、ようやく回復した
アタシは貴重品ストレージから砂鉄採取に必要な道具を取り出し
「アタシがやることを真似てやんな。習うより慣れろだ」
そう言ってまたアタシは砂鉄採集に戻る。
しばらくアタシの砂鉄採集を見ていた
しばらくして
よしよし。
夢中になって砂鉄採取していると、やがてとっぷり日が暮れてきた。
アタシらドワーフは真っ暗な洞窟内でもしっかり昼間と変わらずモノが見えるんで、この程度の薄暗さは全く問題ない。
アタシ一人で砂鉄採集する時は完全に日が落ちても夜通し砂鉄採集を続ける。
この世界じゃ睡眠は必須じゃない。
睡眠は体力回復って意味合いだから、丸薬や食事でも代替できる。
それに体力減らしたって、病気にさえならなけりゃどうってことはない。
病気になると全能力が3分の1になっちまうから何かあった時に困るが、病気になるのは体力が半分以下になった時だから、体力が半分になりさえしなきゃいい。
だいたい30日間昼夜とも一心不乱に砂鉄採集して減る体力は大体半分弱だから、病気でぶっ倒れるってことはない。
でも、今日は
コイツらヒューマンは、そろそろモノが見えづらくなってきているはずだ。
「砂鉄採集」をモノにしてテンション上がってるみたいだから、多少薄暗くても集中して砂鉄採ってるみたいだが、もう少ししたら手元も全く見えなくなるだろう。
コイツの為に今日はこの辺で休んだ方がいいか。
アタシはその辺から枯れ枝を集め、火打石で火を着け、焚火を焚いた。
ゲンク爺さんから買い取った魚を「荷車」から数匹出し、余った枝に刺し塩を振り、焚火の周りの地面に刺す。
しばらくするとじんわりと魚が焼けていい香りがしてくる。
「オイ、
アタシがそう声を掛けるまで、
「お借りした砂鉄採集の道具、どうしたら……」
「
「お返ししなくてもいいんですか……」
「
そう言って焼けた魚を
「なんだよ、コッチの世界の食い物もう何度も食ってんだろ? 何
「……悪くなってたりしないのかなって……」
「あー、ニホン人はそういうの気にするんだっけな。
船酔いん時言ったと思うけど、コッチの世界じゃ病気は体力が減らねーとならねーよ。落ちてるモン食おうが腐ったモン食おうが何しよーがな。気にせず食え」
「……」
「……何だよ、気にしいだな。ゲンク爺さんから今朝買ったばかりだから腐ったりもしてねーよ。
それにストレージに入れときゃ腐ったり劣化したりもしねえから安心しろ。オエーツの交易品でイワシとか並んでるが、あれだって
「……骨とか、出した方がいいんですかね……」
「そりゃオマエの好きに食えばいいだろ! 出したきゃ出せよ。アタシャそんなもん気にしたこともなかったわ」
そう言ってアタシは焼けた魚を頭からバリバリと食った。
何だろな、ホント
言いたいこと、聞きたいことがあるなら口を開けよ全く。
「何だよ、何かあんのか? 言いたい事あるなら言えよ」
「……」
何だよ全く、煮え切らねえ奴だな!
「なあ、何か言いたい事あんなら、口に出して言わねえとコッチゃわかんねーぞ。オマエが前いたニホンって、オマエが何も口に出さなくても、オマエの気持ち察して動いてくれる奴ばっかりだったのか?
まああんなナヨった言い草で通用してたんだから、何も言わなくても周りが察してくれてたのかも知れねえな」
アタシはストレージからござを2枚出して、1枚を
「何も言う気ねえんだったら、もう寝ちまいな。アタシ一人ならいつもは寝ないで夜通し砂鉄採集してんだ。オマエのためにこうして休んでんだから、明日に備えてしっかり休んどきな」
そう言ってアタシは
何も言わねえなら、聞いてやる義理もねえ。
アタシは目を閉じてゆっくり眠りに身を委ねようとした。
「……すいません、レディアさん」
「……何だよ、人が寝ようとしてんのに」
「……色々気遣って下さって、有難うございます……」
「別に気遣ってなんかいねーよ。考えすぎだ。オマエも早く寝ちまえよ」
「……レディアさんは、何で鍛冶になったんですか」
「アタシはドワーフだからよ、大抵みんな鍛冶んなるか鉱夫んなるかなんだよ。
アタシもその例に漏れてねえってだけさ」
「……ジェイクさんに聞きましたけど、ドワーフでも生涯かけて「名工」に辿り着くのが普通らしいじゃないですか……レディアさんみたいに年若いうちに「名工」にまで上り詰めるのって、余程努力しないと辿り着かないって……レディアさんみたいに可愛らしい人が、何でそんなに必死になるのかなって……」
「おい、
「いや、違います違います! 本当に不思議だなって……」
「……オマエらって、容姿をすげー気にするよな。そういう価値観なんだろうけどよ、コッチじゃ容姿なんて屁の役にも立たねえんだよ。特に鍛冶やる上じゃあな。顔が良くて腕がナマクラな鍛冶の打物なんざ、何の役にも立ちゃしねえ。
いや、そうでなきゃいけねえ。
鍛冶が打つ打物はよ、使ってナンボのはずなんだよ」
「……レディアさん、昔何かあったんですか……」
「何もなきゃ、故郷離れてこんな
ああ、単純な話さ、アタシャ故郷でオマエみたいなナヨった野郎と無理やり結婚させられそうになったから逃げて来たんだよ!」
アタシは今まで誰にも言った事のない過去の話をつい口にしちまった。
心の中にきつく押し込めていた、思い出さないようにしていた過去だ。
やめとけ、ってもう一人のアタシが言う。
でも一度口から溢れてしまったら、止まらなかった。
「アタシの家は代々鍛冶屋だ。それなりのしっかりした打ち物作るのがアタシの一族の誇りだったのさ。
親父はもうちょいで『天下一鍛冶』に手が届くってとこまで行った人だった。
だけどよ、それが無理やり価値を歪められたせいで、自分で死を選んじまったんだよ!」
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