妹と俺

【ピピピッ! ピピピッ! ピピピッ!―――】


 頭上から聞こえる電子音に俺の意識は次第に覚醒へと至り、やがて俺、水草達也はモゾモゾと体を動かすとどうにか耳障りな音を奏でるスマホを弄ってどうにか騒音を終わらせることに成功する。


「ふぁ〜」


ゆっくりと夢からの覚醒を終えたら何とも緊張感のない欠伸をして一息つく。カーテンを開けて希望に満ちあふれる太陽らしきものに挨拶をして自室を出る。


「はぁ、今日も一日の始まりかぁ」


そんな憂鬱な気持ちを抱えて洗面所に向かいまず自分の顔を眺める。


「うむ。至って普通だ。」


そう、何を隠そう俺 水草達也は普通なのだ。

何もかも普通。勉強もせいぜい半分程度。運動もずば抜けて出来るわけでもなく、全くもってイケメンではない。(ブサイクではないはず…)

そんな俺にも妹がいる。俺に似て何もかも普通かと思いきや、神様のいたずらとしか思えないくらいの遺伝子操作が施されていた。


俺の妹------水草雅は、贔屓目無しにとにかく魅力的な女の子だと思う。学業優秀、才色兼備、オマケにスポーツ万能と例えるなら…そう完璧超人とでも言うべきか。

中でも特に、その容姿はずば抜けている。言ってしまえばテレビに出ている芸能人やグラドルと比較しても遜色ないレベル。実際に何度かスカウトと言った形で声をかけられたことがあるようだが、本人は全く興味を示さず、テレビはおろか、雑誌などにも出たことの無い綺麗な一般人のままだ。唯一妹を犯すのは太陽ぐらいのものだ。

そしてまあ、語るに足らずと言うべきか。もちろん彼女は学校生活でも、その存在感を遺憾無く発揮している。親衛隊と呼ぶのだろうか。そのような類のファンクラブなる団体も存在しているらしい。

兄としては妹に少しでもは触れようものなら一瞬にして塵にしてやりたいと思う。そのファンクラブには実に学校の三分の一以上の男子が加入しているという噂もあるため気が休まらない。

現在彼氏は居ないらしい。これは本人が言っていた事なのでまず間違いない。俺は妹のことは何よりも信じている。いや、聞いたという言い方は少し語弊があるが---ここでは割愛する。


つまり兄である俺は学校のモブキャラ的存在で、アイドル級の人気を誇る妹の兄で、現在妹が好きすぎるため特定の彼女がいない男の子、そう理解してもらえれば十分だ。まさかこんなに、妹よりも語ることが少ないとは、、

さて、どうしてこのタイミングで妹の紹介をしたのか。二年前の俺だったは今のような状況に対して理解に苦しむだろう。ここからは二年前、つまり俺が中三で、妹が中一の時に物語は遡る。



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