エピローグ


 半年後。

「細谷暁」というプレートの下がった部屋の前で、友香は足を止めた。手を繋いでここまで来た少年を促すように微笑むと、緊張した表情で、彼はおずおずとドアを開いた。

「彬!? 来てくれたんだ!」

 ドアを開けた瞬間に掛けられた声に、一瞬びくりとした少年は、しかし次の瞬間、室内に駆け込んだ。

「暁……! もう大丈夫なの?」

「まだ、外には出ちゃ駄目なんだけど、大分良いよ」

 ベッドに半身を起こした友人の言葉に、よかった、と呟いた彬の目に涙が浮かぶ。

「ゴメンね、暁。僕のせいで……」

「彬のせいじゃないよ」

「――彬」

 友人との再会に涙を流す彬に、友香はそっと声を掛けた。

「私はロビーにいるから、ゆっくりしてなさい」

 そう言って少年の手に小さなバングルを渡す。

「小さい分、あんまり強度はないから使いすぎないようにね。壊れたらそこで終わりにしてね」

「……いいの?」

「大丈夫。アレクに許可はもらってる」

 元気付けるようにそう言って、友香はそれを彬に握らせ、病室を出た。


 廊下に出て、しばし。

 程なく室内から響いてきた少年達の明るい声にくすりと微笑むと、彼女はそこから歩き出した。


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