追放された天人と魔人退治

@polipuro

滅びの世界と始まりの世界

 この世界は戦いもなく、食事にも困らない楽園だった。

 人間と亜人、動物が生活をしており、人間と亜人は交わる事がなく共存していた。


 約3万年前に4個の邪悪なる黒い塊の魔獣が空から降ってくると地上の生物を捕食し、取り込んだ。

 魔獣は取り込んだ生き物の大きさによって、身体が大きくなり、ある大きさになると半分に分裂して増えた。

 液体のような体で火以外の攻撃は利かなく、人類は抵抗をしたが数を減らす事は出来なかった。

 分裂を繰り返した魔獣は身体の構造が突然変わり始め、動物や人型に近い身体に変形すると火以外の攻撃も効くようになるが高い身体能力と強固な皮膚の為に勝利する事は難しかった。

 20年も経たずに狩猟経験が乏しかった人間は世界の半数以上が滅ぼされ、狩猟経験を生業としている亜人も魔獣から隠れる様に森や山の奥へ住処を移動した。


 人間と亜人が滅びに向かっている事を悲しんだ神の使いの『天人』は魔獣に抵抗できる力として、人間に魔術と亜人に武器や道具に力を宿す祝福の刻印を与えた。

 魔術を授かった人間は身体能力の上昇する魔法で亜人以上の力を出せ、武器に魔術を施す事で魔力が武器に宿り、硬い皮膚の魔獣を切り裂く事が可能になった。

 亜人の祝福の刻印は魔力を流す事で武器に火や風を具現化させて、どんな魔獣でも倒すようになった。


 神の奇跡と言われる人間と亜人の1,000人に1人が癒しの力を持って産まれた。

 癒しの力を持つ者はその手に金色の髪の毛を持って産まれてきて、天人に与えられた魔力が使えない変わりに癒しの力を使った。

 癒しの力を持つ者は神が使わせた者として“奉仕者”と言われる様になり、聖天教の使者として各地に派遣された。


 人間と亜人が魔獣と互角に戦える様になると楽園を取り戻す為に魔獣狩りが始まった。

 最初の頃は人間と亜人が優勢に戦いを進めていたが、仲間が倒されていく光景を見た魔獣は自衛本能に目覚めた。

 個々で活動していた魔獣が集まって生活をする事で人間と亜人と互角に戦う様になり、力が均衡した。

 そして、集団で生活する魔獣は個々で能力の違いがある事に気付いてしまった。

 狼型魔獣に色々な生物の捕食させた結果は人間や亜人を多く捕食させた狼型魔獣から4本足の人型魔獣や人型の顔を持つ魔獣が生まれた。

 捕食した生き物で変化が現れる事を学習した魔獣は人間や亜人を捕まえる為に小さな集落を襲う様になり、死体を仲間の中で強い魔獣に取り込ませる事でより強い魔獣を産み出す事を考えた。

 強い魔獣の分裂が進んでいくと身体に魔力を宿した魔獣が生まれ、人間や亜人と同じ言語を使用し始めた。

 人間や亜人が天人に授かった力は使えなかったが亜人の作った刻印が刻まれた武器に使える様になり、人間や亜人と同格の存在として、『魔人』と呼ばれた。


 魔人が産まれるまで優位に立っていた人間と亜人は魔獣よりも優れた力に敗北をし、人間と亜人の共同国家ウェルシアを作った。

 人間や亜人を捕食する事で新しい魔人を産み出さない様に高い塀を持つ要塞都市の建設を行い、国の防衛を強化する事で人間と亜人が捕食される事を激減させた。

 人間と亜人は魔人に戦いを挑む事はなくなり、残された楽園を守り抜いた。


 それから、共同国家ウェルシアは繁栄も衰退もなく続いている。

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