第12話【イケメン達、私立小学校の中へ踏み込んでしまう】
「
「関係者だし、入っちゃって」そう言っといた。
「俺が慶墺の中に入っていいのか?」と僧兵。
「幼稚舎だけどね。でも興味あるならぜひ来てよ。大学入るのけっこうメンドウみたいだけど愛校精神持ってくれそうな人は大歓迎だから、
「ちょっといいか?」候補に話しの腰を折られた。
〝東大落ちちゃった人がいかにも嫌そうに通ってくるのはちょっとね——〟的な話しをしようとした矢先のこと。
「あそこにいる守衛がさっきからこちらを睨んでいるぞ」
そりゃ妙なカッコをした男どもが小学校の校門前でたむろってたらね。
「ちょっと来い、確認する」との声とともに候補に腕を引っ張られ足がたたらを踏んでしまう。
「警戒監視の任務ご苦労さまです!」
候補が敬礼をしながら守衛さんに話しかけていた。警戒対象に苦労をねぎらわれる守衛の人の内心やいかに?
守衛さんは良い機会と考えたか何かを話そうとし始めた。その僅か一歩先んじ候補がもう口を開いていた。
「
「ああっ」守衛の人から声が漏れた。なんだかよく分からない声が。
俺は高校の生徒手帳、即ち身分証を提示している。守衛の人はそれを穴が開くほどに確認している。そしてスマホを取り出しなにやら連絡を入れ始めた。そしてそれが今終わった。
「話しは聞きました。では画面の中央になるよう認証カメラの前に立って下さい」
他五名はもちろん俺まで認証カメラの前に立たされるとは。俺が出たトコだけど私立小学校ってイヤな感じだよね。当然雨穂ちゃんはそんなカメラの前に立つ必要は無い——
その上持ち物検査までされて気分はテロリスト。これでようやく学校敷地内への立ち入り許可が出た。
——俺は庭園家が住んでるタワマンから幼稚舎前まで雨穂ちゃんが誰に近づき誰に近づかないかをさりげなく観察していた。イジメに遭っているんだからそりゃ口数は少ない。
強引に近づいて引かれていた候補は候補としか言いようが無いが、雨穂ちゃんは僧兵にも美少女ちゃんにも近づいていない。やっぱ銀髪クンとライフルちゃんの傍か。
そんな事を考えながら廊下を歩いていると取り敢えずの目的地が視界に入ってきた。
「ちょっと職員室に寄ってからね」俺はそう皆に声を掛けた。
職員室に入るなり見知った顔を探し出し「センセーっ、お久しぶりでーす!」と言ったら「鳳生か⁉」と言われ固まられた。いい歳した見知らぬ男達が六人も児童生徒の集う教室へ突然踏み込んだら当然通報案件になるから先生を同伴した方がいいのは間違いない。この職員室訪問にはそうした意味がある。
「授業の邪魔にならないよう後ろの方で温和しーくしてますから」と〝朗らか〟を心がけ言ってみたが俺の元の先生は朗らかになどなってはくれない。
「どうなっても知らないからな」と脅しともとれる釘を刺された。
そっちはそっち、こっちはこっちだ。
元の先生は雨穂ちゃんのクラス担任に俺達を引き合わせた後、「教室へ同道するように」と注文事項を伝達した。当然の如くクラス担任の顔は引きつっていた。鳳生の家とこの学校との関係あればこそできる離れ業だ。ホームルーム開始時間に合わせクラス担任といっしょに行動を開始する。
俺は俺で皆に伝えておくことがある。歩きながら言った。
「教室では黙ってて。全部僕が喋るから」と。さすがの候補も出しゃばらない。それともう一つ。
「教室に入ったら隣は
「ハ? なぜだ?」と候補に、同じような事を僧兵にも訊かれた。
「強面だから」と返答した。僧兵は実に苦い顔をしていたが君の場合は髪型だからね。そのガタイといい欧州じゃあスキンヘッドは極右だから。
逆に候補からは「多少は見る目がある」などと言われてしまった。
顔について〝イケメン〟よりも〝強面〟と言われた方が嬉しいとは変わった奴だよな。
廊下を一歩一歩歩いていると雨穂ちゃんの緊張は横にいてビンビン感じる。伝わってくる。こんな調子じゃあ『懐かしいな』という感慨を抱けるでもなく、かつて過ごしたのと同様の教室へ踏み込めば案の定クラス中は大騒ぎとなった。クラス担任がこれを鎮めるため苦渋の(?)説明をするとやはり逆効果。そしてほぼ一斉行動。この場は雨穂ちゃんへの罵倒会場へと化してしまった。
そりゃ六人ものイケメンを引き連れて特別待遇じゃあ怒りも湧くだろうなぁ、と児童生徒の悪態相手に考えられてしまうこの俺も大概だ。
ここで召還した五人のイケメン達の顔を一人ずつ観察すれば、たった一人を除き誰もが困惑したような顔をしている。『これは正しい行為だったのか?』とあたかも顔に書いてあるように。
俺はそれに心の中で返答する。
『ウン、常識的にはその感覚、正しいよ』と。
でも俺は既に雨穂ちゃんからいろいろ話しを聞いている。俺達がいない時でも同じなのはもう分かってるんだ。そう、だからこうして決断できた。
しかしたった一人の例外は何を考えているのやら。もちろんと言うべきかそれは美少女ちゃん。静かな微笑みを浮かべただ黙っている。正直その顔怖いからね。或る意味事件を起こしそうな雰囲気があるが『神酒三郎様』なんだからそこは俺のために自制はしてくれると信じている。
「では君たちの先輩から挨拶があるそうだ」クラス担任の強ばった声が教室中に響いた。
俺が教卓の所へと進み出るとすっと候補と僧兵が脇についた。
「なんにもしないのでみんな安心してね」言ったのはこれだけ。
教室中はたちまちのうちにシンと鎮まり返った。
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