第8話【衣食住な話し】

「それはそれとして今はちょっと俗な話しが必要ではないですか?」

 俺が何かを考え喋りだす前に美少女ちゃんが喋りだし始めた。

神酒三郎みきさぶろう様に呼び出された我ら五人、今ここにこうして縁もゆかりもない所にいる」

「うん」

「率直なところ今後の我らの衣食住は?」

 ウン、実に率直だ。

「当然こっちで持つよ」召還者として当然の返事をした。

「うわぁ♡」「助かります」銀髪クン、ライフルちゃんの順で賛意を示してくれた。

「でもどこに住むのです?」美少女ちゃんが三つの中では最大の問題、〝住〟について訊いてきた。僧兵もこれに続いた。

「その通りだ。〝五人〟が暮らせる部屋ともなるとかなり家賃が大変だろう」

 ナリに似合わず極めて常識的な事を言うよな。

「いや、家賃かからないから。ウチに住んでもらうつもりだし」そう返事した。間髪入れず、

「つまり当面の住処はここというわけだな?」と候補が床を指さし超率直に訊いてきた。

 途端に「えーっ!!!!!!!!!!」という感嘆符がいくつつくか解らないくらいの声が発せられた。

「あれ? どしたの?」

 あっ、そうか。ココが俺の家だって候補以外に言ってなかったっけ。

「こんな無駄な部屋をここまで広くとるとは! どんな豪邸だ⁉」僧兵の叫び出すような声。

「神酒三郎様の家は相当なお金持ちですね」と美少女ちゃんも。

「敷島ちゃんの場合なんとなく見当はついてたんじゃないの?」

 正直おカネの話しをされるのは微妙な感じはする。その時だ、

「貴様らなに金の話しなどしている⁉ 鳳生の家の懐具合よりは今後の己の身の振り方だろうが!」

 さっすが候補、いや、方眼ちゃん! しかし鋭い目つきで見られてしまった。

「この部屋で五人雑魚寝だな?」と、これまたまた超率直に訊いてきた。

「そこ六人にしといてよ。僕も起居をともにするつもりだし」

「だがこういう暮らしがだ——」

「どうもこうも、一緒に過ごす時間が長ければそれだけ互いに打ち解けられるってもんでしょ?」

「うわぁ♡」「素晴らしいです」またも銀髪クン、ライフルちゃんの順で賞賛の意を示してくれた。崇拝されるって気持ちイイ。

「黙れ貴様らそうではないっ!」

「その辺りは解るよ。でもちょっと個室は無理って事でそこは我慢してよ」

「どこででも寝られて初めて軍人たり得るっ! そうではなくこの暮らしはそう長いことは続けられんっ! そう言ってるんだ!」

「もしかしてイヤだった?」

 だが候補はこちらの問いには答えず美少女ちゃんに向き直った。

「どういう意味で『衣食住』と口にした?」

「文字通りですが」

「何を考えているのか解らん奴だ」そう言った候補がまたも俺の顔を見る。

「貴様に問いたいのはこの先何十年も五人もの居候を養うつもりかと訊いているんだ!」


 そこまで行くとイケメンもイケオジになっちゃうなあ。実は候補の方が俺の身を案じていてくれたりするのか? だけど——


「今それ、答えにくい質問だよ」そう返事した。


 候補はにこりともせず口に出した。

「正直な男だ」

「なんか知らないケドありがと」本当はなんとなく解るけどそう言った。

 相変わらずにこりともせず候補は再び口を開いた。

「話しはここでは終わっておらん。すべき事を即刻始めるべきと言っている。長いこと続けられないのだから直ちに取りかかるべきだろう」


 こいつはヤバい。

 候補の奴言ってることが超イケメンだよ。俺、このままだと地位を奪われちまうよ。

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