第2話 師匠降臨!!
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「『これ以上は知らない』、か‥‥‥。」
神父様に首を横に振ってそう言われてしまった。
「情報規制っていうことは巫子の詳しい情報は教会でのトップシークレットってこと? 」
そこで私は神父様にお礼を言ってから自宅に帰ってきてお母さんに結果を報告した。そして両親二人が仕事で誰もいなくなったであろう家に帰って自分の部屋に戻り、勇者と巫子について考えていた。
「でも、『最近いらっしゃっていた巫子様は能力を表さずに元の世界にお帰りになった』って神父様が言ってたってことは能力を表せない巫子もいるっていうことかな? でも勇者は『勇者』になったから能力は表しているよね?今思えばあの圧倒的な力を持っていたのは『巫子』とやらだったってことか‥‥‥。」
勇者というのはちょうど私が生まれたときに発表されたものだった。教会が「今年生まれる子の中にデモンを根絶し我らの敵である『魔の皇帝』を倒す者が現れる」と発表した。
そしてその10年後に同い年でサクラという少女が『勇者』として教会に保護される。そのサクラこそ私の憎き敵、後の勇者だ。
それを聞いた当時勇者へ憧れていた10歳の私は魔術の才能を持つことを知っていたため、たまたま村に来ていたある魔術師に少しの間だけ弟子入りした。勇者の旅の同行者に立候補するためだ。
‥‥‥え?今、10年後って言った?私が生まれてから10年後って‥‥‥。っていうことは、10歳のときに弟子入り?そして只今の私も10歳‥‥‥。えっ!?ということはし、師匠がく〜〜る〜〜〜!?!?
え、マジで!? あの傍若無人な師匠がぁ!? 私が教えを請いたら鼻で笑って一週間土下座してやっと弟子入りできたと思ったら何も教えず、教えてほしいと頼んだら一週間嫌味を言った後、超上級者向けな魔術指南書(後に判明)をポンッと渡して終わったんだよね!? しかもなんとかできるようになってきた瞬間にいなくなったし!!
いや、待って。来ない可能性が高いよ、ね‥‥‥? え、師匠来たら終わりじゃない!? この村、滅茶苦茶師匠にぼったくられていて、そのせいでしばらく贅沢品が買えなくなったんだよね!?あわわ‥‥‥。
いや、待てよ‥‥‥。私には師匠に弟子入りしてから死ぬまでの7年間の知識や経験がある‥‥‥! ワンチャンいける‥‥‥!? 師匠倒しちゃう‥‥‥!? あの滅茶苦茶腹たたしい師匠を‥‥‥!? そしてそうすれば村の人にも『買うな』って言って信じてもらえるかな‥‥‥!? ばったくりを回避できる‥‥‥!?
よし! いつ師匠がくるかわからないし、魔術どんだけできるか試しておこう!!
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というわけで、打倒師匠!! を目指して魔術がどれだけ使えるか試しておくこう! で、誰かに見られて『なにしてんだコイツ』とならないために村外れの森にいた。私以外村の中で魔術を使える人はいなかったし、変人に見られるかもしれない。行商人の人とかがよくこの辺を通るため、よくデモンが退治されていてデモンが出てきにくい場所なのだ。結構穴場。
勇者を殺すためには魔術の腕も磨かないといけないし魔術を鍛えるのはなかなかいいと思う。まあ、勇者のほうが魔術の才能持っていたから真正面から殺すのは無理かもしれない。かといって、魔術をあまり知らない子供のうちに殺そうとしても勇者の故郷が行くまで過酷な場所だから無理だ。どうしたら勇者、殺せるかな‥‥‥。うむむ‥‥‥。
「とりあえず、現状把握しとくかな? 」
魔術とは才能だ。才能そのもの。周りにあるマナというエネルギーを魔力として取り込んでいる量が各自で違う。魔力の大きさが違えば同じ魔術でも威力に違いが出てくる。
そしてその魔力を体内から外へ出すことを魔術というのだが、魔力を魔術として変換する能力も必要だ。どれだけマナを魔力として体内に取り込めてもそれを効率よく外へ技として出せなければ意味がない。
私はマナを魔力として取り込むキャパシティが膨大だと言われていた。魔力を魔術として変換時間が戻る前は。まあ、効率よく魔力を出すのは‥‥‥、そこそこだったけど。だから多分‥‥‥、大丈夫だと思うけど‥‥‥、でもどうだろう?
「‥‥‥。」
瞑想して現在の魔力量を確かめてみる。瞑想することで魔力を循環させて今、自身が取り込んでいる量が分かって魔力を増やせる、の、だけれども‥‥‥。
あれ? なんか、多い? 気のせいかなんだか殺されたときよりも‥‥‥。私の全盛期より多い‥‥‥?
あ、不味い。多すぎて抑えられない。やばいやばい。増えちゃう。やばい!!
「瞑想終わり! 終わり!! 」
もう私は瞑想していないし、魔力も増やしてないのだけど‥‥‥、それでも魔力が、おさえ、られな‥‥‥、い。
「うあああああああああああっっ!! 」
急な圧迫感が私を襲った。
あ、なんか、殺された、とき、みたい‥‥‥。あはは‥‥‥。
バタッと倒れつつも魔力を抑えようにも抑えられない。
「‥‥‥あ? え!ちょ‥‥‥」
「うぁ‥‥‥。」
「魔力が暴走して、る‥‥‥?返事をして‥‥‥。」
だ、だれ、か、きた‥‥‥? 師匠の声に、似てる‥‥‥。むか、つく‥‥‥。
「私、あなた‥‥‥、しら、ない。」
「そんな‥‥‥言って‥‥‥‥‥じゃ‥‥‥。死‥‥‥どう‥‥‥で‥‥‥。ああ‥‥‥魔力暴走‥‥‥しらな‥‥‥‥‥‥。」
「ほっとい、て‥‥‥! 」
師匠、に、似た人に、救ってもらう‥‥‥? やだぁーーーーー!!
「あ、あなた‥‥‥、まさか自殺‥‥‥禁呪を‥‥‥」
え、誤解‥‥‥。あ、まって‥‥‥、死ぬわ‥‥‥。
「ちょ、‥‥‥‥り‥‥‥‥‥てくだ‥‥‥‥‥。‥‥‥‥‥‥『教会』へ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥しょ」
あ、もう‥‥‥、だめ‥‥‥。
******
ん‥‥‥?
「ふああ! よく寝た!! 」
「起きた!! エリースちゃん!? 大丈夫かい? 」
「え? 」
あれ? ここ私の家じゃないや。『教会』の支部‥‥‥? そして、神父様‥‥‥? どういう状況? いや、私にとっては超絶ハッピーな状況だけど‥‥‥。
「さっき君の魔力が暴走したらしくて旅の方がここまで運んでくださったんだよ。おかげでワシがエリースちゃんの治療ができた。エリースちゃん、なんで魔力が暴走したのか分かるかね?」
「あ、はい。瞑想してどれくらい魔力があるか確かめて見たかったんです。」
「瞑想? なんでだい?」
「それは‥‥‥、あの、勇者様に会ってみたいんです。それで魔術を使いたくて‥‥‥。」
いい言い訳なんて思いつかなかった‥‥‥。まさか未来から来ました!! 自分の師匠がムカつきましたので勝ちたいからとりあえず魔術の練習をしようと思いました!! だなんて言えるはず無いし‥‥‥。
「『ユウシャ』? 誰だね? 」
「あ‥‥‥。」
しくったー!! 何故かは知らないけど『勇者』は忘れられているんだよね?神父様も例に漏れずわからなかったんだよね!
「えっと‥‥‥。」
「起きたらしいですね。どうですか調子は。」
「ぶっ!」
待って! 吹いちゃったんだけど‥‥‥。私が起きた気配に気がついて声をかけてきた人みて吹いちゃった‥‥‥。いやおかしくて‥‥、とかじゃなく、なんでこの人がいるの!? って言う意味で!! 本当になんでこの人いるの!? マジで!!
その人はかっくいーなりをして如何にも商人です(笑)といった格好だった。まあ、頭にフードを被っていることは商人っぽくないが。外見は時間を巻き戻す前と一つも変わっていなかった。
その人は、あれだ。ものすごく会いたくなかった人だった。
「師匠!?」
「師匠‥‥‥?」
あ、そういえばまだ知らないはずだったね。師匠のこと。そりゃあの師匠も不思議そうな顔をするわ。
「あ、いえその‥‥‥。ダレデスカ? コノ人‥‥‥。エリースちゃん知ナーイ!! 」
「この方は倒れていたエリースちゃんをここまで連れてきてくれたんだよ。恩人だからちゃんとお礼、言えるかね?エリースちゃん。」
「ア、ハイ‥‥‥。アリガトウゴザイマシタ‥‥‥。」
「いいよ。別に。お金をくれるなら。」
はいはいはい! そういうお方ですよね!! あなたは!! というか声は似ているなーっては思っていたけどまさか師匠ご本人だったとは‥‥‥。
「え、ええっと‥‥‥、エリースちゃん。この方がこういうことをいうのはこの方が商人だからなんだ。」
「へー。ソーナンダー。」
いや神父様知っております。師匠が非常に立派なボッタクリ商人なのは知っているけど‥‥‥、流石に商売人でも10歳に金くれとか非常識なことは言わないよね?さっきの『金くれ』って言ったのは冗談だよね?
「で? お金は? 」
「‥‥‥」
払えと?冗談じゃなく?払えと?
「もしかして払えないのか? 」
「ちなみにいくらなのですか? 」
固まってしまった私の代わりに神父様が尋ねた。う〜ん! 神父様かっこいい! 男前!! 10才児に金をせびるどっかのお師匠様と違って!
「ま、俺の時間を無駄にしたし100万ハウツってとこかな? 」
「は?」
思わず『は?』って言ったけど、100万ハウツなんていったら、小さな家一つ買えるほどのお金なんですけど!?
『教会』の支部に私を連れてきただけで100万円ハウツ!? ‥‥‥やっぱり師匠はボッタクリ商人だ‥‥‥。
「払えないならしょうがない。お前。」
「私の名前でしたらエリースですけど。お前じゃありませんし。」
「なんだ、いやに攻撃的だな‥‥‥。まあいい。お前、自分を売れ。」
「は?」
いや二回目の『は?』が出てしまったけどしょうがないよね? いや、まさか初対面の10差の女の子に身売りしろとか‥‥‥、バカじゃないの!? しかもお前お前って‥‥‥。本当にバカじゃないの!? 師匠!! やばい、師匠のせいでバカしか言えなくなってきた‥‥‥。
「お引取りください。商人さん。エリースちゃんを助けていただいたのには感謝いたしますが、これはいただけないですね。エリースちゃん、いや人間をぼったくりにかけたり、身売りさせようとするなど神への冒涜。教会の本部にも伝えざるをおえません。もし教会の本部にこのことを伝えたら人間の国では商売はできないでしょう。」
「神父様ぁ‥‥‥! 」
そうです! ぼったくり商人など倒してやってください!! 神父様!!
「はぁ‥‥‥。どうやら神父様は誤解されているようですね。」
「誤解、というと?」
「俺はそこのちびっ子を養子にすることを言っているんです。そのために100万ハウツ払うと言っているのです。」
「‥‥‥養子?」
ちびっ子という単語にカチンとしたが‥‥‥、それよりも気になるのが師匠が養子をとる、ということだ。
「俺は魔術関連の商品を扱っています。そのため魔術の扱いも多少は慣れています。だからこの子の才能を引き伸ばしてあげれます。」
あ、そういえば師匠に弟子入りをしたのもだからだったよね。
自分に才能をあることを神父様の能力によって知ってはいたけど周りには魔術師なんていなかったし、こんな村にいる村人が魔術の扱いを知っているわけがない。魔術は才能なのだ。そんな貴重な才能を持った人はみな王都に行ってしまっている。
才能があるのに燻っていた(この頃は勇者を見ていなかったからそう思えていた)私は師匠が村に来て魔術の商品を売り、実演販売しているのを見て思った。そうだ!! この人に弟子入りしよう! と。
まあ、結果は断られるなど散々だったんだけどね。
でもそんな師匠が私を養子に? それって実質『弟子にする』ってことだよ、ね‥‥‥‥。
え? 弟子はとらない主義じゃなかったの? 師匠。そうやって言ってたじゃん! 嘘つき!!
「100万ハウツ私が払うのは? 」
「冗談だよ。ちびっ子。本気でいうわけないだろ? 養子に来ればこっちが払う側だ。」
待って師匠。それ私が養子に入らなかったらどうなるの!?
「まあ、そういうことなら‥‥‥。」
しかも神父様が納得しているし! 神父様の裏切り者ぉー!!
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