遠い想い出
勝利だギューちゃん
第1話
「お兄ちゃん、またね」
「またね」
子供の頃、近くに空き地があった。
まだ、ゲームなど普及していない時代。
子供にとっては。恰好の遊び場だった。
かくれんぼと高鬼以外は、何でもできた。
ただ、ポツンとお地蔵さんが建っていた。
その空き地に、度々現れるお兄さんがいた。
まだ、子供だった僕たちにとっては、格好の遊び相手だった。
そのお兄さんが、どこの誰だかは知らない。
名前すら教えてくれなかった。
「いずれ、わかるよ」
そう、笑って答えるだけだった。
しかし、中学ともなると、勉強や部活で忙しくなり、その空き地で遊ぶこともなくなった。
その空き地には、ショッピングモールが建った。
便利にはなったが、寂しさも残る。
でも、今の子供たちには空き地は必要ないのだろう。
僕も、大学生になり、あのお兄さんの事は忘れかけていた。
ある日、ショッピングモールの近くにあのお地蔵さんがあった。
空き地のなごりが、ここにあった。
そのお地蔵さんに触れると、僕の意識が遠のいた。
そして、気が付くと、子供の頃に見たあの空き地があった。
タイムスリップをしたのか?
向こうには、子供の頃の僕を見つける。
その子供の僕は、今の僕に駆け寄ってきた。
そして、こう尋ねる。
「お兄さんは、だれ?」
僕は答えた。
「いずれわかるよ」
遠い想い出 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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