n=32 事故物件
`さんがマンションの一室を借りて、一人暮らしを始めた頃の話。
備え付けクローゼットの裏側に、ガムテープで茶色い封筒が貼り付けられていた。
そして、その中には薄汚れた手紙が入っていた。
『この部屋は事故物件です。幽霊が出ます。不動産屋に騙されないでください。彼らは嘘つきです。今まで何人もの人がこの部屋で死んでいます。気を付けて。騙されないで。この部屋には幽霊が出ます。この部屋は事故物件です。』
そんなことが綺麗に整った小さな字で書かれていた。
`さんは、さすがに嘘だろうと思いながらも機を伺い、不動産屋にそれとなく尋ねてみることにした。
帰ってきた返事は、ノーだった。
『今日まであの部屋で自殺、他殺、その他不審死が起こった事実は一切ございません。と言いますか、お住まいのマンション全体でも、そのようなことは未だ起きておりません。』
前の住人のイタズラか嫌がらせ?それとも不動産屋に騙されてる?
釈然としない思いを胸に、`さんは不動産事務所を出た。
その数カ月後、部屋を掃除しているとクローゼットの裏から封筒に入った手紙が出てきた。
『この部屋は事故物件です。幽霊が出ます。不動産屋に騙されないでください。彼らは嘘つきです。今まで何人もの人がこの部屋で死んでいます。気を付けて。騙されないで。この部屋には幽霊が出ます。この部屋は事故物件です。』
おんなじ手紙が、毎月クローゼットの裏に湧いてくるんです。
`さんはそう語った。
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