エアープランツ
星野草太
カモミール(前編)
プロローグ
毎週水曜日、僕は寄り道をする。
ドッグラン、サッカーコート、時計盤を模したマリーゴールドの大きな花壇が過ぎていった。
休日なら家族連れで溢れる河川敷だが、今は散歩のご老人がポツリポツリ。土手の上を行くサイクリングロードに対向車はなく、ペダルを踏みしめた分だけ勢いよく進める。たまに出てくる極太の車止めだけがとても怖い。
目的地までは二十分程かかる。このままママチャリで突き進み、真っ赤な水道橋の脇で降りてしばらく進めば、田んぼの中心にドンと現れる。
本当は駅前まで続く県道の方が近いのだが、後ろから迫る車も嫌だし、道中で同じクラスの連中と鉢合わせなんてもっと嫌だ。
遅刻の心配がないこの時間くらい、土手の上から水面を見下ろし、吹き抜ける風を割いて進む高揚感に浸りたい。
ただ、どんなに気分をごまかしたところで、ペダルは重い。それはひとえにゴールで待ち受ける人物のせいである。
「茅野はセンスないねぇ」
そう言って、彼女はまた笑うのだろうか。
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