第33話 生存

『世界の意志』と話したときとは違い、意識が浮上していく。寝起きでボヤけた目を擦り、自分が何処にいるのかを確認する。


「知らない天井——でもないな。保健室か....」


寝転がったまま首を捻って周囲を見渡すと、消毒液や救急箱が目に入る。やはり保健室で間違い無いようだ。一応ここには知り合いがいたのだが、中々保健室なんて場所は健康な生徒が来る場所ではない。俺は陰キャ勢だったので尚更だ。具合が悪くて気持ち悪いのより保健室に行って目立つ方が嫌だ。


「先輩!目が覚めたんですね!」


ガラリとドアが開き、探していた人物が顔を出す。その人物とは勿論凍堂のことだ。


「ああ、おはようっ.....!」


起き上がろうとするも、身体の痛みに苦痛の声を漏らす。まだ傷は治っていないのか.....!

自然治癒能力はかなり上がったと思っていたんだが、思っていたよりも重傷なのかもしれない。


「ま、まだ怪我が治ってないんですから!落ち着いてください!」


「そうさせて貰う。.......俺はどれくらい気を失ってた?」


「丸二日間です。一応回復魔法をかけてはみたんですけど......私の初級魔法じゃ完治とまではいかないみたいで....」


「そうか、まあそんなもんだろ。てことは当分俺は動けないか.....その間モンスターは?」


「はい、エリアモンスターを倒してからパタリと居なくなりました。さっきも校内を見てきたんですけど一体も居ません」


ふむ...エリアモンスターを倒すとその地域のモンスターは居なくなるのか?いやそんなはずが無い。奴らも生きている生物だと分かったんだ、突然消えるなんてことがあるわけ無い。何処かに移住した、もしくは統率者を失って散らばったと考えるのが正解かな....。


「引き続き警戒は必要だな....動けない俺が言っても説得力無いけど。ところで、避難は無事に終わったのか?」


凍堂が俺の方に来たということは避難が終わったということだと思うが、これを聞かずにはいられない。


「あ、え、えーと.....一応無事には終わったみたいですよ」


「そうか.....なんで伝聞系?」


まごついている凍堂を問い詰めると、思いも寄らない答えが返って来た。


「途中で生徒の警護を抜け出して来たぁ?」


「す、すいません!どうしても先輩が心配で....」


それを言われると俺も凍堂の事を責められない。事実、あの時の援助が無ければ俺は死んでいたのだから。


「はぁ....その事はもういいよ。俺も悪かったからな。で、避難が無事に終わったっていう根拠は?」


「えっと、避難経路に使った廊下を見に行ったんですけど生徒の姿はありませんでした。私が抜けた頃には、もう校門の近くにたどり着いていたのも理由の一つです」


うん、きちんと確認して来たのなら文句はない。どうせ今の俺達には伊織達の行方を探る術はないのだ。気にしても仕方がない。伊織がどうなったのかは心配だが、アイツは俺に心配される程弱くはないだろう。


「ちゃんとした根拠があるなら大丈夫だろ。それより.......腹が減ったな」


聞きたい事を大体聞き終わり、気が抜けたのか腹が大きな音を立てる。実質二日間ご飯を食べていないのだからしょうがない。


「あっ!体育館に汚れていない食材があったので持って来ますね!」


凍堂が慌ただしく部屋を出ていく。体育館ってことは生徒達のやつか。残るほど余裕があったのか?ああいや、切り詰めていたのか。


俺達が居た備品倉庫の食料も体育館に持っていったからそこにあるはず。ゴブリンに蹂躙されてなかったらだけど。


「一人だと暇だな.....あ、そうだ『ステータス』」


やることも無いので、改めて自分のステータスを確認することに。戦闘中は気にして無かったけどレベルはいくつ上がったかな。


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名前 戦場 蓮


性別 男


レベル:32


職業 暗殺者アサシン lv.9


体力:3280 筋力:452 速度:522

防御:432 知能:418 器用:426


スキル

【無限魔力】【魂操】【双剣術 lv.4】

【察知 lv.9】【神童】【疾走 lv.3】

【成長促進】【隠密 lv.3】【弱点看破 lv.7】

【体術 lv.6】【火種】

空間収納ストレージ lv.3】

【影操 lv.3】【初級回復魔法 lv.6】


称号

【先立つ者】【小鬼殺し】【狼殺し】

人殺マーダー】【格上殺術ジャイアントキリング


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「ウッソだろ!?」


ゴブリンキングと戦う前は20にも達していなかったレベルが30を超えている。驚きのあまり二度見してしまった。冷静になって考えてみると、キングの経験値量が多かったのは当然のこと、その前にゴブリンやホブゴブリンを山ほど殺した記憶がある。そのお陰か、驚くべき成長を遂げることが出来た。


【疾駆】も進化したし良い結果が得られたのではなかろうか。【影操】も使えれば戦うのも楽だったんだがいかんせんスキルレベルが低過ぎて、あの戦いでは役に立たなかった。これのレベルも上げていかなきゃな。


【短剣術】も【双剣術】になっている。これは剣を二本手に入れたからか?双剣の場合はまた使い方が変わるからな、スキルもそれに合わせて変化してくれて助かった。


だが一番気になるのは【火種】だな。戦闘の途中で、何故か動けるようになった時.....俺はキングに勝つ事ではなくキングをことしか頭に無かった。何がなんでもキングの生物としての尊厳を奪ってやりたいという思いに駆られていた。


『世界の意志』の奴も詳しく教えてはくれないし.....本当になんなんだ?これ。


思考を巡らせていると、ガラリとドアが開き凍堂が入って来た。


「ありましたよ!食料!」


満面の笑みを浮かべて手に【空間収納ストレージ】から食料を出していく。


........まあ今はお互い生き残れたことを喜ぶとするか。









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これで区切り的には第一章完結です!次章からは遂に学校外に出ますので、これからもよろしくお願いします!


とは言いつつも、諸事情により今月いっぱいは更新がお休みになります!すいません!

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