猿蟹合戦 裏
ム月 北斗
赤い柿
カニの親子が死んじゃった
欲張りな猿に騙されて死んじゃった
「こちらにあるは柿の種。育てばずっと食べられる。そちらがお持ちのおむすびと。取り換えっこしないかい?」
家計が浮くならと母ガニは
種一粒とおむすびを取り換えて
家の庭に植え時を待つ
やがて時は経ち柿の種
見事な赤々とした実を実らせる
それ取らんと母ガニは
柿の木に登ろうにもこれ叶わず
そこへ再び現れました猿が一声
「どれ、わしが登って取ってやろう。」
ひらり器用に上って見せ柿の実に手を伸ばし
むしゃりと一口齧ります
「これや見事な柿の実じゃ。甘々と瑞々しいかな。」
柿を頬張る猿を見て
下にて待つ蟹たちは声を掛ける
「猿さん猿さん、こちらにも柿の実を、取ってくださりませんか?」
これを聞いたずるい猿は逆上し
「この柿の木の種を与えたのはわしじゃ。悔しければ自分で登って取ればいい。」
登れぬ故にお頼み申す、母ガニが述べると猿は返す。
「それならばこれをくれてやる。青々とした硬い硬い渋柿じゃ。」
木の上からえいっと勢い良く投げられた渋柿は
母ガニと子ガニに激しくぶつけられました
何度も何度も
白目向こうと
死んだことなどお構いなしに
柿をたらふく食った猿はどこかへと
不運偶然、出かけて不在だった子ガニが帰ってきて
死んだ母と弟たちを見つけます
まだ息の根のあった弟がおりました
何があったと聞きますと
か細い声で囁くように
「猿・・・猿・・・」
そう告げて息を引き取りました
怒った子ガニは敵討ち
同じく猿に困り果てていた者探し
栗、臼、蜂、牛糞呼んで
みんな隠れて敵討ち
戻った猿に敵討ち
囲炉裏で焼けた栗で火傷をし
水桶の蜂に毒をもらい
土間の牛糞踏んづけ転び
最期に見たのは大きな臼
大きな臼の暗い底
ぐしゃっと柿が潰れるように
赤い赤い汁が飛び散って
ずるい猿が死んじゃった
猿蟹合戦 裏 ム月 北斗 @mutsuki_hokuto
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