そこの角のポスト

音崎 琳

そこの角のポスト

切り分けたパイの中から見えている


12時にひっくりかえすおもちゃ箱


暗号をページの隙間に隠した


青色のラベルを貼ったお墨付き


まどろみを覗きこんだらマグカップ


ケーキのおもてをぱきりと割って黒


陰惨な九九の答えを書きつける


ぼくの手を取って踊ってマドモワゼル


二月には二月の顔をするように


シャッターに風のにおいをまきこんで


砂時計の砂粒を測る手つき


すり潰す胡桃の殻とアスピリン


引き潮にさらわれてゆく三日月が


紅茶ひとしずくを冷めるまま残す


紫の歯車のうえ手を引いて


愛情を区切って区切って区切って


銀色のりぼんを掛けたプレゼント


早咲きの桜で染めた絹糸が


まんなかにフォークを刺して溢れ出す


円い城壁を満たせば我が城の


一輪ずつ砕いた心をまぶした


左胸のぼくの赤いポストから

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