お礼のつもりだったんですが・・・
午後の仕事がますます憂鬱になった。
残業がほぼ確定しているし、明日からお昼は・・・
その事は考えたく無かった。
俺は何か悪い事をしたのか?
俺は人助けしたのではないのか?
午後の仕事中、自問自答が繰り返される。
午後の仕事中もモヤモヤした想いが続いたがなんとか今日の仕事を終えて自宅に向かった。
疲れてトボトボ歩き、自宅玄関先まで来たら横田百合がそこに立っていた。
「お帰りなさい。お礼を言おうと思って待っていました。」
彼女が笑顔で俺を迎えてくれる。
その手には何か袋を持っていた。
「夕飯食べちゃいました? 直ぐに何か夕飯つくりますから一緒に食べましょうよ!」
玄関のカギを開けると彼女は俺の手を引っ張って家に入っていく。
「俺のことずっと待ってくれてたの?」
「私も今、仕事終わったトコですよ。お礼するって約束したじゃないですか? カレーつくりますけどいいですよね?」
彼女はキッチンに入り、袋に入っていた食材を取り出すと手際よく切りだした。
「あっ、忘れるところでした。お米とかは有りますよね?」
「えぇ、その台の下に有ります。」
百合はリズミカルにお米を洗って炊飯器のスイッチを入れた。
我が家の炊飯器の変なスタート音が鳴り響き彼女はフフフって笑う。
俺は思わず見惚れてしまった。
そしてさっき切った野菜や肉を鍋に入れて少しだけ炒めて水を加える。
俺は皿やカップを用意して、ちょとだけ鍋の蓋を開けて中を覗き込む。
玉ねぎや人参が煮えるニオイがしてきた。
女の人とキッチンに入って何かを作るなんて俺は初めてかもしれない。
少しだけドキドキした。
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