第31話
しばらくしてロイクは突然私の元に転移してきた。
「アレット、お久しぶりです」
「ロイク!びっくりするじゃない。危なく殺しかけたわ。どうしたの?」
私は魔物を狩り終え、浄化魔法を使いながら聞く。
「今、私がしている研究にアレットの協力が必要なのですよ。その魔物の魔石を貰っても?」
身の丈3メートルはゆうに超える魔物の魔石を取り出し、ロイクに渡す。
「この実験はちょっと危険が伴うので家に帰った方が良いですね」
「分かったわ」
私はクロムとロイクを連れて家に転移する。
「これが我が家よ?ロイクは初めて見たでしょう?」
一人暮らしには充分な広さの家。私のベッドの横にはクロムのベッドもある。
「合理的な部屋ですね。さぁ、実験の話をしましょう。これは私やアレット、次代の勇者達に影響する話です」
ロイクはソファに腰掛けて話を始める。
「簡単に説明すると、今現在人間の魔力を増やそうとする方法は魔力が高い者が子を作る事しか出来ません。しかし、魔石に私達の最大限まで魔力を詰めて妊婦に持たせると漏れ出す魔力の影響で子どもが高魔力を保持して産まれてくる事が分かったのです。そうなれば私達は無理に子を成す事をしなくていい」
「!!ロイク、それは素晴らしいわ」
「ただ、1つだけ問題があるのです。通常の魔石では少量の魔力を貯める事しか出来ない事と、常に魔石からも魔力を生産し、魔力が漏れ出すようにするために人体の一部と血液が必要になるのです」
身体の一部を削る。指を落としてしまえば欠損判定できっと私では治せない。紋章の無いヒカリ様もきっと無理だろう。けれど、皮膚を削ぎ取れば回復魔法は使えるはず。
これが本当に成功したのなら私は喜んでその贄になろう。魔法使い棟に残ったロイクは私と違い辛酸を舐めてきたに違いない。
ロイクと私の力でこれからの不幸を減らせるなら絶対に完成させてみせる。
「分かったわ。やってみる」
私がそう返事をするとロイクは魔石に魔力を放出しながら魔法陣を刻んでいく。普通の魔石には使わない方法だ。これだけ魔力を魔石に刻みつけるのは集中力も気力も必要となる。流石だわ。
魔法陣を刻み終えた魔石を受け取ると、私はナイフを取り出し、腕の一部を削ぐ。大量の血液が魔石にかかると不思議な事にスゥッと吸い込んでいく。
削った身も魔石の上に置くと消えていった。
「痛いわ」
「痛いでしょうね。アレット、もう回復して大丈夫ですよ」
ロイクの言葉に私は魔法を唱えて傷を治した。元の魔石の色は薄いオレンジ色をしていたが今は少し赤色を帯びている。
「続けて、このまま魔力を魔石に入れて下さい」
私は言われるがままに魔力を詰めていく。
魔の森に住む強い魔物から取れる魔石はとても大きい。中々他の森では手に入らない物だろう。その分貯める事の出来る魔力も半端無い。
膨大にあると自負していた魔力も3分の2は持っていかれただろうか。
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