第28話 ヒカリ6

※不快な表現が入ります。


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 オディロンは暫くしてから扉を開けてベッドに座った私を見下げるように言う。


「お前は俺との初夜を待っていたんだったな」


オディロンは低い声で私にそう告げ、迫ってくる。


こんな風に襲われたい訳じゃないの!


違う。謝って、仲直りして、初夜の続きがいいの。


「ち、違うの。そうじゃ無い」


「今更そんな都合の良い事を言うのか?アレットはな、婚約が無くなって貴族のジジイ共の慰み者に生涯される所だったんだぞ?本人の意思に関係なくだ。分かるか?」


「… 何故ですか。慰み者って…」


私は考えていた事と違う話をオディロンはしている。震える声を絞り出すように聞く。


「魔力だ。女神に選ばれた者は魔力を大幅に増やす事が出来ると習っただろう。勇者や魔法使い、聖女は特に魔力が多くなる。それは子供にも受け継がれていく。


アレット嬢の産む子は、勇者アレットに準じて魔力の高い子が生まれる。誰もが欲する力。王子殿下との結婚が無くなったら権力のある者達の子を産むために回されていく。例え四肢を切り落としてもな!


令嬢としての尊厳などまるで無くなる。だがお前は違う!お前は怠惰で魔力が最低限しか無い。貴族から狙われる事が無いのだからな!残念ながら子を早く作るようにせっつかれている。お前は幸せだろう?」


「い、いや」


なんだか頭もボーっとなってきた。


「アレット嬢はお前よりももっと苦痛を感じている。イケメン王子と結婚してハッピーエンドなのだろう?絆を持つ者同士が閨を共にすると女神の祝福で子がよく出来るらしい。喜べ」




??


あ、れ?


私はオディロンとして、る?


そうして私はオディロンとしているという喜びと初めての痛みを耐え続けた。



どの位経ったのか気がつけば後宮の自分のベッドで寝ていた。自分に起こった事実。やっとオディロンと結ばれた。少しばかり乱暴だったけれど、込み上げるこの思いは絆と交わる事が出来た幸せに包まれているわ。


けれど、アレット様は…。


 きっと自分の未来を知り、平民になった。私がならせてしまった。後悔と恐ろしさを感じる。なんて事をしてしまったの。ただ絆を絶たれた痛みに耐えるだけだと思っていた。


 世界を救った彼女が貴族達から女の尊敬を生涯奪われるなんて。私は恨まれるとかのレベルでは無い。彼女は無事なのか。


そこから私は毎日後宮の中にある小さな女神像に縋りお祈りをする。アレット様が無事でありますように、と。


あれからオディロンとは会っていない。彼はどうしているのか。寂しい、会いたいと想いは募るばかり。






「ヒカリ様、大丈夫ですか?ここの所、体調が思わしくないようですね。医者を呼びましょう」


「この所疲れが取れなくて。先生ごめんなさい」


私は先生に謝罪してからベッドで横になった。すぐに医者の診察が始まり、身体の隅々まで調べられていく。


「ヒカリ様、この度はおめでとうございます。妊娠中です」


私は驚きを隠せないでいた。


たった1度の出来事だったのに。

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