第21話
「お父様、今、宜しいでしょうか?」
「大丈夫だ。アレットどうしたんだい?」
「私、旅立つ日を決めましたわ。半月後のオディロン殿下の結婚式のパレードの時にしますわ」
「そうか。… そうだな。アレットには苦労を掛ける。旅立つまでの間、家族で過ごそう」
「… お父様」
だめね。涙が出てしまうわ。
オディロン殿下とヒカリの結婚が発表された事によって他家からの釣書が届くようになっている。これからは私を逃すまいと貴族達も必死になるわ。だからこそ街中がお祭り騒ぎで浮かれている間にそっと旅立つ。貴族籍を抜ける手続きもそろそろ完了するわ。何か有ればロイクも影から手を貸してくれるでしょう。
私はその日からマジックバッグに必要な物を入れ始める。あとはギルドに立ち寄り、身分証を作る事にした。
私は髪の色を変えてローブを羽織り王都のギルドへとやってきた。王都のギルドは活気づいており、老若男女様々な人達が出入りしていた。フードを深く被っていたが、特に不審がられる事もなくホッとする。
私は目的の物を作るためにカウンターの受付に話しかけた。
「ギルドカードを作りたいのだが」
「ギルドカード作成ですね。このカードに名前と職業を書いて下さいね」
私は言われるままに書いていく。勅命が来ないようにもちろん偽名『エトラ』職業欄は『剣士』と書いた。
「エトラ様、このカードにそのまま魔力を流して下さい。少しで構いません」
私は手を翳し魔力を流すとカードが少し光った。
「これでギルドカードの登録は終えました。カードは身分証にもなりますので常に携帯しておいて下さい。エトラ様はFランクからの始まりです。
Eランクに上がるにはそこの依頼板にある依頼書のEランクとFランクを受ける事が可能です。Fランクの依頼書は討伐はなく、5枚全て完了するとEランクへ上がります。
Eランクの依頼書は討伐依頼を3枚完了するか採取や雑用依頼を3枚完了させるとランクアップします。分からない事はありますか?」
「いえ、無いです」
「では、これから頑張って下さいね」
私は言われるがままに依頼板を覗くとFランクは掃除やら薬草採取のようだ。Eランクはスライム5匹、ゴブリン3匹、ホーンラビット3匹が回数制限なく依頼が出されていた。
とりあえずEランクには王都にいる間に済ませてしまおうと思う。私は3枚の依頼書をカウンターに出すとギルドカードに依頼を登録したらしい。
討伐した際に自動的にカウントされると言っていた。素晴らしい機能だと思う。
そして旅の予行演習とばかりにクロムを連れて討伐に出た。クロムはゴブリンやホーンラビットには興味が無いようで見向きもせずに草を食んでいる様子。
道に出てきたスライムに至っては踏み潰して通り過ぎる始末。思ったより問題は無さそうでホッと一安心したわ。私はあっさり討伐を終えてEランクに上がった。あとは旅をしながらランク上げを行う予定だ。
私の手の甲にある勇者紋は相変わらず深い青色をしている。これからも経験値は貯まり続ける事になるのかもしれない。
…今の私には願い事等ないのだから。
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