第8話

 翌日は早朝から紋を持つ2人と顔合わせをする事になったわ。剣士紋を持つのはオノレ・アティテュード様。


「オノレだ。これから魔王討伐まで宜しく」


「私は魔法使い師団のロイクです。このパーティでは魔物の知識や王城とのやり取りを担当するでしょうから分からない事があったら聞いてください」


オノレ様は騎士団所属で伯爵家出身。無口な方らしい。そして魔法使い紋のロイク・クラレンドル子爵。何度か魔法使い棟で顔を合わせた事がある程度。


「私、勇者紋のアレットです。剣もまだ握った事は無いですが、宜しくお願いします」


「はっ、次期王妃様が勇者とはオディロン殿下も大変ですね。まぁ、なってしまったのですから足を引っ張らないようにお願いしますね」


 ロイク様に棘のある言葉を投げかけられるも気にせず、私達は訓練を始める事となった。ロイク様は言葉の端々に棘を付けないと生きていけない性分のようだ。


初対面の時は驚いたけれど、いつもこうなので誰も気にしていない。そしてオノレ様とロイク様はその道の専門家なので旅立つまでの間、お互い実戦を通して訓練を行っていくようだ。私はというと、騎士団長と魔法使い師団長から直接指導を受けている。


「アレット様、流石、次期王妃様ですね。飲み込みが早い。文句一つ付ける所がありません。後は体力ですな」


午前中は騎士団長と訓練し、午後は魔法使い師団長と訓練。そうして各々訓練が始まり、1週間が過ぎた頃に弓使いが見つかった。


「俺の名はモルガンだ。この紋章パーティーの中では俺が1番の年上だよな!ははっ!ラスムの村で猟師兼食堂のオヤジをやってる!宜しくな!」


 モルガンがパーティーに加わった事によりパーティーが明るくなった。モルガンは人当たりが良く側に居るみんなを笑顔にさせるのが得意なようだ。


私は勇者として皆の足を引っ張る訳にはいかない。早朝から深夜まで1人追い込むように鍛錬を続ける。



 この世界の魔法は特に属性が分かれているという訳ではない。攻撃や回復、補助魔法の得意、不得意はあるのだが、総じて魔力量は低い。平民の魔力は手のひらサイズの火の玉が出せる程度。魔法はほぼ生活魔法として使われている。


貴族は平民より少しばかり多い。魔法使いは一般的な貴族より魔力量は多いが、飛び抜けて多いという者はいない。魔力をより合理的に無駄なく活かせるように魔法陣を使っているため多少の大きな魔法が使える。


紋章持ちの魔力は訓練で使うたびに増加し強化されていくようでロイクやアレットは魔力が枯渇するまで使う事を強いられる。


因みに、剣士のオノレや弓使いのモルガンも魔法は使えるので少しでも使い物になるように訓練をしている。


そして元々人間は魔力が少ないため魔力が枯渇しても酷い飢餓感に似たような感覚に陥るが、身体に影響は無い。




 私達は訓練を始めて3ヶ月を過ぎても残りの1名はまだ現れていない。とうとうアレット達は王宮の訓練を終えて各地で魔物の討伐の旅に出かける事となった。


王城ではアレット達を送り出す準備が着々と行われている。この頃には4人の仲間意識も芽生え、互いに名を呼び合うようになっていた。

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