2-24.トリプル?!



――「うぃーっす〜!!」


 パタパタと何足も階段を上がってくる音が聞こえ、現れたのは……



「え……お前……なんでいんだよ。笑」

「いやいや、光太郎に誘われたんだよ!なぁ〜麻未?」


 少し会わないうちに髪色が緑になってる祐貴と……宝華にいた頃と同じまともな恰好に戻った大野だった。



「ね〜祐貴?……あ、さくら〜!!♡」


 大野はさくらを見た瞬間、テンションが急上昇したように笑顔になり、さくらに駆け寄って抱き付いた。



「大丈夫だったー?迷わなかった?!」


 シワシワのニッコニコで二人に質問してる光太郎。……まったく、いつの間にこいつら呼んだんだ。笑



「おう、昨日電話で教わったとーりに来たらすぐだった!さんきゅな!」

「そっか!よかった!!」



 ……なんだ。昨日の光太郎の電話は、祐貴だったんだな。



「いやぁ……にしても、すっげー別荘だな~!超セレブじゃん~!」


 ハイテンションで部屋ん中を探索するように歩き回ってる緑髪の奴。まぁ、気持ちはよく分かる。



「つーか……なんで祐貴、俺になんも連絡しねーんだよ。笑」

「いや、だって光太郎がサプライズとか言ってんもん!なぁ?」


「……ごめん櫂……、怒った?」


 申し訳なさそうに片目を瞑って、両手を顔の前で合わせて謝罪のポーズをする光太郎。




「いや……別に怒っちゃいねーけどさ。笑」

「ならよかった〜。……俺さ、その……前みたいにさ?また皆で仲良くしたいな〜って!一年の頃みたいに皆でさ!」


……そうゆうことね。


 たぶんだけど、前に俺と大野が言い合ってんのを目の前で見てたから、俺らが今も気まずいだろうと思って……間を取り持とうとしたんかな?




「ねぇ!さくら、何そのネックレス〜!めっちゃ可愛い!超似合う!やっぱさくらは天使だわ〜♡」


 声がうるせーから自然と目を向ければ、さっきまで抱き合ってた二人はソファに隣同士に座ってキャッキャと楽しそうに会話してる。



……なんだあの空間。やっぱ今でも、大野とさくらの間には二人だけの世界があんなぁ。



「はい!はい!みんな注目〜!!」


 光太郎がいつの間にかキッチンの前に立ち、手をパチパチ叩いて大声を出している。


「……えーっとですねぇ、こちらが俺の彼女の山口里帆ちゃんでーす!」



 キッチンでおそらく祐貴と大野の分だと思われる麦茶を用意していた山口は、湯気が出そうな顔して恥ずかしそうに頭を軽く下げる。



「山口です……、よろしくお願いします……」

「おーおー!これが噂の里帆ちゃんね~!光太郎から話は聞いてるよ~!笑」


 祐貴は自己紹介もそこそこに「やべー、腹減った。なんか食いもんないー?」とか言っている。




「え待って、うそ?!この前の子だ~!光太郎の彼女だったんだ~!笑」


 大野は退学した日に会った山口のことを記憶していたらしい。笑顔で先日の謝罪をするやいなや、ソファーに山口を呼び寄せ、さくらとまた3人で良い感じに話していた。




「なぁー、腹減ったってー、コータロー~~!!」


 まったく、図々しい奴だ。いきなり現れたかと思えば光太郎に食事をねだって騒いでる。


 まぁ、祐貴のこうゆうとこ……嫌いじゃないけど。



「あ……祐貴……くん、今朝の残りの……和食で良ければ……」

「え?!和食とか最高すぎね?食う食う!」


 山口は祐貴の返事を聞くや、嬉しそうに口をキュッと窄めて立ち上がり、キッチンへと向かう。


「あ~……さくら~~♡やっぱ私、さくらに毎日会えないなんて無理だよぉ~!!」


 大野は山口が座っていた隙間を埋めるように、さくらとの距離を詰め、また隣から抱き着いて頬をスリスリしてる。


 その行動がもう別に変な意味ではなくて、二人の特別な友情を現してるってのは、さくらの幸せそうな顔を見てれば充分に伝わる。



……んだけども。




「──ちょ、櫂?!何よ、邪魔しないでよね~」


 俺は二人の前に立つと、さくらを大野から引き剝がして立ち上がらせ、自分の方へと手繰り寄せた。



「……ねぇ!ちょっと!さくらは私のものなの~放して~」


 むくれて俺をギロッと睨む大野。……対称的に、キョトンとして俺を見てるさくら。


 俺はグイッと更にさくらを引っ張り、わざとらしく大野から隠すみたいにして、さくらを胸の中に包み込んだ。



「……俺のだし」


 そんな言葉を自然と発していた自分にも、特段驚きはしない。この感情の正体を知っていたから。


 俺は大野に……妬いてんだ。


 さくらはと言えば、嬉しいんだか恥ずかしいんだか何だか知らないけど、ピョンピョン小さく飛び跳ねながら俺の背中にしっかりと手を回してきていた。


……いやいや、リアルにうさぎか。笑




「ふ~ん。櫂、そんなことまで言うようになったんだ~」


 大野は一瞬不満そうに顔を歪めたけど……


「ぞっこんかよ!らぶらぶかよ!コノヤロー~~!笑」



 ケラケラ笑いながら俺の肩にグーパンチを決め込むと、山口が用意した朝食に群がって行った──




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