第6話



 その頃の酔っ払いと、やる気ないメンバー達は、やっとリーダー不在に気が付いて慌てていた。


「ヒイック! あれえ? アかひさんはドコへ?」


「じゃ、失礼します。おい、リーダーは何処に行った?」


「えっ? 知らないわよ。んもう! 自分だけ帰ったのかしら?」


「そんな、ばなな~ウヒャヒャ~きっとトイレですってえ~」


 憐れである。これでは、リーダーも浮かばれないであろう。

 こんな奴らは勝手にしろ! とほっといて、リーダーの行方を追うことにしょう。


「あ、あのですね。私は何もしてませんよ……」


 綺麗な女の人だと思ったのが、運のつきなのか。ただ、怪しいという理由でパトカーに乗せられ、手錠で拘束された私は、無駄と知りつつも彼女に申し立てた。


「言い訳は署で聞くわ。この状態じゃ調書も取れないしね」


 ピシャリと言われると、何も言い返せない私であった。


 やがて、今まで私には縁がないと思っていた場所=警察署へ車は乗りつけた。


 免許の書き換えぐらいしか来たことのない警察は、立場が変わると酷く恐ろしい場所に思え、震えて足がすくんでしまう。


「なに立ち止まってんの。早く、そこの《取り調べ室2》へ入って頂戴」


 言われた通りにドアノブに手をかけた時だった。


「あれ? 赤木さんでしょ? こんばんは。一体どうしたんですか」

 言われた声の主を見ると、何と! 妻の甥っこの一樹君が立っていたのだ。

 そういえば刑事になったとか、妻が得意げに話してたっけ。


「なに、知り合いなの? あなた達」


「ええ。父方の叔父ですが」


 女は、暫し考えていたが急に興味がなくなったのか「後はあなたに任すわ」行ってしまった。


「一樹君、誤解なんだ。私は何もしてない!」


 私の真剣な顔に、一樹君は溜め息をつき言った。


「分かってますよ。大方、格好が怪しいとかいう理由で連れて来たんでしょう?」


 あまりにも的を得たセリフに感心して深く頷いた私に、やっぱりという顔でポケットから鍵を取り出して手錠を外してくれようとした。がっ!


「あれ? 鍵が合わない! ちょっと待っててください」


 さっきの女を追い掛けて行ってしまった――


 彼が戻ってきて手錠を外してくれ警察署を出た頃は、夜も明けてきたのだった。






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