企業戦士ウリアゲンジャー
水月美都(Mizuki_mito)
第1話
今日も、二日酔いの頭を抱え、ウコンが効かなかった事を呪いつつ、布団から飛び起きた。
「おい! 何で起こさない?」
隣で高鼾をかいている妻を横目で睨むが、当人は余程楽しい夢を見てるのだろう。ケラケラと笑いながら、寝言を言っている。
「大根値上げ反対! 主婦の敵、覚悟!」
言ってる事は過激だが、楽しそうだ。この状態の妻には何も言えない。下手に逆鱗に触れたら、今夜の夕食に仕返しされるのが、おちである。
私は深い深い溜め息を付き、仕事へ行くための支度をした。
私の職業はセールスマンである。
でも、只のセールスマンではない。第二の顔を持つセールスマンなのである。
今日もバス停まで猛ダッシュで走る私に、爽やかに挨拶をして来た人がいる。お隣に住んでいる青山さんだ。
「赤木さん、おはようございます。良ければ一緒に行きませんか? 」
キラリと白い歯を覗かせて笑う、青山さんが私は嫌いだ。気障で、その癖にウチの営業成績がトップの金持ちの息子。おまけに奥さんまで優しくて美人ときてる。
「いえ、結構です!」
キッパリ断わったにもかかわらず、強引に半ば拉致同然に車に載せられて会社へと向かう。
妻に云わせれば、この強引さが私には足りないらしい。
「だから、あなたは成績が並行線なのよ!」
常にお隣と比較され、ガミガミ言われてれば、嫌いになるのも分かって貰えると思う。
「昨夜は接待ご苦労様でした」
さりげなく労う、そつのなさにもイライラしてくる。
『別にお前に言われる筋合いじゃない!』と言えたら、どんなにスッキリするだろう。
「いゃあ、此方こそ青山さんにはお世話になりっぱなしで」
つい、こんな言葉が出て来るのは、セールスマンの哀しい性とも云えるのでは無いだろうか。
そうこうする内に会社に着いて、青山氏に礼を言って自分のデスクに着き、パソコンのスイッチを入れた。
メールが一件来ている。やはり同期に入社した緑川からだ。
『今夜辺りがヤバそうだ。接待も程々に。動けなくなるぞ。次に回してくれ』
緑川は容姿も営業成績もパッとしないが、プロファイルが得意で顧客情報を掴んでいる為、会社では重宝がられている。
『面倒だから、携帯でメールを送るか……』
次に回す相手へメールを送るために携帯を取り出す。
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