秘密。
影桜
第1話 出逢い。
今、私が見てる世界はいつか終わるもの。誰に言われなくても自分が一番分かっている。人生とは、幸せとは、恋愛とは、そんなありきたりな小説読みたくもない。
「綺麗な人だな。」
私が初めて目にしたその人は笑顔で指フェラをしていた。
そう、男なら誰もが知ってるであろうAV女優の紗倉まな。
「オナニーはこうしてやるんです。」
電マを手に持ち手馴れた様子でMCの前でオナニーの仕草をする。
「あ〜〜〜みたいな。」
エロいけど笑えてくる。
絶妙なラインだ。
4人ほど女優さんがいただろうか。
私の心に残ったのはショートカットの女の子、たったひとりだけだった。
綺麗な声、綺麗な言葉、達者な喋り、甘いフェイス。
下ネタを話しても品性溢れるその口調は知性の塊でしかなかった。
「こんな可愛いAV女優いるんだな。」
YouTubeを観ていてたまたまオススメに上がってきたのを再生して私は彼女と出逢うことになる。
自分の人生クソだな―。
良いことなんて何一つなかった。なんで私の家だけこんなに家庭環境悪いんやろ…もぉ疲れた。自暴自棄に陥る日々。
「なんかええ事ないかなぁ。」
苦労しているけど懸命に生きている芸能人のアメーバブログを夜な夜な読むのが好きだったのは自分と照らし合わせていたからなのだろうか。その頃は後藤真希のブログをよく読んでいた。
「そういえば紗倉まなっていうあの子はどんな人なんだろうな。」
番組を観て1年は経過していた。なのにずっと頭の片隅から離れなかった。
調べるとブログとコラムを見つけた。
「なんて良い文章書くんだろう。」
一瞬でハマった。遡って、遡って、毎晩読み倒した。
文章から感じとったのは、人間臭さと影だった。恋愛感も、人に対する捉え方も、共感できる事ばかりで
惹き付けられていく―――。
「自分より年下なのに考え方もしっかりしてて凄いな。」
尊敬できる部分も多かった。
そっか、お父さんいないんだ。
私と一緒か。
ひとつの共通点を見つけた。
なんかお母さんは元気そうな人だな。
うちとこと似てるなぁ。
また見つけた。
可愛い人だなぁと見れば見るほど顔もどんどん好きになっていく。
「もっと知りたい。この人のやつなんか買いたいな。でもAV買うん勇気いるよな…。」
そう、私は女だ。
友達には言えなかった。最近ハマってる芸能人は紗倉まなというAV女優だと言うことを。
「え、本出してるやん。しかもエッセイや。やった。これ買お。」
私が出会ったたった一つの天職
AV女優を志した想いが明るくポップに綴られていた。
「やっぱり好きやわこの人。」
この子の目に映る世界はなんて綺麗なんだろうと感動した。真っ直ぐな純粋さが羨ましくて、美しかった――。
凹凸を買い、最低。を買い、雑誌のグラビアをコソコソ買い、私の本棚は紗倉まなで埋めつくされていく。
Twitterに綴る言葉、ブログに書く言葉、エッセイ、小説で綴る繊細な言葉とは裏腹で、動いている彼女はいつもニコニコ、笑顔を絶やさないのが印象的だった。
どっちが本当の彼女なんだろうと興味が沸いた。
デビュー当時の映像は、大人しそうで、でも一本芯が通ってて、意志の強さがあって、お茶を飲むようにゆっくりとした口調で話している。でも今の彼女は声も高くなって流暢に言葉を返している。それでいてかなりのお茶目さん。
「でもどっちも可愛いなぁ。」
結局これだった。惚れてる証拠だ。
一度好きになると良い意味で何でも良い。
「手紙書きたいな。。」
ここにあなたの事を応援している人がいますということを伝えたかった。
AV女優という世界で戦うあなたの事を。
でも書いたところでどうせ読んでもらえないんだろうな…。
アベプラという番組に出ている時にTwitterで呟くと本人から反応があった。
リプライを送ると反応してくれた。
「凄い時代になったもんだな」
AV作品も買った。色々彼女から学んで大変な世界だと知り、少しでも貢献したいというそんな想いからだった。
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