第2話『悪魔の正体』


 王様、王女、女魔法使いが俺たちに戦いを挑んできた。

 

「ツマノス王家の力をとくと見よっ!! ライトニング・ソニック」


「さすが王様ね、昔はツマノス国内最強の魔法使いだったという噂……本当だったという事かしら。……私も負けていられないわね。ファイアーストームッ」


 王様と女魔法使い、二人の魔法が俺たちに向けて放たれる。

 雷と炎。どちらも喰らえばただでは済まない。雷にうたれれば感電死。炎を喰らえば焼死。それほどの威力だ


 しかし――それは常人が喰らった場合の話だ。


「「「邪魔だぁっ(じゃあっ)!」」」


 俺達ロリコン紳士の会の何人かが一斉に拳を突き出す。

 それだけで――向かってきた炎の嵐を跳ね返した。


 雷の方は跳ね返せず、俺達全員に命中したが問題ない。

 この程度ピリっとくる程度だ。


「ぬ? ぐおわっ!?」

「きゃあっ!?」

「お、おじい様!? レイラ!? くっ……治癒ヒーリング



 自分たちが放った炎の嵐でダメージを受けた王様達。

 


「そ、そんな……城の雑兵たちまでもがそんな力を……一体なぜ……」


 治癒を受けている魔法使いレイラがこちらを憎々し気に見つめている。

 そんな彼女に、俺は言ってやる。

   

「俺たちの中に雑兵など居ない。あまりロリコンを舐めるなよ?」


 さて――


「それじゃあ今度こそ行――」


「待てっ!!」



 ――王の間から出る俺達をまたもや国王が止める。


 まだ諦めてないのか? そろそろ力量差を分かってほしいんだが……。

 億劫おっくうに感じながら俺が振り返る中、王様は言った。


「貴様ら……精霊についてどこで知ったのだ!?」


「なに?」


 俺は国王から精霊の名が出た事に少し驚く。

 この王様……精霊について知ってたのか。


「どこで知った……だと? そんなの決まってるだろ。本人に聞いた」


「本人に聞いた……だと? 馬鹿な。あの精霊は隠し部屋の倉庫に……まさかっ!?」



 なにやら狼狽えている王様。

 だが……残念ながら見当違いと言わざるを得ない。むしろこっちの知らない情報まで出してくれて本当にありがとうだ。



「――聞いたか同志諸君。どうやらまだ囚われの精霊が居るらしい。――探せ。見つけた者には……そうだな。精霊の使用済み下着を与えよう」


「「「なにぃっ(なんじゃとぉ)!!」」」


 同志達に衝撃が走る。


「絶対に……俺が見つけてやるっ!」

「ふざけんなヘリオスっ! お前なんかに精霊ちゃんの下着なんて渡したら汚れるだろうがっ! 俺が手に入れて家宝にする。して……みせるっ!」

「変態の若造共は黙っとれっ! あの子らの肌着はあの子らのもの。使用済みとはいえ、貴様らごとき変態に渡してなるものかぁっ!!」



 さっきまでの一体感はどこにいったのか、各々が精霊の場所がどこかも分かっていないというのに城内に散る。

 そうして残ったのは――俺一人。


「さて――――――それじゃあ答えてもらおうか? 王様、俺はあんたにあまり興味がなかった。さっき裏切られた時も『これでユーリが愛想を尽かすだろうしラッキー』くらいに思ってたんだ。だけど……今は少しだけムカついている」


「ふんっ、ムカついている……だと? それは余のセリフよ。しかし馬鹿なやつよ。わざわざ一人になるとはな」


 そうして王様は治癒された体を起こし、魔法を放とうと手を前に突き出す。

 しかし、今の俺は魔法の発動を待ってやるほど優しくはなれない。


「話は最後まで聞けよ」


 俺は王様の居る方向へと正拳突きを放った。

 俺と王様との距離は数メートル程度。当然、拳が届くわけはない。

 だが――


 ――ドゴォッ!


「ぐぶおぉ!?」


「おじい様!?」「王様!?」


 俺が放った正拳突き。

 それだけで、王様は吹き飛んだ。

 俺は途中に居る王女様と魔法使いを無視し、吹き飛んでうずくまる王様の目の前に立つ。

 そうして視線を王様に合わせるが――


「ひ、ひぃぃぃっ」


 王様は視線を合わせるなり怯えて、腰を抜かしてへたり込んでしまう。

 だが、ちょうどいい。

 俺はそんな王様の前に座り、先ほどの話を続ける。


「王様……あんたは二年前、召喚された俺に対してこう言ったよな?」


 そう――

 二年前、俺はこの王様を主導として行われた召喚の義によって呼び出されたのだ。

 そうして呼び出した俺に、この男は言った。


「自国を騒がせている『悪魔』。あんたはこれを捕らえるようにと俺に命令した。だけど、最初に悪魔を見つけた時は驚いたよ。なにせ……俺の目には悪魔ってのが守るべき少女にしか見えなかったんだからな」


「ば――」


「あぁ、分かってる分かってる。そんなわけがないって言いたいんだろう? だけど、異世界召喚された恩恵かな。俺にはそんな能力が備わってたんだよ。王様達にはあえて伝えてなかったんだけどな」


 反論しようとする王様を黙らせ、俺は自身の真の能力。その一つを明かすことにした。


「俺の能力その一……『ロリコン・アイ』。俺の目はあらゆる少女の正体を看破し、真実の姿をその瞳に映す。悪魔は他の奴から見たら異形の化け物として映るらしいが……俺には畑から作物を取って逃げるだけの少女にしか見えなかったぜ?」


「なん……だとぉ……。くそ……なんなのだそのふざけた能力は? さっきの奴らもそうだが、貴様らは少女好きの変態なのか?」


「失敬な。変態とはなんだ。俺たちは少女を愛するただの紳士だ」


 そうして熱弁を振る……いたい所だが、そんな事をしたら数日かかってしまう。なので、話を元に戻そう。




「こほん。さて、そんな悪魔と呼ばれていた少女たちと接して俺は彼女たちが悪魔じゃなくて精霊なのだと知ったんだ。はい、俺の話は終了。次は王様の話だ。――どうしてあんたは精霊の事を知ってたんだ? まさかとは思うが、悪魔の正体が少女だと知っていて俺達に捕らえるように命令した――なんて事ないよなぁ?」


 王様の目をじっと見て問いかける。


「そ、そんな訳がなか――」


 ゴギィッ――


 俺は、王様の右腕を折った。

 


「あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 のたうち回る王様。

 そんな王様に、もう一つだけ俺の能力を明かそう。


「俺の能力その二……『ロリコンパワー』。ロリを守るという信念を持つ限り、全ての身体能力が著しく向上する。

 集中している状態である今の俺は心臓の鼓動や脈拍、あらゆる物を聞くことが出来る。それを聞けば相手が嘘をついてるかどうかなんてすぐに分かるって寸法だ。だから王様、嘘はつかない方が良いぞ?」


 さらに、俺の力は仲間のロリコンが多ければ多い程、跳ね上がる。


 ちなみに、この能力を格好いい感じに捏造して王様達に明かしたのが『仲間の数だけ自身の力が増す』という嘘の能力だ。

 なので、仲間の数だけ力が増す能力というのも間違ってはいないのだが正しくもない。


 ただの仲間ではダメなのだ。

 仲間であり、同じ方向を向いているロリコンの数だけ俺の力は増す。 


 それこそが俺の唯一にして真の能力『THE・ロリコン』。

 ロリコンパワーなどはこの能力から派生したものに過ぎない。


 『THE・ロリコン』は少女が絡む能力しかないが、それさえクリアすれば途方もない力を得る。まさに俺にうってつけの能力というわけだ。


 この能力によって俺の視力と聴力は限界まで研ぎ澄まされている。王様が嘘をついたかどうかなど、それで簡単に分かる。



 ちなみに、元々はそんなに強くなかった城の兵たちがあれだけの力を得たのもこの『THE・ロリコン』の能力によるものだ。


 俺の能力その三……『ロリコン布教術』。

 俺はロリコンを布教することが出来る。そして相手にロリコンの素養がある場合、その相手にTHE・ロリコン(劣化版)を与えることが出来るのだ(100人限定)。




「さぁ、嘘は通じないぞ王様。そろそろ本当の事を喋ったらどうだ? そのままだんまり決め込んだら左腕も折る。嘘を吐いたら右足を折る。それを死ぬまで続ける。本当の事を言えば命だけは助けてやってもいいが?」


「わ、分かったっ! 言う、真実を言うからもうやめてくれぇっ!」


 真実を語るという王様。俺は手を出すのをやめて話を聞く。


「一体だけ……我の目にも幼き女に見える精霊が居るのだ。精霊の存在、そして悪魔の真実はそやつから聞いた」


 やっぱり……まだ囚われている精霊がいたのか。


「悪魔=精霊だと分かっていてなんで俺に悪魔を捕らえろなんて命令を出した? あれがただの少女である事はわかってたんだろう!?」


「はっ! あれがただの幼子だと? 馬鹿め。貴様が精霊から何を聞いたのかは知らんが、あれがただの幼子であるものか。あれは……化け物だ」


 吐き捨てるように精霊を化け物だと罵る王様。


「んだとぉ!?」


「苛立つか? しかし事実だ。精霊とは人間と契約を交わすことによって超常の力をもたらすいわば兵器よ。貴様の反逆さえなければその兵器をもって我がツマノス国はこの世界の覇権を握れたであろうに……」


「精霊が……兵器? そんなわけ……いや、たとえそうだったとしてもあんな小さな少女を兵器として扱えるわけがないだろうがっ!」


「先ほどから少女少女とうるさいのぅ。そも、彼奴等きゃつらが幼子なのは当然であろうが」


「なん……だと? おい、それはまさか……」



 精霊が少女であるのは当然?

 確かに、今まで俺が捕らえてきた悪魔……もとい精霊は少女ばかりだった。

 そこで一つの仮説が生まれていたが……まさか本当にそんな事が?



「ほぅ。貴様も薄々勘づいていたようだな。その通りだ。精霊はな……ある一定の段階で成長を止めるのよ。しかも、彼奴等きゃつらには寿命という物がない。病気にもかからぬ。まさに不老の存在。そんな存在を化け物と呼んで何がわる――」


「YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHッハハァァァァァaaaaaaaaaaaaaaaaaa」



 王様から素晴らしい朗報を聞いて、俺は歓喜していた。

 いやいや、薄々そうじゃないのか? そうだったらいいのになぁとは思っていたのだ。

 俺が捕らえた悪魔(精霊)は少女ばかり。

 そう――全員が俺のストライクゾーンど真ん中の美少女だったのだっ!


 もしや精霊は俺のようなロリコンにとって最高の存在なのでは? なんて思っていたのだが、どうやらその通りだったらしい。



「そうと決まればこうしちゃ居られないっ。はやく囚われた精霊を救出せねばっ! その精霊も俺の好みに違いないし、なによりロリのパンティーは俺の物だ誰にも渡さんっ!!」


 ――という訳で。



「さぁ吐け王様ぁぁぁっ! あんたには色々と言いたいことやらその精霊にエロい事したかとか聞きたいところだが、まずは精霊を保護して誰よりも先にパンティー獲得権を手に入れるっ」


「ぐげっ、こここ、この部屋の玉座の下から続く隠し階段――」


 へたり込んでいる王様の体を掴んでガクガク揺らしたら王様はあっさり精霊の場所を吐いてくれた。


 よし、これで今度こそここでの用事はこれですべて済ませた。

 先ほどまで居たはずの王女さんやら魔法使いがいつの間にか姿を消しているが……それは些細な問題だろう。そもそも、あんな外見年齢&精神年齢十六歳超えのBBA共に興味なんて微塵もない。


「待っていろまだ見ぬ新たなロリっ娘……もとい精霊っ。今からお兄さんが君を助けに行くっ!!」


「こやつは……本当になんなのだ……。今まではまともな奴だと思っておったのにただの変態ではないか……」



 後ろからそんな王様の声が聞こえてきたが、言っている意味がよく分からなかったので無視。

 俺は床に隠されていた隠し階段を下りていくのであった――


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