異世界召喚されたので最強のロリコン軍団を作り上げました~精霊国家ロリコニア建設日誌~

@smallwolf

第1話『裏切ってくれてありがとう』



 ――裏切られた。

 今まで一緒に戦ってきた仲間達。

 そして俺をこの異世界に召喚した国王。


 そのどれもが……俺を見下していた。


「くくっ。くくくくくくくく。はははははははははははは。よくぞ……今までよくぞ余の為に働いてくれたのう勇者。いや、露利蔵ろりくら阿近あこん



 王の間にある王座から王様が高笑いをあげながら俺を見下している。

 対する俺は王の間にて何重もの鎖が巻かれ、拘束されていた。


 別に俺は何かの罪を犯した訳じゃないはずだ。

 俺はこの国を救う勇者として王様に召喚された。

 そして、王様からこの国に蔓延はびこる悪魔を残らず捕らえろと命令されたのだ。


 だから、俺はその命令通りに多くの悪魔を捕らえた。

 それだけのはずだ。

 それは一緒に多くの悪魔を捕らえてきた王女、女魔法使い、ユーリも同じはず。


 それなのに、今の俺は大罪人のように拘束されている。

 俺だけがこんな扱いを受けている。

 なぜ……?


「貴様には感謝している。だがな……貴様の力は余にとって脅威と成り得る。ゆえに、もう用済みだ。――やれ」

「王……」


 そうして国王は身近に居た親衛隊に俺の処刑を命じる。

 王の間にてひれ伏している俺の首を取ろうというのだ。


 そんな中、仲間だったユーリだけが王を非難するような目で見ていた。

 王女と女魔法使いは相変わらず俺を見下したような視線で見ている。俺は処刑されて当然と思っているみたいだ。



 ああ、なんて事だろう。

 愛国心なんてものは欠片もないが、俺はこの国の為になる事をしてきたはずだ。

 王様の命令にも一度として逆らった事はない。

 それなのに……裏切られた。

 こんなの……こんなの……。




「ありがとな、王様」



 俺は裏切った王様に礼を言わせてもらう。

 こんな最悪に最高な展開になってくれるとは思ってなかったからだ。

 

 俺は自身を拘束していた鎖を引きちぎり、向かってきた親衛隊をぶん殴った。


「「ぐぬおっ」」


 まさか俺が反撃するとは思っていなかったのか、間抜けな悲鳴を上げて倒れる親衛隊達。


「なっ!? 貴様、なぜ!?」

「そんなっ!? あなたの能力は仲間の力を束ねる力のはず。その仲間が居ない今、あなたには何の力もない。そのはずなのにっ」


 説明ご苦労様。

 俺を裏切った王女であり、今まで共に旅をした仲間であるツマノス・クルゼリアが訳が分からないと指を差して喚きたてる。


 実際、その能力説明は間違ってはいない。俺の力は同志の数が多ければ多いほど俺の力を増加させるという物だ。

 それが勇者として召喚された際に得た俺だけの能力。

 しかし――


「仲間ならいるさ。そうだろ――ユーリ?」


「はぁ……ま、そういう事になっか。すまんの国王陛下。儂、お前らのこと嫌いになったわ。別に構わんよなぁ? じゃっておぬしらもさっき裏切ったものな?」


 そうして先ほどまで俺を見下していた仲間の内の一人、ユーリ・クロフトライトは反転して俺の側に付く。


「なっ!? 貴様、ユーリィ!? 先々代から王家に仕えてきた貴様が裏切るなど……許されると思っているのかぁっ!?」


「いやぁ、儂じゃって心苦しかったんじゃぜ? 先代にも先々代にも世話になったしのぉ。でも、ダメじゃわ。だってお主、クズじゃもん。さすがの儂も愛想が尽きたわ」


「ぬぁっ!?」


 国王に対し、辛らつな言葉を吐く爺さん、ユーリ。

 しかし、その表情は今までにないくらい晴れやかな物だった。

 流れはこちらに傾きつつある中、敵の誰もが動きを止めている。

 ――そのときだった。


「落ち着きなさいっ!」


 声を張り上げたのは俺の仲間だった女魔法使い、レイラだ。


「想定外の事が起きたとはいえ、敵は二人よ。城の兵と王女様の回復魔法。そこに私の魔法が加われば老人と異世界人ごとき軽くねじ伏せられるわ。今、大事なのは相手に吞まれない事。落ち着いて対処すれば勇者と言えどこの状況では何もできないわ」



 冷静に状況を分析し、その場に居る全員に指示を出していくレイラ。

 その指示は確かに的確だろう。

 しかし――残念ながらお前らに勝機はない。


「敵が二人だと……誰が言った?」


 俺がそう言い放つとともに、上から数人の男が降ってきて、城の兵たちをあっという間に無力化した。


「なっ!?」


 いきなりの出来事に驚いているレイラ。

 しかし、一番驚いているのは国王だった。


「お、お前は……騎士団長のヘリオス!? お、お前までもが裏切るというのか!?」


「申し訳ありません国王陛下」


 天井裏にでも隠れていたらしい男達。

 そのうちの一人はこのツマノス国の騎士団長である男、ヘリオスだ。


「貴様……貴様ぁっ! さんざん余から多くの女を貰っておきながら裏切るだとぉ!? 最近は娼館に顔を出していないと聞いたから不思議に思っていたが……裏切る算段を付けていたという訳か」


「へ? ……ああ、そんな事もあったっすねぇ。ただ、それは誤解っすよ国王陛下。アンタから貰った嫁の十人とは既に別れてます。娼館に行かなくなったのも、別に裏切る準備どうこうの話じゃないっすよ。純粋に、もう俺っちはそんなものに興味ないんです」


「なん……だと? あれほど女好きであった貴様が娼館に興味がない? ならば問おう。貴様は何を欲しているのだ!?」


「愚問っすね国王陛下。ここに居る俺たちの欲する物。それは全員一緒っすよ」


「なんだと?」


 騎士団長のヘリオスの言葉を受け、裏切った俺たちを見回す国王陛下。

 そう、ヘリオスの言う通り。俺たちの望むものはたった一つ。

 それは国王が絶対に用意できないものだ。


「俺たちが望むもの――」



 そうして俺の声に続き……仲間たちが声を揃えて望むものを王に宣言する。



「「「それは……幼女や少女が幸せに生きられる国(じゃあっ)だっ!!」」」



 ………………。

 ………………………………。

 ………………………………………………………………。



「「「は、はぁ?」」」



 国王たちが揃って間抜けな声を出す。

 ふむ……何かおかしなことを言っただろうか?

 まぁいい。敵が呆けているならその方がありがたい。



「ヘリオス、ここに居るという事は精霊たちは?」


「はっ。問題ありません会長。俺達が捕らえていた精霊達は既に安全な場所まで非難させています。同志五十名が護衛についているので問題なく例の場所まで行けるでしょう」


「んなっ!?」


 精霊を連れ出したと聞いて、更に慌てだす国王。

 しかし、もう国王たちには興味もないので話を進める。


「時間稼ぎはうまくいったという事だな。ならば行くぞ。唯一、障害と成り得た同志ユーリは馬鹿な国王のおかげで真に我らの味方となった。以前話した通り、ユーリは我ら『ロリコン紳士の会』の副会長に迎え入れる。異論は?」


「あろうはずがありません会長っ! ユーリさんは……いえ、ユーリ副会長は多くの精霊に好かれるお爺ちゃんです。多くの精霊を笑顔に出来る彼が副会長であることに何の異論がありましょう!?」


 ユーリが副会長になる事に全力で同意するヘリオス。

 他の会員たちも大きく頷いている。

 ふっ……予想していたが、異論など出るはずもなかったな。


「ならばゆくぞっ!! 少女達が俺達を待っている」


「「「応っ!!」」」


 そうして我ら『ロリコン紳士の会』の会員達は例の場所を目指し――


「くそ……待てっ。えぇい。こうなれば余自身も打って出るっ。クルゼリア、レイラ。力を貸せぃ」


「分かりましたわ、おじい様」


「ええ、勇者とユーリは厄介だけれど、他はただの雑兵。相手にもならない。私たちが力を合わせれば勝機は十分にあるわ」


 そうして王様、王女、魔法使いが俺たちが出ていくのを阻み、戦いを挑んでくる。


 えぇ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る