僕の瞳に映るあなた
水月美都(Mizuki_mito)
1章
第1話
――それは禁じられた愛――
「涼、お前は、また稽古をさぼったね!」
平手打ちを受けた頬を赤く染めながら、涼はポロポロと涙をこぼした。
「お前は、一体何様のつもりなんだ!」
なおも頬を叩かれ。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
泣きながら、畳におでこおでこを擦り付けるている涼を見かねて。
「おばあさま、 涼を許してあげて!」
竜が祖母と涼の間に割って入った。
「竜や。お前がそう言うのなら……」
涼の時とは違い、猫なで声で竜に目を細める祖母。
「さあ、涼。行こう!」
まだ、泣きじゃくってる涼の手を引き、竜は部屋を出た。
「大丈夫? 涼」
心配そうに覗き込む竜に、涼は笑おうとしたが、顔を苦しそうに歪めただけだった。
「何で、おばあさまは涼に辛く当たるんだよ!」
竜は、顔を真っ赤にしながら怒っている。
涼には、その理由が痛い程わかっていた。
私は、美月家の厄介もの。昔から祖母に、言われ続けて育ってきた。
産みの母は、私が美月の家に引き取られる時、こう言ったのだ。
「やっと、アンタと離れられると思うと、せいせいする! お前のせいで、あたしの人生は滅茶苦茶になったんだから!」
物心ついた時から母に虐待を受けていた私は、実の父が私を引き取りたいと聞いて、心踊らせながら、美月の家に来たんだっけ。
だけど、この家に来ても待っていたのは辛い現実だった。
初めて会う父に私は抱き付いて「お父さん!」と言ったのだけれど。
父は私を、まるで関心がなさそうに冷たい目で見ただけだった。
祖母は、一人息子をたぶらかした女の娘なんか引き取るのを嫌がったらしい。殊更、私に辛く当たった。
その中で、母の違う弟の竜だけが、私を受け入れてくれた。
この家に来たとき、私はまだ九歳。
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