ヴェノムシードとの戦い
昼夜
ヴェノムシード
「邦彦!」
薄れゆく視界の先には体を支えてくれている母がいた気がする――
◆
目が覚めると真っ暗闇の中にいた。
体は動かず、ただただプールに身を委ねたように浮力と重力の間にいるようだ。
そんな中、暗闇の先に今にも消え入りそうな光が灯る。
希望に感じた。
行かなければと感じた。
光に手を伸ばすと現れたんだ。
天使を彷彿とさせる姿をした母親が。
「なんて格好してんだ母さん!?」
母さん天使はこちらの驚愕など気にもならないのか、一つ頷くと今の状況の説明を始めた。
「この姿は貴方が思う強い人物の姿になります。時間も多くはありませんので淡々と説明します。時間があれば質問は最後に設けますので静かに聞いてください」
貴方は生と死の間にいる。貴方の命を救うには、ある世界の救出を持って成される言わば人質の状態です。
この使命は放棄する事が出来ません。
放棄は即ち死を意味します。
「この世界に蔓延るヴェノムシードの除草が貴方の使命です」
ヴェノムシードというのは、外の世界から飛来した益をもたらさない悪の塊です。
飛来し根付くと木の根のように広がる
ヴェノムシードは緑地のエネルギーを糧に枯れ木の大木へと既に遂げています。それでも尚、成長している為、このままでは世界は崩壊するでしょう。
「貴方には
母さん天使は最後まで言い切る前に光の粒になり消えていった。
一瞬にして暗闇の世界の戻ったが、それも瞬く間に情景に変化が起きた。
「っと」
不意に足元に感覚が現れ、自分が地に足を付けていることに気がついた。
砂埃の舞う乾いた荒れ地が地平線の先まで続いている。
この光景を見ると何故か胸が苦しい。息苦しい。
「荒れ地を緑地に……か」
地に手のひらを当ててみたが何も起きない。当たり前だ。急に力を貰っても使いこなせる訳がない。
苦しい。辛い……。呼吸が……。
意識が朦朧とする中、何かに腕を引っ張られる感覚を得る。
「力を、使って!」
(そんなことを言われても、どうやって)
「気を強く持つの! 生きたいって! 強く!」
(生き、たい……生きたい!)
渾身の力でカッと目を見開き意思を強く持った途端、地に付いていた手のひらから瞬く間に緑地が広がっていく。
荒れ地だった地平線の向こう側まで緑が生い茂る。
「凄いっ」
「体の力、戻ったでしょう?」
「確かに」
呼吸や胸の苦しさは緑地の拡がりと同時に消え失せ、疲れはあるものの意識ははっきりとしている。
「素晴らしい。貴方の力よ。諦めるには早計だと思わない?」
「え、うん。えっと君がガイド役っていうの?」
「ざっと言えばそうねリレンとでも呼んでもらおうかしら」
リレンと名乗る女性の声のそれは、白い雲のようなものに
「何がどうなっているのやら」
「ざっと言えば、荒れ地は貴方を苦しめ、緑地は貴方の力を強くする」
「ざっくりしすぎじゃない? それに緑地にすると疲れるんだろう?」
「それは運動したからよ。普通のことよね。貴方は緑地のある場所でしか生きることが出来ないのよ。荒れ地に力を奪われるのは体験済みでしょう」
確かに。単純な陣取りゲームのように陣地を広げていくとやがてクリアするのだろうか。
「今はね。親玉のヴェノムシードには真正面から
「あれ……今声出したっけ」
「私はガイド役よ。それぐらいざっとこなせて当然でしょう」
「世界を救うその日まで、リレンさんよろしくお願いします」
「一日二日で片がつくわね」
自分の命がベットされたデスゲームだ。早くクリアして自分の布団で休みたいよ。
緑地で体を丸くして眠りに落ちた。
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