『降り立つは始まりの町』


 転移の光に後押しされて神子であるプレーヤーがテレポートしたのはクゥンロルの町だ。

 三番目に大きい街とされていて、人口は3000人程度。

 チュートリアルが終わっている人は最終ログアウト地点に出ている。

 街の真ん中にある街守の家の客室でマッドは目覚めた。

 テレポートして体の確認をしていれば、バン!と、扉があけられる。

 入ってきたのはメイド服を着た女性だった。


「マッドさん!やはり、来られたんですね!」


 ヒガシイ!とメイドはマッドに抱き着くとスリンコスリンコと頬をこする。

 一頻りこすった後にハッとして衣服をただした。


「失礼しました、街長がお呼びです。」


「ン。」


 特に気にせずにベッドから立ち上がると歩き出すメイドの後についていった。



^^^^^



 軽いノックの後に入った部屋は街長の公務室。

 イメージ通りの部屋の中央机で書類仕事をしている恰幅のいいこの男こそクゥンロルの街長兼街守、ゲネヘさんだ。

 ゲネヘさんはしゅばばば!と、書類をかたずけながらも顔をマッドに向けてにこやかに対応する。


「よく戻られました。神託から察するに神子様のお一人であらせられましょう。以前の非礼を含めたこれからの活躍に対する投資として金銭を用意させていただきました。受け取っていただけるとありがたいですが…」


「オン」


「( ,,`・ω・´)ン、も、もらう!よ?」


「ありがとうございます。」


 ちらりと目で合図をすれば後ろに控えていた侍女が用意されていたと思われる金貨の山を持ってきた。

 かなり重そうなのに侍女は普通に持っている。


「全部で100枚あります。換算して1,000,000arufu。冒険者になったら何かと入用だろうからね。」


 マッドへの父性からか、口調が少しづつやさしさのあるものに変わるゲネヘ。

 だが、その手はやはり書類を処理するのを止めることはなかった。


「あり、がと!」


「ウォフ」


「クー」


 勢いよく頭を下げるマッドに従い、ルフとラムも頭を下げる。

 後ろにいた数人がうずッとしたが、街長の御前のため控えた。


 そんなわけで、マッドは、そこそこの、きんがくを、手に入れた!



^^^^^



 衛星ジブルーン、その星にある人類都市で三番目に大きな街、クゥンロル。

 神子と共に闇という勢力以外の全ての種族が最近になって集まるようになったその街は、二番目に大きな街に少しずつ近づいて行っていた。

 あと数か月もすればおそらく大きさでは上回るだろうと、人王も予想している。

 その街には今、多くの神子がいた。

 もとよりチュートリアルは街の中央近くの大噴水付近で終了するように考えられている。

 なので、最初はどの神子プレイヤーも大噴水付近にテレポートするということだ。


 逆に考えれば、大噴水付近を囲ってくる時を待てば決して見逃さずに祝うことができるということ。

 転移の光が漏れると同時にクゥンロルのほぼ全街民から歓声が沸いた。


 吟遊詩人は詩ではなく歌を歌い、楽器使いは自慢の音色を響かせる。


 万雷の拍手と口笛が響き、わあわあと喜びの声が響く。


 それが数分続いた後、誰かがせーの、と音頭をとると楽器も歌も止んでから


「「「「クゥンロルの街にようこそ!」」」」


 と、声を合わせて歓迎した。



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