1 末っ子で長男ですが?
青鵐と言う街で二人の男女が出会い結婚し子供が生まれた。
女の子が生まれ父親と母親になった二人は物凄く喜んだ。
可愛い子見て二人は男の子も授かりたいと思い再び愛を育んだ。
けれど生まれてくるのは次女、三女、四女と女の子ばかり。
授かることはできないのかと諦めかけていた時五人目にして初めて男の子を授かることが出来た。
両親は生まれてきてくれた子供たちに愛情を注ぎ大切に育てた。
しかし男の子の扱いは少し違った。
初めて生まれた男の子、両親は自分達の考える理想の男の子に育てるため。
『あなたは長男なんだから』
何かあれば『長男』と言う言葉を使い男の子を従わせた。
欲しいものがあれども買ってはもらえず男にして服も姉のおさがり。
家族の食器を片付けたり、姉たちの散らかしたリビングを掃除したりと家事をもこなす。
父が大切にしていた土器を姉が割ったときも男の子が罪を着せられ怒られる。
しかし男の子は何も言うことはなくそれが普通だと思い何でも言うことを聞いた。
だがあることをきっかけにふと疑問に思う。
それは六歳、おやつの時だった。
母『ごめんね~今日は今川焼が三つしかないの。皆で分けて食べてね』
三つのうち二つを半分に分け姉たちに渡し、一つは男の子もとへ今川焼が渡る。
次女『ちょっと、そっちの方が大きいんじゃないの!』
三女『え~どう見てもそっちの方が大きくない?』
おやつめぐりバチバチとしている次女と三女を横目に。
長女『おっきな方あげるね』
四女『モグモグ……うまい』
隣ではほのぼのとした空間が広がっていた。
だが男の子はその光景を見ることなく半分にもなっていないお皿の上にある一つの大きな今川焼をただじっと見つめていた。
子供時代の人生において初めて起こった男の子が得をする状況。
姉とは少しの違いだったがそれでも男の子は内心喜びながら小さな両手で今川焼を持ち上げた時。
『もっと食べたい』
四女が小さく言葉を放った。
その言葉を聞いた父がひょいっと男の子の手から今川焼を取ると四等分に分け女の子たちに分け与えてしまった。
固まる男の子に対し父親は『ガッハッハッ』っと笑いながら。
『佐一は長男だから女の子に優しくしないとモテないぞ!』
姉にモテてどうすんだよ! 何て言葉はその頃は出ず。
その後は感情を無にして何も食べていないのに皿だけ洗うというものが待っていた。
その衝撃から俺は『今川焼略奪事件』と自分で名づけて今でも覚えている。
このことをきっかけに長男と言うものに得が何もないことに気づいたのだが、男の子に親に与えられた『長男の称号』は体に染みつき剥がれることはなくその後も『長男』と関連する言葉に逆らえず。
それから両親に女の子たちは甘やかされて育ち、男の子は親の理想を押し付けられ育ち、気が付けば数年が経過していた。
母は病で亡くなってしまい、父は自称冒険家と言う職業で街を出ている。
今現在男の子は時乃三谷学園中等部二年、末っ子にして長男と言う称号を両親に付けられた俺、深ノ宮 佐一は。
「さ~い~ち~」
家庭を押し付けられ、学校で人目も気にせず抱き着いてくる姉の扱いに苦労しています。
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