第十二章 デュエット
小さなオフィスに、キーボードを叩く音が響いている。
まるでデュエットの様に、二人の指が音を奏でている。
「コーヒーでも、いれましょうか?」
女の声に、男は嬉しそうに顔を上げた。
「いいね」
男の好みの分量の砂糖とミルクをいれ、慎重に運んできた。
独立したばかりの事務所は、ゆったりとしたリズムで時間が流れている。
クライアントも評判を聞きつけて、順調に仕事を依頼してくれていた。
礼子はコーヒーを一口飲んで吹き出しそうになった。
「どうしたの?」
「何でも・・ないわ」
島田の怪訝そうな顔を見ると、尚も女は笑いながら思った。
(やっぱり・・・似ている)
二人の新しいオフィスの本棚には、古ぼけたピエロの人形が奇妙な微笑みを浮かべていた。
やさしい、微笑みであった。
(完)
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