ホワイトバレンタイン -White Valentine- (改稿版)
みなはら
第1話 ホワイトバレンタイン -White Valentine-
白い白い雪が降る
冷たくて、でも優しく舞う雪の粒
優しい気持ち、あなたにも届けたい♪
あなたにあげるチョコレート♪
白い白い雪のように白い
甘くてとろけるチョコレート♪
白い雪のようなホワイトチョコレート♪
-◇◇◇-
「さぁて、出来たかな♪」
わたしわ、小さく口ずさんでいた歌をやめてそう呟いた。
昨日作って冷蔵庫で冷やしておいた生チョコ、ホワイトチョコレートを、取り出してみる。
うん、大丈夫。ちゃんと出来てる♪
手作りチョコレート。
市販のチョコ、ブロックのホワイトチョコと生クリームで作った簡単な生チョコだけど、喜んでもらえるかな?
クッキングペーパーを敷いた、ステンのバットからチョコを外して、まな板へと置いた白い固まりを、生チョコの下へ薄く敷いた、砕いたクッキーを牛乳で伸ばした台ごと手早く包丁で切り分けて、
小分け用の紙カップに乗せながら、ステンバットの上に並べて再び冷蔵庫へと戻す。
あとわ箱に詰めてラッピングする前に出せばいい♪
残した縁のチョコレート、ゆがんでいて贈り物には使わない生ホワイトチョコをひとつ取り、口に運んでゆっくりと溶けてゆく食感と優しい甘さを味わう。
うん、大丈夫。良い味ね♪
ホワイトチョコレート、好きだって言ってたよね。
生チョコ、喜んでくれるかな♪
「稲荷ちゃ~ん。あーん♪」
わたしのようすを静かに眺めていた猫又ちゃん。
そう言って口を開けている。
ふふ♪
ひな鳥みたいね。
彼女の口にも、チョコをひとつ入れてあげる。
嬉しげに味わいながら、食べ終えてにっこりと笑う猫又ちゃん。
「美味しいね~(笑)
良くできてる♪ 稲荷ちゃんの愛情たっぷり~♪」
「これならあいつも、いちころかな?(苦笑)」
猫又ちゃんは、撃たれた胸を押さえるようなポーズをする。
にやにやとした笑顔を見せながら。
「何でにやにやしてんのよーっ
猫又ちゃんったらぁ!」
「あたしは知ってる♪
稲荷ちゃんの好きなひと~♪」
拍子をつけて話している猫又ちゃん。
「猫又ちゃん、何言ってんのよ~っ!」(いまさら~(苦笑))
「猫又ちゃんわ、それ最近よく言ってるけど、気に入ってるの?」
「そっ♪ いまのあたしの流行り~(笑) あたしは知ってる~♪」
猫又ちゃん、急に真顔に戻って、壁の、外の方を見ながら呟いた。
「今日は降りそうだね……。
雪が積もりそう……」
薄汚れた灰色の城に降る雪の白
廃墟には人の気配もなく
灰色の世界に灯る街の光なく
電脳の灯に捨てられた
脱け殻の様な街の闇、その暗き街並みを
白い白い雪が、そっと包むように降り積もるのみ
そう、今宵は St Valentine
愛しあうものたちが、その愛を祝う日
そう、今宵は White Valentine
灰色の世界に、空からの白き祝福が降り給う日
白き言祝ぎを空は紡ぐ
ひび割れた灰色の世界を、優しき白が包む夜
そう、今宵は White Valentine
白い雪の祝福を受け、世界は今ひとたびの輝きに満ちる
そう、今宵は St Valentine
空と大地の愛に包まれて、人たちは穏やかな眠りへと誘われる
そう、今宵は St Valentine
そう、今宵は White Valentine
「……なんてね(笑)」
突然に歌を披露した猫又ちゃん。
一瞬、キッチンがステージになったように錯覚した。
良い声で歌うのよね、猫又ちゃん……。
わたしもあれくらい歌えたら良いのに。
-◇◇-
「いい曲ね……。
誰の歌?」
「あたしの歌♪
即興曲だよ(笑)」
「……なんかね、情景が浮かんだんだ。見たことのない、人の居ない街のようすがね……。
あれ、
「すこし寂しい歌ね。優しい曲だけど」
バラード、なのかな? わたしわ詳しくないから、よくわからないけど。
そうした時が来るのかも。
神使の幻視には、たまにあることだと知っている。
「まぁね~(笑) 稲荷ちゃんの愛情たっぷりの歌とチョコには負けるけどね♪」
わたしの思いつきの歌をからかわれる。
「もうっ!
猫又ちゃんったら!」
わたしわ、こうして猫又ちゃんとじゃれあって過ごす時間がとても好き。
「猫又ちゃんは、かずまくんへのプレゼント準備したの?」
「したよ~(笑)
大袋の徳用チョコ、買っといた♪」
「……泣くわよ」
「良いんだよ。あたし以外にもチョコもらうんだからさ。
それも手作りチョコ、いくつも(笑)」
猫又ちゃん、厳しいね。
あれが彼女なりの愛情なんだろうけど。
「あたしはね、稲荷ちゃんのチョコみたいに甘くないんだ♪
甘さ控えめ(笑)」
「稲荷ちゃんの追いかける恋、一途な恋もいいけど、
かずまには追っかけて欲しいかな(苦笑)」
「恋は駆け引き♪ それも楽しみ~(笑)」
そう言って猫又ちゃんは不敵に笑う。
「そっ、そうなの?」
がんばれ、かずまくん!
-◇-
今日はバレンタインだけど、みんなで集まってパーティーをする♪
つかさくんと座敷わらしちゃんのところでお呼ばれだ。
ひさびさのホワイトバレンタインだけど、みんなで集まってのパーティーも好き♪
二人で過ごす雪のバレンタインもロマンチックだけど、今夜わ、みんなと楽しく過ごす方が嬉しい。
わたしにとってわ、二月は節目の年だ。旧暦生まれの猫又ちゃんにとってもだとは思うけれど、あの子は新しもの好きだから、いまどう感じてるかはよくわからない。
隣の大陸では春節と言っているけれど、そうした心の動きは、わたしにも分かるように思う。
節目の月、物事が切り替わる時なのだと思うときがある。
わたしわ、縁の切り替わる経験を、この時期に多く体験してきたようにおもう。
だからだろうか……。
人恋しい季節であり、春の目覚めを予感する季節であり、
旅立ちや別れを感じる時であるのかも知れない。
まだ臆病なんだな、わたしって。
まだまだ弱くて臆病だ。
稲荷の社、わたしの
みんな暖かくして眠ってくれるといいな。
今日の楽しさに紛らせて、
今の臆病も寂しさも祓ってしまおう。
みんなと一緒に楽しく過ごす一日。
雪の聖バレンタイン。
きっと忘れがたい日になると思う。
-カクヨム版あとがき-
みなさま、よきバレンタインをおすごしくださいませ(^ω^)
ホワイトバレンタイン -White Valentine- (改稿版) みなはら @minahara
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